75 / 542

第76話「なんだかな」*奏斗

 一緒に帰りますか、って。  ――――……なんか。すごく。嫌。  って思ってしまった、。  だって ……なんか、また心配して、オレを家に連れて帰ろうとしてるのかなあとか。  ていうか、四ノ宮、すげーモテてるんだから、女の子と消える事だってできるだろうに。そんな、オレばっかりに構わなくても。  何か、段々、真斗がオレを心配してるような感じに見えてきた。  まあ、さすがに弟にまで、一晩限りでとか言ってる訳じゃないから、真斗はそれについては心配してないけど。でもよく、変な奴と付き合うなよって心配されてるから……おんなじ感じなのかなあ、もう。  四ノ宮、オレの弟じゃないんだけどな……。  もうどうしたらいいのかなあ。  なんて、頭の隅で考えながら、色んな人と話して時間を過ごす。  小太郎の側に居ると、皆を巻き込んで話せて女の子と2人きりにならなくて済むので、後半はなるべくそうしていた。まあ、変にならないように少しは離れながらだけど。  2時間って言ってたから、もうすぐだよなーと思って。 「なあ、小太郎、今日オレ、帰っていい?」  こそ、と囁くと。 「え、帰るの? 2次会は? イイ子居なかった?」 「うん……ちょっと、今日はやめとこうかなって思って」 「そっか。……皆残念がると思うけど」 「ん。ごめんな?」 「ん、分かったよ。んー……聞かれたら、明日早いとでも言っとけばいい?」 「うん。ごめん。ありがと」 「ん」  ほっとして。  ……四ノ宮はどうすんのかな、とやっぱり気になってる自分に、ちょっとため息。  とりあえず、トイレ行こ。  そう思って、部屋を出ると。  トイレまでの廊下を曲がった所に。  どう見ても四ノ宮の後ろ姿。 「あ、しの――――……」  四ノ宮、と言いかけて、四ノ宮の影に、一緒に女の子が居ることに気付いた。  ……お、っと。  ――――……邪魔だよな。  四ノ宮の視線は感じてはいたけれど、ここで立ち止まるほど、バカじゃない。そのまま素通りして、トイレまでの道を進んだ。奥まっていて、また角を曲がって、男子トイレ到着。  ――――……なんだ、イイ子、居たんだな。  まあ良かった良かった。  用を足して、手を洗う。  鏡を覗き込んで、何となく髪の毛を直す。  ――――……んー、まだ、居るかなぁ。  ああいう通る所で、ああいう雰囲気はやめてほしいというか。  オレは決して邪魔しにいった訳じゃないし。  うーん……。どうしよう。  そう思っていたら、トイレのドアがコンコンとノックされて、「失礼しまーす」と人が入って来た。  ああ、さっきの、アルコ―ル持ってきた店員さんだ、と思った時。  その子も、オレを見て、「さっきはありがとうございました」と笑った。 「失礼しますね。1時間に1回のトイレチェックなんですけど……もうトイレ済んでます?」 「あ、うん、大丈夫。どうぞー」  年下っぽいけど。話しやすい子だなー。明るくて、いいなあ。  なんか普段、裏表よく分かんない奴と、よく絡んでると、こういう分かりやすい子に癒される気がする。  なんて。  本人に知られたら絶対すごい怒られそうな事を思ったりする。

ともだちにシェアしよう!