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第89話「責任?」*大翔
「とりあえず、助かった、ありがとな」
『様子が変なら病院に行って下さいね。あ、今どこですか?』
そう聞かれて、駅の名前を伝えると。
『そこから近い病院で、ツテがある所、後でスマホに送っておくので、行くならそこに行ってください。この薬だけなら救急車を呼ぶほどにはならないと思いますけど……何かあったら、電話ください。出れるようにしておきます』
「分かった」
『大翔さん』
「何?」
『この薬、時間で切れますが、発散させないと、本人辛いと思います。どうされてるんですか?』
「今、風呂場で、自分で処理してる」
『出来てますか?』
「――――……見てねえから、分かんねえけど」
『……これは言うの、少し躊躇うんですけど……』
「ああ、もういいよ。 手伝えるならって言うんだろ」
『状態によると思いますけど』
「……助けてくれたクラブの店員にも、そう言われた」
『大翔さん』
「……何」
『あまり、性的な面で、首を突っ込まない方がいいと、言いましたよね』
「――――……ああ」
『その状態の雪谷さんの側に居る時点で、もう、突っ込みまくりでしょう』
「――――……」
『それを選んだのが大翔さんなら――――……ご自分の行動に責任とられてくださいね』
どーいう意味だよ……。
思ったけれど、意味を聞く言葉は、出てこなかった。
「……何かあったら、連絡する」
『はい』
電話を切ると同時に何だかもう、疲れすぎて。スマホを握り締めたまま、椅子に座り込む。
「……責任って……」
つか、オレって、この件で、別に何も悪い事してねえよな……。
ほっときゃよかったってこと?
先輩がどんな目に遭っても、それは一晩限りの相手を探して、あんなとこに出入りしてたんだから、付随して起こった事だって?
――――……2人を相手にしたって、別に、イイって?
「――――……良い訳ねえな……」
思わず、口に出して呟いてしまう。
放っておけない時点で、もう踏み込んでるって事か?
――――…… つか、あんなの電話で聞いて、放っておけるわけ、無くねえか……。
……違うか。
電話であんなのを聞いてしまう位、いつもオレが、先輩に絡んでるから、こうなってる、て、事か……。
しばらくそのまま、固まっていたけれど。
立ち上がって、椅子の上にスマホを置いた。
飲みかけの水を煽って――――……それでもまだ迷いながら。
バスルームに近付いた。
「……雪谷先輩」
シャワーは出っぱなしなので、聞こえないと思ったから。
ドアを少し強めに叩いた。
「先輩」
返事もないし、さっきみたいな声も聞こえない。
「先輩?」
がちゃ、とドアを開けると。
さっきとほぼ変わらない体勢で俯いたまま、バスタブに凭れて、体にシャワー、浴びたまま。とりあえず、シャワーを止めた。
「……大丈夫ですか?」
「……ん……」
近づいて、肩に触れて、顔を起こさせようとするけれど。
目をつむったまま、後ろにかくん、と倒れる。
「目、開きますか?」
少し声を大きくすると、ん、と声を出して、先輩が、オレをぼんやりと、見上げた。
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