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第91話「1000回」*大翔

 結局、1回じゃ収まらなかった。  2回目、付き合って――――……ますます、声が漏れて。  先輩が仰け反って、オレに寄りかかって、額、すり寄せてくる。  何してンだよ、おとなしく、前に集中してろよ!  苛つきながら、そのすり寄ってくる動作から、少し離れる。 「……あ……ン――――……ひ、ぁ……」  びくん、と大きく震えるのが、体を通して伝わってくる。 「……っち――――……」  舌打ち、1回で済んだ自分をほめてやりたい。  マジ、1000回位つきたい気分だ。  手に放たれたのを、シャワーで流すついでに、先輩も、流した。  さっき脱がせた時からずっと反応してた先輩のは、とりあえず、いったん落ち着いた。  タオルでざっと水分を吸い取って、バスローブを羽織らせた。  ドライヤーしてる感じじゃない。タオルで髪の水分を良く拭き取った。  もう、意識、あるかないかの状態で。  世にいうお姫様抱っこで、先輩を抱き上げる。 「――――……っとに……バカ……」  ため息を付きながら言って、ベッドまで運んで寝かせると、布団をかけて、包み込んだ。  ――――……オレから、見えないように。  ベッドの端に腰かけて、様子を見ていると。  すう、と寝息。  ――――……具合は悪そうじゃねえし、とりあえず、大丈夫かな。  果てしなくぼうっとしてるのは、酒なのか薬なのか分からないが……  どっちにしても、あと、2,3時間で切れるか……。  このまま寝てる間に切れてくれればいいけど。  思いながら、ため息をついて、ふと、自分の状態に気づく。  もう、完全にびしょびしょの服が冷たいし。  それよりなにより、ほんとにヤバいと思うのは。  ――――……体の中心の熱が収まらない。  ここで、今するなんて、絶対に嫌だと思ったけど。  ――――……もう、抜くのが一番早いと、思い直した。  濡れた服を脱いでバスルームに入り、シャワーを出した。 「……くっそ――――……」  何の感情よりも、ただ、何だか、ムカつく。しか無い。  シャワーの温度を少し熱くした。  ――――……さっきまで先輩に触れていた手で、自分自身に触れる。  薬でやたらエロくなってた人に、当たられただけ。  人のをやってる内に、自分もやりたくなっただけ。  ――――……何の意味もない行為。  絶対、意味なんか、無い。  自分に言い聞かせるように、そう考えて。    先輩のことは思い浮かべない。  敢えて何も、頭に浮かべないようにして、ただひたすら、いいとこ、手っ取り早く吐き出すことだけに集中した。  ほんと、もう、マジで――――…… 最悪。  バスルームに乾燥機がついていたので、濡れた私服をハンガーでぶら下げた。仕方なく、バスローブを着て。ウエストで縛って、ため息。  最悪。  こんな格好で、こんな場所で、あんな状態の先輩と、同じ部屋で過ごすとか。合コンしてた時には、かけらも想像できない事態。  ……つか、想像なんかできるか。  ……もう寝てやる。  寝て起きたら、先輩の薬も切れて、いつも通りに戻れる。はず。  つか、そうなっててくれという願望込みで。  出来たらさっきオレが処理した事も全部忘れててほしい。    ベッドから離れたソファで寝たい位だけど、先輩の異変に気付かなかったら困るから、あんまり熟睡するのもどうかと思うし。  仕方ないからベッドに乗って、先輩の足元の方に片膝を立てて座り、足元だけ布団をかけた。  先輩にかぶせた布団で姿は見えないけど、寝息は、聞こえる。  たまに、少し声が聞こえて。少し身じろぐ。  寝辛いは寝辛いんだろうけど……。  とにかく早く時間経って欲しい。もう、それだけ。  立てた膝を抱えるようにして、そのまま目を閉じた。  

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