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第92話「キレそう」*大翔※

「――――……ン……?……」  なんか。  ――――……変。  あぁ、なんか――――……すげえ、キモチイーな……。  ……この子、うまいな……。 「――――……」  ――――……は……?  ちょっと、待てよ。 ――――……オレ、今……ここって……。  覚醒すると同時に、いつの間にか、倒れて寝ていた体を、手をついて、がばっと起こす。  オレの足の間に、居るのは。  ――――……女の子じゃなくて。 「――――……せん、ぱぃ……?」  声が、出ない。 「――――……っ、ん……ふ……」 「ちょ――――……なに、して……」  オレのを、くわえて――――……刺激してくる。 「待、って、なにしてンの」 「あ……」  頭を思わず掴んで、口を離させてしまう。 「っ目ぇ、ちゃんと開けて。誰か分かってます?」 「――――……?……」  ダメだ。――――……ぽわぽわしてて。  ……でも冗談じゃない。  続けようとする先輩を抑える。 「ダメ、だって……」  両手首、抑えて、真正面から顔を合わせようと試みる。 「オレのことちゃんと見て。誰?」 「――――……」 「こっち、見て。オレは誰?」  強く呼びかけると、瞳を開けて、しばらく、見つめられる。 「――――…………し、のみや……?……」 「……よかった。分かるね?」  ホッとした瞬間。  目の前にあった、先輩の唇が、オレの唇に重なってきた。 「――――……ちょ……」  すぐに、ぬる、と熱い舌が、入ってきて、舌に触れてくる。  だめだ、絶対ちゃんと分かってない。 「ダメだって……」  掴んでいた手首を外して、肩を抑える。顔を背けて、唇を引き離すのに。   「――――……っ」  腕が、首に巻き付いて、ぎゅ、としがみつかれる。 「――――……シたい……」  は、と熱い息を耳元で吐かれて。  顔を離れさせようとするのだけれど。 「……も、や、だ……」  声が震えて。目の前の瞳から、ボロボロ涙が溢れた。  薬、辛いのか、と思うと、無理に引き離すのも躊躇う。  ぎゅう、としがみつかれる。 「……かず――――……」 「――――……っ」  だから、かずきじゃ、ねえって――――……。  何で間違えんだよ……っ。  こういう時咄嗟に出る名前、それしかねえのか……。  ぎゅ、としがみつかれて。  先輩が、オレをまたぐようにして、押し乗ってきた。  ひっく、としゃくりあげられて。  退けさせようとする手が、思わず止まる。  可哀想すぎて、どうしたらいいか、分からなくなってる。 「――――……っ」  はっきりいって、今までにない位の、パニック。  さっきのフェラで完全に勃ったままで、興奮状態だし。  目の前のこの人は、やたらやらしい顔で、迫ってくるし。  ――――……しかも、とても辛そうに、ボロボロ泣いてて。  どうにかしてやった方がいいのかと、とっさに、考えてしまうし。  ……でもダメだろ。  ――――……近い人とは、したくないって、言ってた。  言ってたのに。  それに、そもそもオレ、ゲイじゃないし。  ――――……なのに、何で反応してんだよ、ちくしょう……。  勃ってるそれに、先輩が触れた。 「ちょ、待って、先輩」  さすがに無理だと、先輩の手を捕らえる。 「……っやだ――――……入れて、よ……」 「――――……ッ」  キスされて。  泣きながら言われて。  ――――……キレそうになる。  ギリギリ、保ってんのに。 「……っかずき、じゃねえよ、オレ」 「――――…………」  先輩は泣きながら、何を思ったんだか、オレを見つめて。 「……しの、みや……――――……」 「――――……ん。 分かったら、離れて」 「……やだ……」  ぎゅう、と抱き付かれる。  ――――……マジで キレそう。

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