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第98話「消してほしい」*奏斗

「とにかくね……それで困ってたとこを、助けてくれたから……疑わなかったというか……」  話を先に進めようとそう言ってみたら。 「助けてくれたって、それ、ただあんたに早く薬飲ませて、連れ込もうとしてただけだから」  またそこにも、ツッコまれた。 「助けてくれたとか、違うから」 「……うん」  確かに、そうかも……。  ………………ん??   ふと気づいた事に、四ノ宮を見上げたら、四ノ宮は、何だか嫌そうに、何ですか、と聞く。 「え、あの2人って、オレに何か飲ませて、2対1で何かしようとしてたって事???」  マジか。とんでもないな、犯罪じゃん。捕まるやつだよね、それ。  ひどいなー、と、むむ、と憤慨していたら。  四ノ宮の両手が、オレの両頬をぐい、と摘まんだ。 「いった……」 「何なの、今さらそれ? もう、ほんとバカなの? あん時オレに電話してなかったら――――……今頃あんた、どーなってたか、分かってねえの?」  声を荒げられて、目の前の四ノ宮をじっと見つめる。  眉をひそめて、オレをまっすぐ見つめてくる。  もうこれは、怒ってはいるんだけど、それよりは、きっと……。 「――――……ご、めん。 心配かけて」  そう言ったら。  四ノ宮は、しばらくそのまま、オレを見つめていたけれど。  はー、と息を吐いて、手を外した。 「言っとくけど……」 「……」 「リクさんのとこであんた見るまで――――……ほんと、心臓、痛すぎて、死にそうでしたからね……」 「――――……」  視線を逸らしたまま、ため息とともにそんな風に言われて。  ――――……うう。こっちまで、なんか、胸が痛すぎる。 「ほんとに、ごめん……」 「無事だったから…… 良かったけど――――……つか、全然無事じゃねーか……」  はー、とまた、ため息が零れてる。 「オレは先輩との電話が切れてから、店に電話かけてリクさんを呼び出して、その2人から先輩を助けてもらって、クラブについたら先輩を引き取って、リクさんに、帰るのも大変だと思うって言われて…… それでここに来たんですよ」 「――――……うん」  なんか。  ……とっても色々、大変だったんだろうなと。  オレが意識ない間の四ノ宮に、ひたすら感謝していると。 「意識もはっきりしない先輩に、絶対触りたくなかったけど――――……先輩自分で出来ないし、もう不可抗力で、手伝ってイかせてあげたんですけど……バスルームでオレが触ったの、覚えてますか?」 「…………」  とんでもない話に、めちゃくちゃ思い出そうと思うけど――――……思い出せない。でもバスルームに居たのは、何となく、覚えてるような……?  でもはっきり思い出せないので、少し首を振ると。 「まあ……とりあえず出させて一旦落ち着いたから、先輩を寝かせて、オレも寝てたら――――……」 「寝て……たら?」  なんかここからが、大事な気がする。  ……だって、そこで、2人で寝てたのに――――……  さっきの事態になった、てことは、ここから……。 「なんか変な感じがして、目ぇ覚めたら」 「……うん」 「――――……フェラされてた」 「………………え??」  今、何と? 「――――……先輩が、フェラ、してきた」 「――――……」  さーっと、血の気が引いていく。 マジか。  ていうか、マジで今この瞬間、オレをここから消してくれるなら、  神様でも悪魔でもいいから、ついていきたい。  と、半ば本気で願うけど。  ……当然のことながら、どっちも来てくれない。  ――――…… マジ、オレ、何してんの…………。

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