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第100話「何それ?」*奏斗

 ――――……四ノ宮には、ほんとに迷惑かけたと思うから……考えたけど。  やっぱり、言いたくない。 「――――……振られた、だけ」  オレは、そう言った。  別に嘘じゃない。  本当の事だ。 「――――……ただ、振られただけ?」  四ノ宮が、じっとオレを見つめる。 「そう。……別れたいって、言われた」  本当に、そう。 「……別れたいって、言われただけで? そんな風になる?」  四ノ宮は、腑に落ちない顔をして、オレを見つめる。  ――――……事実だけど。  ……オレが、もう、人と付き合う事を諦めた理由は、言ってないけど。  でも。言いたく、ない。 「――――……何で、1人でしないの?」 「…………」  少し質問を切り替えた四ノ宮。  ――――……そっちから、聞く事にしたのか。  ……そっちなら、言える、かな……。 「しようとすると――――……勝手に和希が浮かぶから……」 「………だから、1人でしない?」 「……うん、そう」 「……1人でする位なら、外に行く?」 「――――……うん」  頷くしかなくて、そうしていると。  四ノ宮は、呆れたような、長いため息を付いた。 「……もしかしてカズキを思い出すからなのかとは思ったけど。――――……マジでそうなのか……」  もしかしてとか、思われてたのか。  と、思うと、それも、どうなんだろうとちょっと悩むけど。 「……あのさ、先輩」 「……うん」 「――――……人と付き合って、別れるなんて、普通の事だろ」 「――――……」 「誰だって、経験するし。でも、皆そこ忘れて、次にいくのに」 「――――……」 「何で先輩は、次に行かねえの?」 「――――…………」  四ノ宮の言葉は、当たり前の事で、まっすぐで、痛いとこ、ついてくるんだけど。 「……オレは……もう、行こうと思ってない」 「だから、何で?」  ……四ノ宮に、悪いとは思ってるけど。  …………しつこい。  ――――……言いたくない。   口にして…… はっきり、思い出したく、ない。 「――――……なんで、言わなきゃいけないんだよ」 「――――……」 「そこは、言いたくない」  そう言うと、四ノ宮はムッとして黙る。 「――――……ふーん……そっか……」  四ノ宮はものすごく長い沈黙の後、そう言った。 「……分かりました」  あ。分かって、くれた……?  しばらく、黙って、四ノ宮の言葉を待っていると。 「じゃあ、今は、もういいです」  ……今は? 「オレ、決めた事があるんですよ」 「え? あ、うん。……決めたこと?」 「今度、外行きたくなったら」 「うん……」 「オレが、相手しますから」 「――――…………」  ……? 「え?」  今何て???  マジで何を言ってるんだか分からなくて、四ノ宮を見つめていると。  四ノ宮の手が、オレの項に掛かって。  え、と思ってる間に、ぐい、と引き寄せられて。  ――――……顔が、すごく近づいてきて。 「んぅ……???」  ん??  ――――…………きす、されて……。 「ちょ、待っ――――……っん……っ」  舌が絡んできて、焦る。  焦って動かした手首を掴まれて、めちゃくちゃ、キス、される。 「……っ……――――……」  ゆっくり、離される。 「……なに、すン、の?」  さっきの、あれは、不可抗力だろ。  今のは、何?????  なんかもうびっくりが凄すぎて。  ただ、至近距離の四ノ宮を見つめるしか、できない。 「――――……先輩を、抱くって決めた時に」 「――――……」 「あんたがしたいなら、オレがするって決めたんですよ」  ……四ノ宮、何、言ってんの……???   「先輩が誰か好きな1人と付き合うっていうなら、良いですよ。でもそうじゃなくて、誰でもいいなら、オレとしてください」 「――――……何、それ……??」  全く意味が分からな過ぎて、オレは、四ノ宮をただ、見つめた。

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