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第270話「追いかける?」*奏斗
「……その写真、ほんとに飾るの?」
「飾る」
ご機嫌の四ノ宮になんとも言えない気分に陥りながら。
「確かにオレ笑ってって言ったけど……うまく笑顔のとこ撮ってくれたよね。奏斗、超いい笑顔」
「…………」
何だか、ほんとに楽しそうに写ってるので、超恥ずかしい。
あの時オレ、色々考えてたけどな。
手つないでるとこ、完全に映るなーとか、笑えってなんだよーとか。
なのに何でこんな笑顔かな。
自分に呆れつつ、写真を鞄に入れてる四ノ宮を見てため息。
「……どこに飾るの」
「さあ。帰ったら決める」
クスクス笑って、四ノ宮はそう言って、「次は何?」と笑う。
「んー……」
とりあえず、写真のことは後で話そう。飾るのやめてもらいたい……。
時間ないし、乗りたいものに乗っておこう、と考えて。
「あ、アレ、乗ってみたい」
「アレって?」
「ゴーカート。昼間は家族連れがいっぱいで乗れなかったから」
「ああ……空いてるかな?」
「うん、ジェット―コースターから見えたんだ。空いてた」
「あ、チェック済みなの?」
クスクス笑って、四ノ宮が頷く。
「いーよ、行こ。どっちだっけ」
「向こう」
一緒に歩き出して、ゴーカート乗り場に向かう。昼間は小中学生が多くて、素通りしたんだけど、大人でも楽しめるって書いてあって、楽しそうだなって思ってた。
「奏斗、タイムトライアルだって。マジでやる?」
「やるやる!」
「何、これやったことないの?」
「うん、前来た時は無かった」
「じゃあ真剣勝負ね」
「当たり前~」
「じゃあ、勝った方の言うこと、いっこ聞くっていうのは?」
「……」
その言葉を聞いて、四ノ宮を見上げる。
「変なこと、無しな?」
「何? 変なことって」
しれっとした顔でそんな風に聞いてくる。
……考えすぎ??
「変なことっていうか、まだ何も考えてなかったんだけど」
クスッと。……やな感じで、四ノ宮は笑うと、オレを見つめて、ふーん、と頷く。
「……何か、期待してる?」
「…………っっしてねーっつの。ああムカつく。絶対勝つ」
期待じゃねーし、警戒だし!
日頃のお前の行いが悪いから、警戒してんだっつーの。
「じゃあ一つ。勝った方の言うこと聞いて、何かしてあげるってことで」
「……絶対勝つー」
「ていうほど、オレに何かしてほしいこと、あんの?」
クスクス笑って、四ノ宮がオレを見つめてくる。その質問に、オレは、ふ、と考えてから。
「……いや、別に。何も頭に無いけど」
「けど?」
「なんか負けたくないだけ」
そう言うと、可笑しそうに瞳を細めて笑って、四ノ宮はコースを見てる。
すぐに呼ばれて、説明を受けて、スタンバイ。
「どっちから行く?」
「四ノ宮決めていいよ」
「じゃあ奏斗、先行って。オレ追いかける方が好き」
「……うわ、なんかそれっぽい……」
「……何でそんな嫌そうなのか、全然分かりませんが?」
「いや別に理由ないけどつい、嫌そうになっちゃいました」
「……」
妙な敬語で言い合って、無言でオレをじっと見た後、四ノ宮はクックッと笑いだして。
「まあ、いつも通り、奏斗、追いかけるから」
と、しぶとく笑いながら、言ってくる。
……いつも通り追いかける?
――――……追いかけられてたっけ、オレ。
はてなが頭にいっぱい浮かんでるけど、それ以上聞かず。
楽しそうに順番待ちをしながら、コースを見てる四ノ宮に、ちょっと息をついた。
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