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第269話「写真」*奏斗

 ……とか。馬鹿か、オレ。  いっこ下の後輩の言うこと。何、真に受けてんの。  何が楽しいんだか、今はオレと居たいみたいだけど。  ……ずっとな訳ないし。  ていうか、四ノ宮と絡むようになって、まだそんな時間も経ってないし。   「奏斗、何乗る?」 「んー……」  ……とりあえず、今、楽しいなら。今は、それでいい、よな。  オレも、四ノ宮と居るのは……。  すごく意味わかんないこともあるけど。居心地よくて、楽しい時があるのもほんとだし。……それでいい、かな。 「ん、じゃあジェットコースター行こ?」 「はいはい。なんかほんと、平衡感覚やられそうだけど」 「でもなんだかんだ言って、お前全然平気だよな?」 「オレ、平気でよかったね。付き合ってあげられないでしょ、ダメな人は」 「うん、良かった良かった」  クスクス笑って言うと、四ノ宮も笑う。  こういう感じは、楽しい。  一緒に、何かをするのも。  抱かれるのは――――……どうしたらいいのか、よく分からない。  ……キスされるのも。なんだか、よく分からないまま、普通にキスされてるとか、良いのかオレこれで。と、思うんだけど。  セフレ……みたいになるのもどうかと思うんだよな。  ……執着したくないから、一回でって言ってきたけど、よく考えたらオレ、キスもしたくないような人たちに、執着しただろうか。  …………四ノ宮とするの、嫌じゃないし。  しかも、他の人達と違って、私生活でもがっつり絡んでる。  一番、執着しやすいというか、境界が怪しくなってく相手なんじゃないだろうか。そう思うと、離れた方がいいんじゃないかな、と思うのだけど。 「奏斗?」  ぼーっとしてたら、腕を引かれた。 「早く乗ろ」 「あ、うん」  四ノ宮と一緒に、今日何回目かのジェットコースターに乗り込んだ。 「今日はこれが最後?」 「うん。寂しいけど」  言いながら頷くと、四ノ宮はクスクス笑う。 「じゃあさ、最後、写真買おうよ」 「写真? ……ああ、写真かぁ」  ジェットコースターの一番激しく落ちるところに、カメラが設置されてて、自動的に撮影されて、それが出口のところに映る。欲しければその番号を言えば印刷してくれて、持って帰れるんだけど……今までは全部、スルーしてた。 「買って、その写真どうすんの?」 「オレんちに飾っとく」 「……変じゃない? カップルとかなら飾るだろうけど」 「誰にとって変?」 「四ノ宮んちに来た人がそれを見たらさ、何でって思うと思う」 「葛城くらいしか入れないから」 「……そうなの?」 「そうだよ。オレ、自分ちはあんま人入れないから」 「――――……」  ……じゃあ何で、オレのことはあんなに無理無理入れさせるんだ。  そんな問いがよぎるけれど、またなんか余計な答えが返ってきそうなので、言うのをやめた。 「買うから、ポーズとろうよ」 「ポーズ? どんな? 腕上げるとか?」 「手ぇつないで万歳とか?」 「手つなぐ必要ある?」 「ある」 「うーん……できたら、ね? そもそもめちゃくちゃガタガタするしさ」 「了解。できたらでいいよ」  四ノ宮は笑んで頷く。  ……手つないで万歳したら、繋いだとこって写真に写るのかな??   そんなことを思っていたら。  四ノ宮はその写真ポイントに近づくと、オレの手を取って、顔の近くで握ってて。あ、これは映るなと思いながら「奏斗笑ってて」と言われて。  ていうかこういうのって普通、ぎゃーって言ってる写真なんじゃ。笑っててって……とおかしくなりながらも、写真ポイントを通り過ぎた。  どんな風に写ったんだろ、と思いながら、出口に向かって、写真が画面に写るのを待っていると。 「はは、超仲良さそうじゃない、これ」 「…………」  めちゃくちゃ手をつないで、二人して超笑顔のタイミングで撮られたらしい。  ……えーと。これ買うのかなり恥ずかしくない……? データ消してもらって永久に消えた方がいいと思うんだけど……。 「これ、残さなくていいんじゃない? 後々処分に困るよ絶対」 「は? 処分しねーし」  嫌そうな顔で、速攻オレにツッコんだ直後、四ノ宮は、そのやり取りを笑ってみてる係りのお姉さんに、「これ下さい」と笑いかけた。  

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