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第272話「望んでるのは」*奏斗

 順番が来て、観覧車に乗り込む。少しずつ、高さが上がっていく。 「やっぱ、昼と違うね。超綺麗」  昼に見える色んなものが見えない代わりに、色々なライトがキラキラしてて、綺麗。 「一周一時間とか乗ってられたらいいのにね。ずっと見てられる」 「綺麗なの好き?」 「ん。そだね」 「そっか。じゃあまた、どっか行こ」 「……ん」  またどっか。少しだけ、引っかかったけど。  ここで否定することもないのかなと思って、曖昧に頷いた。 「……四ノ宮は、これに何時に乗りたかったの??」 「んー。あと二分位」  腕時計を見て、四ノ宮がそう言う。 「二分で何時になるの?」 「二十時五十分」 「ふうん……?」 「そう。閉園前の十分」  何でその時間に乗りたかったんだろ。  よくわかんないな、と思いながら、少しの間、外の景色を眺めていたら。  突然目の前に、花火が上がった。 「……うわ、何……花火?」 「天気が良くて上空に風が無ければ、今の時期の週末いつもやってるんだってさ」  下で見るより、花火が近い気がする。 「――――……」  すごい。綺麗。  しばらく見ていると。  何だか、どうしても、疑問がわいてくる。  ――――……観覧車で、花火見るとか。それが何で、オレとなのか。 「……意味、分かんない」 「え?」 「…………女の子、連れてくればいいじゃん」 「――――……」  なんか綺麗すぎて。  良く分からないけど。……泣きたくなってくる。  何でだか全然、分かんないけど。 「……奏斗?」 「四ノ宮はさ……何で、オレと居るの?」 「……何でって」 「隣だし……ゼミ一緒だから……たまに帰るの一緒とか、ご飯たまに食べようとかなら……分かるんだけど」 「――――……」 「……今の感じは……なんか……やっぱりおかしいかなって思う」 「…………それは、ただの知り合いならってことだよね」 「……だって、知り合いじゃん」  四ノ宮は、すごく嫌そうにオレを見る。 「……花火。すぐ終わっちゃうよ。見たら?」 「――――……うん」  ため息交じりで言われて、空に視線を戻す。  ……オレが 今言ってることも……おかしい気がする。  ただの知り合いに、一緒に居る意味を聞くなんて。  …………何が聞きたいんだ、オレ。  なんて答えてほしくて、聞いてるんだろう。  ……明確な、言ってほしい答えが、あるわけじゃ、ないけど……。  四ノ宮に、なんて言って、ほしいんだ。    ただの知り合いだから、もうちょっと、一緒に居る時間減らそう、とか。  ……オレを追いかけてるみたいな発言、無くす、とか。  望んでるのは、それ……? 「……あのさ。オレは、奏斗を連れてきたいから、来てるんだよ」 「――――……」 「他の誰かとか、関係ないし」  四ノ宮は、は、と息をついた。 「……オレ、ずっと居るって言ってるの、本気だよ。冗談とかで言ってない」 「…………全然、わかんない」 「いいよ。奏斗が分かんなくても、側に居るから」  花火を見ていた視線を、四ノ宮に向けると。  四ノ宮は、オレをまっすぐ見つめた。  

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