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第290話「好きそう」*大翔

 朝食を奏斗に食べさせて、支度をしてから一緒に登校。  もうこの流れが、普通になってきた。オレの中では。  ……奏斗の中ではまだ、なんで、て感じな気がするけど。まあ、そこらへんのモヤモヤはスルー。 「今日、オレ五限迄だから。奏斗は?」 「四限」 「そっか。じゃあ……待ってる?」  そう言うと、奏斗は、ふ、とオレを見上げて、ぷるぷる首を振った。 「今日ごはん行くと思う。さっき連絡入ってたから」 「そっか。……じゃあオレも、たまには外で食べてこようかな」 「うん。そうしなよ。なんかいっつもオレと一緒だし。楽しんできて」  ……なんか、そんなに明るい感じで言われると、内心はムッとしてしまう。  奏斗と居るのが楽しいから居るんだし、むしろ、奏斗がそっちに行くから、たまにはいっか位で言ったのに、なんか奏斗の方は違うような気がする。  ……と、いちいち言っても仕方ないから、言わないけど。 「分かった。じゃあね、奏斗。気を付けて帰ってよ?」 「……だからオレ、女の子じゃないし」  はー、とため息をつきながら、じゃあな、と言って奏斗が離れていく。  その後ろ姿を見ながら。  女の子じゃないから、全然自覚しないし、だからある意味余計危ないから言ってるんじゃん。……そこらの女の子より可愛いし、変な奴らにモテモテなのも、もう分かってるし、だから心配だから言ってんのに。  はーもう……自覚無いって、ほんと、危険。   「おはよ、大翔ー」 「何固まってんの」 「別に」  そう答えて、歩き出すと、隣に二人が並ぶ。 「大翔が今一緒に居たのって、雪谷先輩だろ?」 「ああ……つか何で知ってんの」  全然接点無さそうなのに。  そう言ったら、有名じゃん、目立つし、と笑われた。  ……あぁ、そうか。そういや、ゼミに入る前から、見たことはあった気がする。 「なあ、あの人、彼女居る?」 「……何で?」 「こないだそんな話になったんだよ。告ってみようかなーって言ってる女子が居て、でも、当然彼女居るんじゃねえのって話になってさ。あ、大翔、仲いいみたいだから聞いてみようってことになったんだけど」 「……さあ。そこらへんは、聞いてないから知らないな」  えー、なんだよー、じゃあ今度聞いといてな、と言われて、聞けたらな、と返した。  ……彼女、ね。  ……まあ確かに、抱かれる方だなんて、思わないか。  オレにとってはもう可愛くしか見えてないけど、普通の奴らにとったらたぶん、普通にイケメンの男、だもんな。アイドルとか言われてたっけな……。  オレは王子で、奏斗がアイドルか。  ……ほんと、噂なんて、適当だな。 「なあ、今日さ、飯くいに行かない?」 「良いけど」  オレももう一人もそう言うと、「あ、マジ?」と笑いながら。 「今日オープンのさ焼肉屋があんの。今週はすげー安いらしいんだよ」 「混むんじゃねえの?」 「オレ、今日四限だから! 速攻行って、並んでおく」 「ああ、じゃあ入れたらな?」  笑ってしまいながら答える。 「何人か誘っといて良い?」 「良いけどあんま誘うと入れないんじゃねえの?」 「じゃあ適度に」 「わかった」  焼肉か。  家にホットプレートとか無いから、奏斗とはしてないな。  ……買うか、今度。ホットプレート。  好きそう。焼肉とか、そういうの。  たこ焼き焼けるのがついてるのもあるの、どっかで見かけたような……。  ますます好きそう。  嬉しそうにたこ焼き回してる姿が思い浮かんで、絶対買おうと決めた。    

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