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第299話「時間つぶし」*奏斗

「ごめんな。カラオケ、途中で。……結局呼び出して」  そう言うと、四ノ宮はオレを見て、ふっと微笑む。 「良いよ。どうせ奏斗待ってる時間をつぶしてただけだったし。オレ、電話出るの早かったでしょ?」 「うん」 「連絡きたらすぐ出るつもりだったから、ずっとスマホ持ってたし」 「……」  友達とのカラオケが、オレを待ってる時間つぶし。  ……って、何だかな……とちょっと返事に困りながら、四ノ宮を見上げてると。 「ていうか、ごめん、オレもすっかり忘れてた。日本酒買うの付き合うとか言ってたのに」 「それはオレが頼まなきゃいけないことだし」  ……なんか昨日疲れてて、ぐっすり寝ちゃったら、朝すっかり忘れちゃったんだよな。四ノ宮とばっか居れないとか言って、のんきに焼き肉屋になんか行ってる場合じゃなかった……。  今日は別々に帰ろうって言おうとか言って、結局また、自分から付き合ってもらうことお願いしてるとか。  もー。オレのバカ……。 「明日じゃなくて、パーティーの時でも大丈夫だと思うけど……早い方が良いってことだよね」 「うん。明日渡せた方がいいかな……」 「じゃ早く行こ。あんまり時間ないし」 「ん」  四ノ宮と一緒に急いで歩いて、デパートのお酒売り場にたどり着く。日本酒のコーナーで色々見ながら、四ノ宮がオレを振り返る。 「いくらぐらい? 予算」 「予算は決めてないけど」 「前にオレが、知り合いに日本酒をプレゼントしたことがあってさ。そん時、葛城が美味しいからって言ってすすめてきたのがここら辺の純米の大吟醸なんだよね」 「じゃあその中から選べる? オレ、日本酒、全然分かんないから」 「オレも分かんないけど……お店の人に聞いてみる?」  四ノ宮が少し離れた所に居る店員さんを見ながらそう言った。 「ううん。葛城さんの好きなのがいい。四ノ宮が分かるならそれでいいんだけど」 「じゃあ……これ、かな」 「ん。じゃそれで。買って来るね」 「ここらへんで待ってる」  四ノ宮から 受け取って、レジに向かう。  包装してもらっている間、四ノ宮が他のお酒を色々見てるのを、なんとなく見てると、ふとこっちを見てきて、目が合う。にこ、と笑顔。 「――――……」  ……王子。ね。  まあ。見た目はね……分かるけど。  ほんとに……どうしてオレとずっと、居るんだろうって、不思議でならない。  さっきの、焼き肉屋に居た女子だってさ。四ノ宮のことが好きそうだった。視線で分かるよね、そういうの。あの子が違ったって、もう、どこに居たって、女子に見られて、モテてるしさ。  ……イメージばかり押し付けられて、ほんとのこと言うのが面倒みたいなこと言ってたけど……四ノ宮がその気になれば、ちゃんと四ノ宮を好きになる子だって、居ると思うし。  まあ、オレにとってはかなりの意味不明な宇宙人だけど……。  でも、きっと、女子にとってみたら。ああいう彼氏を好む子は、たくさんいるんじゃないだろうか。  意外過ぎるほどに、面倒見良すぎだし。 「リボンはどうされますか?」 「リボン……じゃあ、青いので」  青と銀の二本使いの細いリボンが、綺麗に箱に巻かれて、結ばれていくのをぼんやりと、見つめる。

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