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第342話「くるくる」*奏斗
電話で呼び出された葛城さんがやってきて、なんとなく三人で出迎えたオレ達を見て、何も言わず苦笑したのが、なんかもう色んな意味がありそうで、なんかもう、本当にもう、脱力して、へなへな座り込んでしまいたい気分だった。
とりあえず二人の上着を別の部屋に掛けてから、たこ焼きパーティ……いや、パーティって何。四ノ宮のお父さんが言ったんだよな、パーティじゃないじゃん。別に、ただたこ焼き食べるだけだし。
なんでたこ焼きパーティなの……。とまた脱力しかけながらも、オレはさっきまで四ノ宮のお父さんが抱っこしていた二号を、ソファの方に移動させたのだけれど。
「……雪谷さん、それって大翔さんのですか?」
四ノ宮の家にあるんだから、絶対そうなはずなのに、あまりにも意外に思ったのか、そういうことあんまり聞かなそうな葛城さんに、聞かれてしまった。
「こないだ遊園地に行った時に、ノリで……」
「……なるほど」
クス、と笑われて。ああ、もう何を思われてるんだろう。いや、ここにあるってことは買ったの四ノ宮だから……似合わないって思ってるだけに違いない。気にしないし、笑った理由も聞かない聞かない。
と、思いながらテーブルの方に戻ると、そこで、今更目に飛び込んできた、カウンターに飾られてる、ジェットコースターの写真。
ちーん……。
もう無理。良く分かんないけど、もう無理。
……と、なってるんだけど、排除しなきゃと思い、なんとか普通に、言葉を絞り出す。
「四ノ宮、これ、片付けようよ。ふざけて買ったけど、やっぱ変だよ、飾ってるの」
「……ああ。そう、だね」
何を思ってるのか知らないけど、「ふざけて買った」で押し通そうとしてるオレの一生懸命な対応に、あんまりな気のない反応……。もっと、ふざけたというところを強調して応えてほしい。……でももういい。無視だ。
立てるようになってる後ろの部分を折って平らにしてから、カウンターの端に、伏せた。
こんなの飾った横で、四ノ宮のお父さんと葛城さんと、たこ焼き作るなんて無理。
もう本当ならその場で倒れたい気分になってるんだけれど。四ノ宮が色んな材料を冷蔵庫から出してきてテーブルに並べてから「座ろ」と言った時は、ささっと超素早く動いて四ノ宮の前の席に座った。絶対四ノ宮の隣に座るのはやめようと思って。だって、並んでるとこを、前から、お父さんと葛城さんに見られるとか絶対嫌だと思ったから。なのに、四ノ宮ときたら、「は? 何でそっち行くの」みたいな顔するし。何で隣に座ろうと思ったのかを逆に聞きたい。……聞けないけど。もう無視。ひたすら無視。
なんだかもう、色々な意味でたこ焼きの前から、勝手に一人、疲れ果ててる。
四ノ宮がホットプレートにたこ焼きの液を流し込んでいくのを眺めた後、具を詰めてくのだけど……。
「もう、好きにしていーよ。はい」
四ノ宮の苦笑いの投げやりとも言えるセリフとともに、中に入れるものを配られた。オレがタコを入れてって、その後、ほかの三人が揚げ玉やネギや紅ショウガを入れていく。
「下が固まるとくるって回るらしいから……奏斗、やりたいでしょ?」
四ノ宮がクスクス笑ってそう言いながら、ピックをオレに渡してくる。
別にやりたいなんて言ってないけど……。
……でもちょっとやりたいけど。
「親父と葛城はやんなくていいよね?」
「二人に任せるよ」
四ノ宮のお父さんは笑いながら、そう言ってくる。
「大翔さん、買ったんですね、ホットプレート」
「そう。焼肉もできるし」
……焼肉も。……オレと、かな??
思いながらオレはそれには反応せず、たこ焼きを回すことにとりあえず、全神経を集中させることにする。
じゃないと色々考えて、ほんと疲れるから。
「翔一さま、すぐ戻られるとおっしゃいましたよね?」
葛城さんが苦笑しながら、そう言ってる。
「ああ、そのつもりだったんだけど……たこ焼きの準備してるからさ」
笑いながら答えつつ、オレと四ノ宮がくるくる回してるのを眺めてくる。
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