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第341話「似てるかも」*奏斗

 リビングに入ってすぐ。テーブルのとこの椅子に座ってる二号を発見。  何でこんなとこに座ってんの二号。  ちょっと唖然としていると、四ノ宮のお父さんが二号を抱き上げた。 「雪谷くん、これ知ってる?」 「え。あ、はい」 「あ、知ってるんだね、そっか、部屋にくれば目に入るか」  そうですね、と笑い返しながら、スーツ姿のイケてるおじさんが、ぬいぐるみを抱きかかえてる姿に。しかもそれが、四ノ宮のお父さん。  ヤバい。もう、どうしていいか分かんなくなってきた。  でもって、テーブルの上には、タコ焼き機とその準備。  なるほど、お祭りで食べるものって言ったのは、これか、と思いながらも、どう反応していいのやら。  作ってくれようとしたんだよね。  お父さんが居なかったら、今の気持ちのままなら、うわ、すごいって。ホットプレートもしかして買ったの?て言うとこなんだけど。……いや、なんか変だよね、四ノ宮がオレにサプライズみたいにたこ焼き準備して、オレは勝手に鍵を使って入ってきてって、絶対変だよね? 「二人でたこ焼きパーティー?」 「そう。今からするから、帰って? スーツに匂いつくよ?」  四ノ宮、本気で絶対帰ってほしいんだな。分かってたけど、もうド直球に帰れって言ってるし。 「いやでも……たこ焼きなんて久々だな」 「は?」  四ノ宮はめちゃくちゃ低い声でそう言って、自分のお父さんを見て固まってるけど。 「しかも大翔手作りか。邪魔してもいいかな?」  四ノ宮のお父さんは、何でか、オレを見て、そう聞いてくる。  ……え。つか、オレ、これを断ることなんてできる訳がないと思った瞬間。 「ダメ。絶対。奏斗との分しか無いから」  オレが何か言うよりも早くそう言ったのだけれど、お父さんは四ノ宮のそのセリフを聞いて、オレをふと、見つめた。 「そうそう、さっきからどこかで聞いたなーと思っていたんだけど」  何だろう?と思いながら、続く言葉を待っていると、オレをじっと見て、ふふ、と笑った。 「今度、大翔とパーティーに来てくれたりするかな?」 「あ……はい。行かせてもらう予定で……」 「スーツの採寸で、瑠美にも会ったり?」  クスクス笑いながら、もう確信しているだろう質問をオレにしてくる。 「はい」  頷くしかなくて、頷いた後、「スーツ、ありがとうございます」と言うと、四ノ宮のお父さんは、にっこり笑って首を振る。 「葛城の話だと、完全にこちらから誘ったようだし……」  何だかじっと見つめられて、それから、ふーん、と笑われる。 「着てもらえれば良い宣伝になるって聞いてたんだけど。うちのスーツ、着こなしてくれそうだね」 「いやあの……入学式とか七五三感がすごかったので……」 「ん? 大学の入学式?」 「はい……」 「七五三。ふ。そんなことないと思うけどね」  口元を隠して少し笑って、四ノ宮のお父さんはオレを見つめる。その隣の四ノ宮の、すごーく困ったみたいな表情も一緒に目に入って、オレは苦笑い。  なんか、お父さんて、四ノ宮がもうちょっと素直に笑うようになった感じ、なのかなあ。  やり手の社長さんなんだよね、確か。会社いくつかやってるって。  こんな優しい雰囲気で、やり手か……。  四ノ宮が、色々表に出さず、誰から見ても王子だったのは、この人に似てるのかな。今オレはこの人をうさんくさいとは、思ってないけど。もしかして、もう熟練されちゃってて、うさんくささすら、感じさせないとか?  だとしたら、四ノ宮よりも怖いけど。  そこまで考えて、ふと、思い直す。  なんだかんだ言って、四ノ宮って、裏も表も優しいから。やっぱりお父さんも優しいのもしれない、のかな。 「で、雪谷くん」 「はい?」 「たこ焼き。一緒にやってもいいかな?」 「えっと……」  四ノ宮を見るけれど、四ノ宮は小さくプルプル首を振っている。 「……はい」  って言うしかねーじゃん!  あーあー、みたいな顔、すんなよー!  と見るからにがっくりしてる四ノ宮に、心の中で叫んだ。 「葛城も呼ぼうか。タコや粉が足りなかったら、下の店で買ってきてもらおうか?」 「いいよもう……めちゃくちゃ作れるくらい買ってきてるから」  はーとため息の四ノ宮に、お父さんは、ははっと笑いながら、スマホを耳に当てた。 「ああ、葛城? たこ焼きパーティするみたいだから、あがってきてもらえる? ……ああ、そう。雪谷くんも居るよ。じゃあ待ってるから」  そんな会話をして、通話を切ると、スーツの上着を脱いで、ネクタイを緩めた。  やっぱり、すごく似てるかも。  そう思いながら、なんだかすごく嫌そうにお父さんと会話してる四ノ宮を見る。  これから、ここで、葛城さんも含めて、皆でたこ焼きパーティか。  どんな空間だよー。  うう……帰りたい。    

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