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第375話◇「最悪」*大翔

◇ ◇ ◇ ◇  最悪。  ……はー。  夕食後、集まって、風呂の順番をきめた時。まず、部屋でシャワーがいい奴―?と先輩が聞いた。  どっちでもいいよ、という人達が数人。  じゃあ温泉入りたい奴―と言ったら、奏斗も温泉がいいなーと手を挙げてる。手あげんなと思いながら、とりあえず、オレも挙げておく。  じゃあ、三人ずつで行くかってことになって、もう端っこから三人ずつで組にしていって、あっという間に決まってしまった。  よりによって、そん時、冴島さんは奏斗に張り付いて喋ってたから、まさかの冴島さんと。あと、もう一人は佑。  オレは端っこで最後だったので、相川先輩と二人に決まった。  ちっ。佑とオレが反対に立ってたら、オレがそっちだったのに。  何か理由つけて、佑と替わってもらおうかと思ったが、そんな不自然なことしたら、絶対怒られる……。あー、どうすっかな。あ、そうだ。と思って奏斗に近づいた。 「雪谷先輩、オレと替わります?」  こそ、と奏斗に囁いたら、え、何で? と怪訝そうに聞かれる。  ……冴島さんがやばそうだからとは言えず。 「オレ相川先輩とだから、その方が、良くないです?」 「……」  まだ風呂のこと言ってたのかという視線なのは、ものすごく分かる。  ため息とともに。 「ああやって決めたのに、オレ達だけそんな理由で変えられないだろ」  と、また優等生なことを言ってくる。  そんなのどーでもいいから、チェンジしましょうよ、と言いたいのだが、冴島さんがふらふらーと寄ってきた。 「なあ、ユキ、オレら最後の方だし、売店行かない?」 「あ、イイですよ。おみやげ買いたいので」 「あ、オレも行きまーす」  じゃな、とオレをちら見して、奏斗が離れていく。相川先輩もついてったので、もうアレにはついてかなくていいかなと、ため息。 「……何、どーしたの、大翔」  オレが、部屋の窓のとこに座って、はー、と息をついてると、祐が寄ってきて、可笑しそうに笑った。 「何か疲れてる?」 「……いや。なんか色々うまくいかないよなーって思って」 「何が?」 「……いや、なんか。色々?」 「なんだよそれ」  苦笑いで見下ろされる。 「ああ、そーだ。祐、雪谷先輩と、風呂一緒だろ」 「うん。そう。……ていうかさあ……あの決め方どうよって気ぃしない?」  何だかんだと、風呂やら買い物やらで、誰もいなくなっていたので、祐が苦笑しながらそう言ってくる。 「オレ、雪谷先輩はいいけど、冴島さんとか、全然喋ってないし。その三人で風呂って……いいなあ、お前、相川先輩で。そっちが良かった」 「チェンジする?」 「……いやー……でもなんでチェンジしたのって言われても困るしさぁ」  ……奏斗と同じようなこと言ってるし。 「あのさー佑」 「ん?」 「何も聞かず、聞いて」 「は??」 「雪谷先輩の近くに居てくれよな」 「……はい?」 「冴島先輩と二人にすんなよ」 「…………ああーーなるほど」 「?」  なるほど、と返ってくるとは思わなかった。 「あれだろ、さっき、ユキが可愛い可愛いってヤバかったからだろ」 「……まあそう」 「何、本気でヤバそうな気ぃしてんの?」  クスクス笑う佑。  ……まあきっと本気ではとってない。 「だって、なんか雪谷先輩って、やばそーじゃん。なんか抜けてるし」 「えー? 抜けてるかなあ? しっかりしてそうだけど。何その評価」  苦笑いの佑に、オレは、「とにかく任せた」と言うと。 「了解しましたー」  …………絶対ぇこいつ、本気で取ってないな、と思いながらも。  ちょっとそれ以上、繰り返す気にはなれなかった。    はーくそ。  温泉とか、帰ったら死ぬほど連れてってやるから、部屋でシャワー浴びればいいのに。はー。もう。  うんざりなため息をつきながら、お前面白いな、とか笑ってる佑に、ほっとけ、と呟いた。

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