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第422話「操られ?」*奏斗

 食事を終えて一緒に片付け始めると、「奏斗はコーヒーを淹れて」と言われて分担。またテーブルで向かい合わせで、四ノ宮が買ってきたアイスを食べ始めた。  お腹がいっぱいになって、落ち着いたからかもしれないけれど、さっきからあくびばっかり。合宿であまり眠れないまま帰ってきて、昨日も割と遅かったからか、しょうがないかと思う。 「なんかすごい眠い」 「みたいだね。まあ、寝不足だよね」  言いながら時計を見上げた四ノ宮が、でもまだ二十時半だけど、と笑う。 「ちょっと寝るには早いかな」 「ん……」 「あ、でもこれ食べて、寝る準備して、二十一時過ぎに寝ればいっか」 「うん。そーする」  はわはわ。またあくび。  だめだ、しゃべってても、アイス食べてても、もう眠すぎ。 「うちで寝るでしょ?」 「……あのさぁ」 「ん」 「……絶対毎日一緒、とかはやめようよ」 「何で?」 「なんか当たり前みたいになるのも変じゃん。夕飯もさ、たまに一緒になる位で良いんじゃないかなと思うんだけど……」  言いながらもまた、あくび。もう話してる内容関係なく、眠い。  涙が滲む。 「とか言って、今日カレー用意してくれたじゃん」 「たまたまカレーが食べたくなって、やっぱり作りすぎちゃうから」 「とんかつも、オレのも買ってきてくれてたじゃん」  ぐ、と言葉に詰まった後。 「あれは、明日食べてもいいやと思っただけだし」 「……何でもいいけどさ」 「とにかく毎日一緒って思ってるのもめんどくさいでしょ」 「めんどくさくなんかないよ」  そう言うと、四ノ宮はクスクス笑いながら、オレを見つめる。 「あ、まだカレー残ってたじゃん? 明日、ちょっと違う感じにしていい?」 「違うって何? カレーうどんとか?」 「んー。奏斗、ドリア好き? チーズ好きだし、好きだよね?」 「うん。好き」 「カレーライスをグラタン皿にのっけて、卵とチーズかけて焼いて、黒コショウ」 「何それ。超美味しそう」 「でしょ。明日それにしてあげるね」 「うん!」  ……はっ。  …………超わくわく頷いてしまった。  まんまと明日の約束をしてるアホすぎる自分に、何度か瞬きを繰り返していると、四ノ宮は口元を軽く握った右手でかくしてる。……けど、明らかに笑っている。 「お前、なんか、オレのこと操ってない?」  もうムカついて、パクパクアイスを口に詰め込んでいると。 「……ぷ。おもしろ、奏斗」  あは、と笑って、それから、不意にガタン、と立ち上がると、四ノ宮の顔が急に近づいてきて。 「……っ」  舌が触れてくる。なんか、アイス食べてるから、舌がお互い少し冷たい。うなじを押さえられて、動けないでいると。 「――――……チョコアイス、おいしーね。バニラの味、した?」  クスクス笑われて、かぁっと赤くなる。 「も、なんか……お前、嫌い」 「嫌いじゃないのは知ってるし」 「……っっ一人で寝るからな、オレ、もう。食べたら帰れよなっ!」  引き離して、またアイスを口に入れていく。  四ノ宮は、特に何も言わず、クスクス笑っている。  ……で。結局その日どうなったかと言うと。  なんでだかあれよあれよと、四ノ宮の部屋に連れていかれ、四ノ宮のベッドで抱き締められたら、ものすごく眠かったのもあって、あっという間に眠ってしまったのだった。……何で断れないのかな、ほんと。

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