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第437話「可愛いとは」*奏斗

「あ、居た、奏斗」  少し離れてから改めて見ると、ものすごく目立つ奴が、周りの視線を引き連れたままでオレの元にやってきた。 「あ。四ノ宮。挨拶、終わった?」  こそっと囁くと、四ノ宮は、まだ、と苦笑い。「疲れすぎたから、奏斗で癒されにきた」なんて言って笑う。 「お疲れ。確かにこれは疲れそう」  オレなんて、この場に居るだけで微妙に緊張して、ちょっと疲れてる。 「そうでしょ?」  苦笑いの四ノ宮。あ、この顔は、いつも通りだな。 「奏斗、色々話しかけられてたでしょ」 「あ。うん少し……?」 「しつこそうだったら行こうかと思ってたけど」 「見てたの?」 「当たり前じゃん」  オレは苦笑しながら、「潤くんが居ると、しつこくはないから平気。スーツ似合いますねとか、そういうので終わるよ」と言うと、四ノ宮は「よくやった」と潤くんを撫でてる。潤くんは不思議そうだけど、撫でられてるのでニコニコしてる。 「奏斗も潤も、食べれてる?」 「うん、美味しいよ。ね、潤くん?」    オレの言葉に、潤くんが頷いて、四ノ宮を見つめる。 「ヒロくんは食べた?」 「オレは食べてない。あ、奏斗、そのカナッペちょうだい」 「ん、食べていいよ」 「オレ、手、綺麗じゃない」 「ん」  そっか、と思って、口に入れてあげると、潤くんが反応した。 「あーずるいー、あーんしてもらうの!」 「お前は自分で食べろよ」 「ユキくん、潤にも、あーんして」 「だめ」  何故か四ノ宮がダメだしをしている。何だかよく分からないやりとりが、目の前で繰り広げられているのを呆れつつ見ていると、四ノ宮の一家がこっちに来てしまった。  うわー……。この一家、ほんとに超目立つな。  オレと潤くんはテラスに出てるし、今もここは人が少ないのだけれど、視線の集め方は半端ない。メインの会場の方からも見られてる気がする。まあ見ちゃうだろうな。主催者ってのを抜いても。  何なら、少し離れて、スタッフの人達に静かに指示を出してる葛城さんも、目を引く気がする。 「本当に潤は、雪谷くんに懐いているんだね」 「ほんとね、一回しか会ってないんでしょ?」  四ノ宮のお父さんが笑いながら潤くんの頭を撫でて、その隣でお母さんも微笑んでいる。 「つか懐きすぎ……」  四ノ宮が言うと、瑠美さんが「だってユキくん、可愛いんだもんね?」と潤くんに言う。 「うん!」  と元気に答える潤くん。  ……あ、さっきだけじゃなくて、瑠美さんの前でも可愛いって言われてるのか、オレ。  苦笑いを浮かべてしまうけど、満面の笑みを浮かべてる潤くんには勝てないので、まいっか、と思っていると。 「お前、年上に、可愛い言うなよな」  四ノ宮が、潤くんの頭をグリグリ撫でると、「ユキくん、かわいいもんー」と言って四ノ宮を見上げ、そんな潤くんのほっぺたを四ノ宮がつまんでいる。  何なんだ、四ノ宮。黙って立ってれば超カッコいいんだから、潤くんとまともにやり合わないでほしい。しかも、家族の前で……。  ていうか、お前もオレに可愛いってひたすら言うけどな。年上だからな、オレ。  オレは、そんなことを思いながら、四ノ宮と潤くんのやり取りを、ちょっと呆れながら見つめる。

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