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第446話「小太郎鋭すぎ」*奏斗

◇ ◇ ◇ ◇ 「今日ユキ、ため息多くない?」  二限が少し早く終わって、小太郎と食堂に来た。まだご飯を買いに行くのは早いかなと、二人で席に座ると、小太郎にすぐにそう聞かれた。 「んー……そう?」 「うん。そんな気がする。疲れてる?」 「んー……小太郎、ちょっと聞いてみていい? 誰にも内緒で」 「ん、イイよ。どうぞ」 「……色んな世界が違う人と、一緒にいるのって、大変だと思う、よね?」 「世界って?」 「身分、とか?」 「今時、身分?」  小太郎は苦笑い。んー、そう思うよなぁ、とオレも苦笑しながら。 「んーと……めちゃくちゃお金持ちとかさ、もう、普通じゃない感じの」 「そうだねぇ。まあ……大変、かなあ……?」 「だよね」 「何、大金持ちの女の子に惚れちゃったの?」 「あーううん。……大金持ちの男に、好きって言われてる人がいて」 「あぁ、ユキのことじゃないのか。ぐったりして話すからユキのことかと思った」  クスクス笑って、小太郎が続ける。 「まあ、でも、どんだけ一緒に居たいかじゃないの」 「――――」 「色々跳ねのけてでも一緒に居たいなら頑張ればって思う。だってそもそも好きなのは、お金持ちの彼の方なんだよね?」 「……そうらしいけど。でも、違うとこ、いっぱいあるんだよ」  もともとノンケってとこも大きいのだけど、それはさすがに言えない。 「んー……でも、それでも好きになってくれてるんだろ? それなら信じて飛び込んでみるとか? 玉の輿って、そういうことを言うんだよな?」 「……そう、だね」 「あるんじゃないの、そういう言葉もある訳だし」  ……うーん。男同士だから結婚できないってとこも大きすぎるのだけど、これも言えない。 「とにかく、一緒に居たいかどうか、お互いがどう思ってるかが大事でしょ」 「――小太郎って、強いよな。まっすぐだし……たくましい。そういうとこ、好き」 「――――」  小太郎は、ぷ、と笑って、伸ばしてきた両手でオレの頭をクシャクシャに撫でた。 「照れるし! つか、オレもユキのそういうとこ、好きだよ」 「そういうとこって?」  くしゃくしゃになった髪を直しながら聞くと。 「好き、とか言ってくれちゃう可愛いとこ?」  クスクス笑う小太郎は、もう一度椅子に座りなおしてから、肘をついて頬杖をついた。 「あと、悩んでても、外に出さないで頑張るとこも」 「――オレ、悩んでる?」 「ユキが悩んでるなんて、あんま他の奴は気づいてないと思うけど」  小太郎は、ふ、と笑って、オレを見つめる。 「元気で明るいけどさ。たまに、無理してんのかなって思う時はある」 「――オレ、小太郎にそんなに何か言ってる?」 「言ってない」 「じゃどうして、そう思うの?」 「んー。何でだろ? ああ、今日みたいな感じかな。一人の時ため息何回か、とか。少し俯くなーとか」 「……小太郎鋭すぎ」 「はは」  小太郎は、クスクス笑って、オレをまた見つめる。 「良く分かんないけど……その子のことはそう思うけど。あと、ユキのことは、ユキ自身が、したいようにしたら?」 「……うん。ありがと……って、オレのことって?」 「言えないような、ユキのこともあるんでしょ?」 「……ん。わかった。ありがと」  頷いたところで、他の友達たちがやってきて、隣に座っていく。 「なあ、勉強会、土曜からにする?」 「あ、うん。オレはそれでいいよ。誰の家にする?」 「オレんち、土日ならいいよー」  週末からってことになり、土曜は友達のところに泊りに行くことが決まった。  このテスト期間で、少し四ノ宮と離れて、考えられるかな、なんて。オレは、思っていた。 ◇ ◇ ◇ ◇

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