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番外編【全部って】真斗side 2
カナはたぶん、四ノ宮さんの前では聞かれたくないと思うけど。
聞いてみようかなぁ。……心配してたんだし、オレ。
「カナ?」
「ん?」
「一回断ったのに、どうして付き合うことになったの?」
「ん。あ、うん」
オレがそんなこと聞くとは思わなかったんだろうな。少し驚いた顔をしてから、んーと、と考えている。
「……あの日、実家から帰る時さ、ゼミの集まりに行くって言ったでしよ」
「ああ、そだね」
「……そこに四ノ宮も来たんだ」
「うん」
「それで、会って」
「うん」
えーと……と、すっごい色々考えている顔をしている。
これはきっと何かやらかしたんだろうなーと、すぐ分かる顔。
まあカナが何かやらかして、四ノ宮さんと二人んなって、話した結果、て感じかな。
困った顔で、四ノ宮さんをちらっと見るカナ。無意識なんだろうけど、助け求められても四ノ宮さんも困るだろうに、とちょっと可笑しくなってきて、もうこの質問打ち切りにしようかな、と思った時。
苦笑しながら、四ノ宮さんが、オレを見た。
「オレが一回思い切り振られたっていうのは知ってるんだよね?」
「あ、はい」
思い切り振られたって。
クス、と笑ってしまうと、四ノ宮さんも笑いながら。
「オレが未練ありすぎて、旅行のおみやげを口実に自分ちに来てもらって、それで、色々話した……て感じかな」
カナがやらかしたことは、入ってないな。
四ノ宮さんの顔を見ながらその言葉を聞いて、オレはカナに視線を移した。
カナは、オレを見て、んーと、とまた考えてる。
「……なんか今ものすごく色々、省略してくれたけど」
カナはそう言って、四ノ宮さんを見上げて。
目が合うと、ぷ、と吹き出して、クスクス笑った。
――――……おー。……なんか。カナ。
……変わった気がする。
オレの内心の驚きには気づかず、カナはオレを見ながら話し始める。
「ゼミの飲み会でね、オレ、ジュースと間違って、似てるお酒飲んじゃって」
「は? カナ、何してんの」
オレが一瞬でツッコむと、「だよな、何してんのって感じ。ほんとたまに、えっ?てことするんだよね」と、四ノ宮さんが笑う。
「隣同士って分かった頃も、ベランダで布団干そうとして転がって、しかも割ったプランターで怪我したりしてさ」
「わー、言わなくてもいいじゃんか、それ」
カナがそんな風に言ってむくれたところに、店員が飲み物を運んできた。
少しだけ無言になってるけど、カナは、むー、と四ノ宮さんを見つめてて、四ノ宮さんは、楽しそうにクスクス笑ってる。
で、結局、店員が居なくなる頃には、カナも、そんなこともあったね、とか言って笑ってるし。
「それ、怪我してどうしたの?」
「その時は、ベランダでその様子聞いてた四ノ宮が話しかけてくれて、手当しに来てくれた」
苦笑いのカナに、四ノ宮さんも、だってあまりにドジすぎて……と笑ってる。
「あ、その話はおいといて……そう、間違えて飲んじゃったらちょっと酔っちゃって、四ノ宮に連れて帰ってもらって……あ、ゼミの先生が、家近いの知ってるから、連れて帰ってあげてって四ノ宮に言ったから、なんだけど」
「うん」
「それで二人になって、色々話したんだ」
カナは、そう言って、オレをまっすぐ見つめる。
――色々細かく聞くのは、二人ん時でいいや。
四ノ宮さんの前でこれ話すのは、すごく照れそうだし、カナ。
そう思って、オレはこの話題はしめることにした。
「話したら、やっぱり、付き合いたいってなったんだ?」
そう言うと、カナは、じっとオレを見つめてから。
ん、と頷いた。ふわ、と、微笑んで。
「――――……」
あ、やっぱり、と内心、すごく驚く。
こんなに、幸せそうに笑うカナ。
……いつぶりだろ。
なんかちょっと感動。……するかも。
いや、泣いたりはしねーけど。
付き合うようになったのがあの日なら、まだそんなに日は経ってない。
この短期間に、あのカナが、こんな風に笑うようになるとか。
……すげーな、この人。と、四ノ宮さんを見てしまう。
オレみたいな、アマノジャクというか、全然素直に人に頼るとか無いような奴が、ほとんど会ってない段階で、なぜかカナをよろしくなんて言ってしまった、四ノ宮さん。
なんか、謎に信頼感、あったんだよな。
カナのこと、任せられそうって。
四ノ宮さん推しとか言ってしまってたけど。
当たってたかも。謎の勘。
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