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番外編【全部って】真斗side 3

 そこからは何か、バスケの話を聞かれたり、高校のことを聞かれたり、すごく、他愛もない話。  むしろ、オレのことを話してる時間がしばらく続く。  カナと四ノ宮さんの報告を聞きに来たんだけどなあと最初は思っていたんだけど、でもその内、別に二人のことを詳しく聞かなくても、いいや、と思った。  だってなんか。  目の前の二人、ほわほわしてて、幸せそうに見える。  カナは、四ノ宮さんにからかわれたりしてたまにムクれたりしつつも、でもずっと楽しそうだし。四ノ宮さんの方は、カナのことが可愛くてしょーがないって顔、してるし。  きっとオレの前だから多分、少しは遠慮してるとは思うんだけど、きっと、それでこれ、だもんな。  なんかもう安心したし、二人の邪魔してる気にもなってきた。 「――――オレ、そろそろ帰ろうかなと思うんだけど」 「え、もう帰っちゃうの?」  カナがちょっと首を傾げて見つめてくる。  ちょっと心配そうなのは、オレが四ノ宮さんのこと、どう思ったか気になるからかなあ。でもオレ、もともと推しって言ってたしな。  「この後用事があるからさ。――――また泊りに行くね。そん時、四ノ宮さんも隣にいるんでしょ?」  頷く四ノ宮さんと、なんかほっとしてるカナ。 「空いてる日、教えて」 「あ、うん。分かった」  カナは、ふ、と微笑んで頷く。 「奏斗んとこ泊まるなら、食事はオレんとこ来なよ。ごちそうする」 「え。四ノ宮さんが作ってくれるんですか?」  意外。料理とかするんだ。  なんかすげー金持ちそうなこと言ってたし、なんか、家の手伝いとかしたことないですって言いそうな顔してるのに。と、思ったら、横でカナがぱっと嬉しそうな顔を見せた。 「料理ほんとにすごく美味しいんだよ。意外だよね?」  クスクス笑いながらそう言ってくる。  ……ん。なるほど、分かった。  なんか、すでに胃袋ってやつも掴まれまくっているらしいことも理解。  なるほどなー……。  なんか可笑しくなってきて、ふ、と笑いが漏れたら。 「意外って思ってる?」  四ノ宮さんが勘違いして、苦笑しながら聞いてきた。 「あ、いえ。そんなことはないです。楽しみにしてますね」 「何が食べたいか、奏斗に言っといてくれたら用意するよ」  そう言われて頷いてから、ふと思いついた。 「あ、四ノ宮さん」 「ん?」 「連絡先、聞いても良いですか? なんかの時のために」  オレがそう言うと、四ノ宮さんは、もちろん、と笑う。  オレ、四ノ宮さんの昔とかはよく知らないけど。  ――――きっとこの人も、すげーニコニコしちゃってるんだろうな。  なんて思いながら、オレが四ノ宮さんと連絡先を交換してるのを、何だか嬉しそうな顔で見ていた。  とりあえず一回スタンプ送っとくね、と言って四ノ宮さんがオレとやりとりしてる間に、カナがきょろ、と店内を見ましてから、立ち上がった。 「ごめん。ちょっとトイレ行ってくるね」  カナの姿が見えなくなったところで、四ノ宮さんがクスッと笑った。 「奏斗が居ないうちに、何かオレに聞きたいことある?」 「聞きたいこと……」 「スマホで送ってくれてもいいけど」 「んー……」  ……何だろ。カナじゃなくて、四ノ宮さんに聞きたいこと、か。 「あ……じゃあ。聞いてもいいですか?」 「どうぞ」 「カナの、どこが好きですか?」 「――――は。なんか。ドストレートにくるね」  はは、と可笑しそうに笑いながら、オレを見つめてくる。  ――――オレは男にはまったく興味はない。全然。これっぽっちも無い。  そんなオレでも、なんだか見つめてしまう。すげー顔の整った、モテそうな人。  絶対女にも、モテるだろうし。  もとはゲイじゃないって、カナが言ってたもんな。  カナのどこを好きになってくれたのかな。  まあ、今の時点でかなり好きそうなのは分かるから、別に疑ってる訳じゃないけど。  やっぱ、聞いていいなら、それだ。  

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