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番外編【全部って】真斗side 4

「んー。どこが好き、かぁ」  四ノ宮さんは、顎に触れながら、少しだけ考える素振り。  一つ一つの動作決まってるっていうか。カッコイイな、この人。  ふとカズくんを思い出す。カナって、こういう系の顔が好きなのかなあ~なんて、ぼんやり観察していると。 「全部」  ふ、と笑いながら、オレをまっすぐ見て、四ノ宮さんはそう言った。  ……あ。 「全部、ですか?」  全部、か。  ……どこがって聞いて、全部好きっていう人、居るんだ。  と、ちょっと驚いて、顔を見てると。 「挙げるとすれば……」 「あ、はい」 「ルックス全部気に入ってるし、お人好しなとこも、一生懸命なとこも、声とかも全部好きだよ」  おお。……カナの見た目が好きな訳か。人がいいとこも、頑張るとこも、まあカナを知る皆が、そう言うだろうな。  ――――まあ、カナは、モテたもんな。  小学校、上の学年のカナ、たまに会ったけど、なんかキラキラしてた。  笑顔がキラキラしてるというか。友達が周りにいっぱい居て、ガキだったオレも、カナが皆に好かれてんのは分かった。  カナがお兄ちゃんでいいなあなんて、何度言われたか分かんねーし。  中学とか、家にも結構女子がおしかけてきたから、モテてんのも知ってたけど、彼女出来たとかは聞いてなくて。別に聞かなかったし、言ってないだけで居るのかと思ってた。  そしたら、ある時、親父が家の中で、カナをすごい怒鳴ってて。  ……カナがゲイで男と付き合ってたこと。その会話で、カズくんが相手だったことも知った。家の中の雰囲気も、カナが無理してる感じも、結構辛かった。キラキラしてたカナから、それが消えたように見えた。  それでもなんとか立ち直って、受験は何とかクリアして、かと思ったら一人暮らし。オレはカナには反対したけど、親父と会わない方がいいのかなとも思ったのもあって、最終的にはしょうがないかと思った。  カナは、良い兄だった。優しいし、頼りになるし。「良い奴」だった。  なのに、ゲイってだけで、親父が否定して、カナは、それをしょうがないって思ってて――――……。  それがたまらなく嫌だった。  カナは、もう恋人は作らないって言ってた。  女の子は好きになれないし、男も、もう無理って。  カズくんは、引っ越す時にカナを振っていったみたいだったから……良く分からないけど、離れるのをいいことにカナを捨てたんだと。  そこらへんの詳しいことは、カナは言わなかったし、オレも聞いてないけど、カナの様子だと、きっとそうなんだろうなって、思った。  なのに、久しぶりに地元で会ったカズくんは、カナに会いたいと言った。電話したら、カナはすごく狼狽えてて、伝えなきゃよかったかなと思ってた。早まったこととかしないか心配になった。  そこらへんで、四ノ宮さんが現れた、ような気がする。  ……ふーん。意外と普通、かな。好きなところ。  そう思った時。  四ノ宮さんが、ぷっと吹き出して、クスクス笑ってオレを見る。 「あのさ。弟の前だけど、すげー正直なとこ、言ってもいい?」 「え? あ、はい。……なんでも、どうぞ」  オレが頷くと、四ノ宮さんはトイレの方を見て、まだカナが戻ってこないのを確認してから、オレを見つめた。

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