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番外編【全部って】真斗side 5
四ノ宮さんは、ちょっとだけ前に出る感じで座りなおした。
「奏斗はさ。……んー、顔はすっげー可愛いけど、中身結構頑固だし。お人よし過ぎてかなりちょろいし、流されやすくて心配だし。あと、結構ネガティブだったり、思い込みも強いとこあるし。ただ、可愛いっていうだけじゃないんだよね。なんか、奏斗をアイドルみたいにキラキラして可愛いって思ってる奴らに、そういうとこばっかじゃないよって言ってやりたいくらいだけど……」
「――――……」
おお。……すげー流暢に、悪口??
ただただ聞いてたオレの前で、四ノ宮さんは。
言ってることとは真逆みたいな、この上なく優しい顔で、ふっと笑った。
「でも、そういうとこも含めて全部、誰より可愛くて、愛しいなって思ってる。奏斗が楽しそうに笑ってくれるだけで、もう、なんでもしてあげたくなる。絶対泣かせたくないし、笑わせてたいし、幸せにしてあげたい」
「――――……」
「って、かなり本気で思ってるから、安心して?」
まっすぐな瞳で、オレを見て、にこ、と笑う。
悪口かと思ったら。
……これ以上ない位の、のろけ、てことか。
皆が知ってるイイとこばっかじゃないほうのカナのことが、愛しいって言うんだ、この人。
「オレさ、結構病んでたのも自覚してるんだけど……」
「え。そうなんですか?」
「昔からあだ名が王子だったんだけど、もうそのイメージに合わせてればいいやって思って、あんまり本音言わずに生きてきたんだよ。色々めんどくさくて。本音なんだか建前なんだか、自分でもよく分かんないような感じになっててさ」
「そう、なんですか」
急な告白に、苦笑してると。
「まだ全然絡んでもない頃、ゼミで一緒ってだけの、奏斗がさ。オレのことをうさんくさい~みたいに言ってるのをたまたま聞いちゃってさ。初めてそんなふうに言われて、オレはそこから奏斗が気になって……が始まりかな。まあそこからどうしてこうなったかは、奏斗に聞いて? 弟にどこまで言うかは奏斗に任せるから」
「ただいまー」
ちょうど言い終わったところで、カナが帰ってきた。見えてたから、ちょうどで言い切ったって感じかな。
「……分かりました」
オレが、なんだかもう、急にたくさん入ってきた言葉たちに、思わず苦笑してしまいながら頷くと、カナが、ん?と微笑む。
「……ねー、カナ」
「ん?」
「カナは、四ノ宮さんのどこが好きなの?」
えっ、とびっくりした顔でまたオレを見る。
「……え、っと」
ちょっと困ってるけど、聞いてみたい。
今の話だと、カナは四ノ宮さんのこと、うさんくさいとか言ってた訳だもんね。……何でだ??
うろたえつつ、横の四ノ宮さんを見つめるカナ。
……うん、まあ。その視線とか照れ方で、大好きなんだろうなってのは、分かる。
――――カナは、ずっと「いい奴」だった。優しくて、かっこいい兄貴、そのまま。
ゲイってことを、マイナスだと思ってた節があるから、その分いい奴でいたのかな。……まあもともといい奴ではあると思うけど、バレないように、周りに気を使ってたとも思うし。それで、四ノ宮さんのことも気付いた、とか? でもそれだと、好きになるのって、なんでなんだろ。
そもそも、カナは、頑なに、もう恋なんかしないって言ってたのに。
よく考えたら、そこを飛び越えたのって、四ノ宮さんどうやったんだろう。
付き合った経緯とかはどうでもいいけど、カナの、もう付き合わない、ていうのを崩したっていうのは、気になる。
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