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番外編【当たり前に】奏斗side 3

「奏斗、飲み物、何がいい?」 「アイスオレ」 「OK」  レジに近づいて、ポンポンと注文してく四ノ宮。  「奏斗チケット持って」と言ってチケットを渡される。自分は食べ物が乗ったトレイを持って、歩き出した。  入口の人に二人分のチケットを見せてから、スクリーンが並んでる中に入ると、そこはもう、少し暗い空間。 「奏斗と、初映画デートか。覚えとこ」 「……覚えといてどうするの?」 「んー、わかんないけど。祝おっか?」 「嘘だよね?」  悪戯っぽく笑う、嬉しそうな四ノ宮に、クスクス笑ってしまいながら、見たい映画の部屋に入る。  二人で左奥の座席に座って、ドリンクホルダーに飲み物やポップコーンをセット。まだ少し時間があるので流れている、色んなコマーシャルを眺める。 「あ。これも、続編出てるんだよねー……これは前のでラストで良かったって……四ノ宮とそんな話もしたよね?」 「したした。コンビニでチラシみて、話したよね。どうなんだろうね、見てみないと分かんないけど。奏斗、見たい? 今度これ見る?」 「うん。いいよ。オレ、映画見るの好き」 「オレも。結構一人で、思い立つと行ってたな」 「一人の方が浸れる?」 「いや。合わせるのとかめんどくて。一人で好きな時間にふらーと行くのが楽だったから。でも奏斗とは一緒に出てくればいいし」 「うん」 「これからいっぱい、映画見ようね」 「ん」 「あ、あと、今度、遊園地も行こうね」 「ん? 何で?」 「観覧車乗りたいじゃん?」 「観覧車、好きになった?」  ふふ、と笑うと、四ノ宮は、まあ好きだけどそうじゃなくて、と微笑む。 「キスするから。一番上で」  こそこそ、とそう囁かれて。ああ、ジンクス、か。と思ったら、笑ってしまった。 「信じるの?」 「信じる者は救われると思うから」 「そっか」  ふふ、と笑い合う。  暗い映画館で、左の一番後ろの三人掛け席。周りが結構空いてるので、隣に来る人はいないだろうなと。  なんか、二人きり、みたいで、ちょっとドキドキする。  ……四ノ宮にドキドキするとか、まだ不思議。  付き合ってから、時間が経てばたつほどに、好きだって思う。そう思うと今まで平気だったことにも、ドキドキする。  こんな感覚は、ほんとに久しぶりで、毎日、ふわふわしてる。 「あ。スマホ、電源おとしとこ」     そう言って、スマホを出した四ノ宮。あ、オレもと思いながらスマホを出したところで、四ノ宮がクスクス笑いながら、オレにスマホを向けてくる。 「何で笑ってんの?」  言いながら覗き込んだそこは、さっき四ノ宮が交換してた、真斗とのトーク画面。 「やっぱり、四ノ宮さん推しにしといて、よかったです」  そんなメッセージが、真斗から届いていた。  四ノ宮、なんだか嬉しそう。  言ってたなぁ、四ノ宮さん推し。  ふ、と笑ってしまった。

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