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番外編【当たり前に】奏斗side 5

 ――へんなこと考えてないで、集中しよっと。  ちょうどその時、広告が終わって、映画本編が始まる時間になった。照明が落ちて、暗くなる。  いざ始まるとなったら楽しみすぎてドキドキしながら画面を見つめていると。四ノ宮がこそっと動いて、オレと手を繋いできた。 「――――」  ぱっと四ノ宮の方を見ると、四ノ宮はクスッと笑って、オレに近づいてくる。 「手だけ、繋がせて」  その言葉に、もう否定しようもないほどに、ほわっとあったまる心の中。  触ってくれないとか。思ってたのかな、オレ。 「うん」  小さく返事をすると、四ノ宮は意外そうな顔をして、オレを見つめた。 「あれ、良いの?」 「……四ノ宮はもっと変なことするからここなのかと思ったから……手くらいなら」  そう言うと、ぷは、と四ノ宮は笑って、繋いでいる親指を動かして、オレの手をすりすりと撫でてくる。 「こんなとこで変なことして、可愛くなってる奏斗を見られたくないから、しないよ」  ……また恥ずかしいこと言ってるし。もー。そう思って見上げると、きゅ、と手を握り締められる。   「絶対見せない。オレのだから」  こそこそと囁かれて、耳元でクスッと笑われると。くすぐったくて、ちょっと震えてしまう。ぞくっとして、なんかやばい。  うう。もう無理。  てか四ノ宮の方がむしろ、おてて繋いで我慢する、みたいな可愛い感じなのに、何でオレの思考がそっち行っちゃうんだ。うう。 「――なんか今、めちゃくちゃ可愛い顔、してンね?」  四ノ宮がこそこそとオレに囁く。バレてるのかな、変なこと考えてるの。恥ずかしくなりながら。 「……っもう、映画見よ」   そう言うと四ノ宮は、にっこり笑いながら、はいはい、と頷いた。  見る前はそんなことを考えていたけど、映画はちゃんと集中して見た。  繋いでる手がなんだか嬉しくて、少しは気が逸れてたけど。  ただ、やっぱり毎回必ず組み込まれてる感動シーンには、またまたあっという間に引き込まれてしまう。  泣きそうになってハンカチを持つために四ノ宮の手を離したら、四ノ宮はオレを見て、それから、ああ、と悟ったらしく、今度は、手じゃなくてオレの脚に、ぽんぽん、と手を置いてきた。  あやすみたいにぽんぽんしてくれてるらしい。まあ……それ位で、泣くのが引っ込む訳もなく。    一通り泣いて、落ち着いて、感動のエンディング。  エンドロールをぼーっと見てる。エンドロールが始まると帰ってく人もいるんだけど、オレは最後まで見たい……。人が立ちあがるからか、四ノ宮の手が脚から離れた。 「――……」  ぼー、と最後まで見てたら、上の照明がふわ、と明るくなった。 「……すっげー泣いてたね」  四ノ宮がクスクス笑って、オレを見る。 「これでも我慢したんだけど」 「そっか。まあ確かに、部屋で見てた時よりは静かだった」 「……オレそんなにうるさく泣いてた?」 「冗談だよ」  ふ、と可笑しそうに笑って、四ノ宮がポップコーンと飲み物のごみを手に取った。 「行ける?」 「うん。ありがと」 「ん」  そういうのをさらっと、スマートに持ってくれちゃうところは、見習いたいなと思うレベルだなあと思いつつ、立ち上がろうした瞬間。少しかがんだ四ノ宮が近づいてきて。  ちゅ、とキスされた。  ぽかん、として四ノ宮を見ていると。 「誰も居ないから」  嬉しそうに微笑んで、オレを振り返りながら歩き出す。オレも立ち上がって隣に並びながら。 「しないって言ったじゃん」 「見られないし。いいじゃん、一瞬触れるくらい」  悪びれずに、「ほんとはもっとたくさんしたいんだからさ」とか言ってくる。  むむむむ。  ……可愛いをアピールしてくる術を、なんか四ノ宮は覚えた気がする。  なんか最近、怒れない。 (2024/1/31) ◇ ◇ ◇ ◇ なんかおまけが長くなっちゃってすみません これもう真斗サイドじゃないからタイトルかえるかも…。 あれれなんでこんなにエンドレス…もすこしおつきあいください( ´∀` )

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