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番外編【当たり前に】奏斗side 7
「奏斗、ああいうの欲しい?」
「ん?」
四ノ宮が指さしたのは、部屋に飾る用の、アクリルスタンド。
「うーん……見てると欲しいなーと思うんだけど、全部飾る訳にはいかないし。捨てる気にもならないからたまってっちゃうから、あんまり買わないようにしてる」
「なるほど。そっか。なんか欲しいもの、他にありそう?」
「んー」
少し歩いていって色々見てる四ノ宮。オレも自分の見たい所をうろうろして、パンフだけでいいかなあ、なんて思いながら、四ノ宮を振り返ると。
「これは?」
と指さしたのは、映画の世界観ばっちりな、ジグソーパズル。
「これなら、玄関とかの廊下の壁に飾って、そのままにしてもいい気がしない?」
「する。いいかも。カッコイイし。買う買う」
「ジグソーパズル好き?」
「うん、結構好き。中学位まではやってた」
「そっか。じゃあ買お。オレも一緒にやる」
「うん」
パズルの入った箱を手に、「飾る額みたいなのは、ネットで買お」と言われて頷く。
「オレんちに飾るんでいい?」
「え、いいの?」
「奏斗、オレんちに居ることが多いじゃん。ベッドもデカいし。料理もうちのが色々グッズあるし。二号も居るし」
「まあ、そう、だね」
「ていうか、早く一緒に住もうね」
「――――……」
不意のお誘いに、オレは四ノ宮を見上げた。
「急にこんなとこで、そんなこと言われても」
「急に思ったんだもん。ていうか、ずっと思ってたけど、なんかいつ言おうかなーって」
「……」
「このパズル、一緒に飾って、一緒に住もうよ」
「――――パズルのために?」
「……違うけど」
分かってるでしょ、と四ノ宮が笑う。分かってるけど、と答えてから、ちょっと考える。
「……んと。考えとくね」
「うん」
四ノ宮はの視線は、やたら優しい。
まあ、今だって、夏休みだからっていうのもあるけど、ほとんどずっと一緒に居る。四ノ宮の言うとおり、ほとんど四ノ宮の家で過ごすことが多くて、オレの部屋、もったいないなーと思う気もする。
覚悟を決めて、一緒に居るってしたんだから、今更、一緒に住むのが嫌とか、そういうんじゃない。でも、何というか。自分の部屋を引き払って人の家に住むっていうのは、やっぱり、父さん母さんにも説明するだろうし。父さん、やっと一歩進んでくれたとはいえ。……オレ、あの時、これから頑張っていきたいとか言ったのに、もうすでに恋人出来て、一緒に住みます、とか言っていいのかっていう……。
あと、四ノ宮の家も。旅行中に振られたって散々言ってたらしくて、電話では、うまくいったって伝えたらしいけど、なんかそんな伝えたばかりなのに、一緒に住みます、って伝えるのもどうかなっていう……。
一緒に住むのをちょっと迷うのは、オレ達自身のことよりも、家族のことな気がする。これに関しては、男同士ってことより、男女だって、こんな早く一緒に住んだりしないよなーて思うから。
うーん。
ほぼずっと一緒にいるけど。
引っ越すっていうのは、ハードル高いかも。
そのまま夕飯も食べて、マンションまでの帰り道。
「奏斗」
「ん?」
「一緒に住むっていうのさ」
「うん」
「家族に話してみよっか」
「――――……」
「反対されたらされたで。またそっから考えるから。別れる気なんかないから、どう攻略するか考えるだけだし」
オレは、オレを見つめて笑う四ノ宮をただじっと、見つめる。
「まあ多分強敵は、奏斗のお父さんと、潤かなって気がするけど」
苦笑しながら言う四ノ宮に、ふ、と顔が綻んだ。
「どんな反応されるか、見に行ってみようよ。案外、オッケイくれるかもよ?」
「……っはは。もう、お前って……」
なんか、笑いがこみあげてきてしまう。
「なんか。そういうとこ」
なんか愛しくて、まっすぐな瞳を、じっと見つめる。
「すげー、好き」
「――――……」
「オレには言えないもん、どんな反応されるかとか。お前と居ると、すごく楽……?」
歩きながら、なんだか本当に好きだなーと思って続けていたら、くい、と腕を引かれた。ん? と振り仰ぐと。
ふ、と重なる唇。
すぐ離れたその、まっすぐな瞳をただ見つめる。
「オレはその百倍くらい好き」
鮮やかな笑顔に、外なんですけど、という文句も引っ込んで、かあっと赤くなる。
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