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番外編【当たり前に】奏斗side 8
少しして落ち着いてから、外はダメだよ、と四ノ宮を見上げると。
「ちゃんと見てからしたよ」と言う四ノ宮。
「でもどこから見えてるか分かんないし。外ですんのは無し」
そう言うと、四ノ宮はクスクス笑って考えてから、少し首を傾げた。
「無理だよ。可愛いんだもん」
「無理とかじゃなくて」
「そもそもオレは別に、誰にバレても困んないし」
そんな言葉に、オレは四ノ宮を見上げる。
「困るでしょ、色々」
「何が困んの? それが原因で引いてく奴は最初からいらないかなぁ。なんも困んない気がする」
「――――……」
四ノ宮の言う言葉は、かなり極論な気がするんだけど。
「いつかもうオープンに、しようね」
ふ、と笑う四ノ宮。
……ちょっとまだそこまでは頷けないけど。
なんかいつか四ノ宮のこの感じに押されて、そうなるかもしれないとか。
それが怖いような。怖くないような。なんかよく分かんない気持ち。
オープンにするかもなんて、今までの人生で考えたことすらなかったのに。
……絶対知られたくないと思ってた。誰にも。
でもなんか、今は……少し前と、大分違う。
四ノ宮が居てくれるっていうのは大きいかもしれないけど。
もし、四ノ宮が居なくなっても、オレはオレ自身のそれを、別に恥じなくてもいいのかなって。拒否られるかもしれないけど受け入れてくれる誰かは居るって、なんか少しだけ、思えるようになってる。……かも。
「奏斗、悩んじゃった?」
「ん。悩んでないよ」
「そっちは追々考えるとしてさ、とりあえず他人のことより先に……家族に会いに行こうね」
「でも、そっちも急がなくていいよ。今みたいに一緒に居られればいいし」
「うんまあ。そうなんだけど」
四ノ宮はオレを見つめて、んー、と考えてから。
「でもやっぱり、一緒に住みたいな」
「でも、もうちょっと今のままで様子見た方がいいかもだしさ」
「何で?」
「しばらく居たら、やっぱり違ったってなるかもしんないし」
どうかわかんないじゃん? と言ってみると。
四ノ宮は、予想通り、む、と目を据わらせる。
「それって、違ったってどっちがなると思ってるの? 奏斗がなる?」
「オレじゃなくて、四ノ宮が、かな」
「――――それなら、無いから大丈夫」
途端に上機嫌になったので、あれ? と見上げると。
「奏斗はなんないんだなーと思ったら嬉しい」
楽しそうに笑う四ノ宮。
……なる訳ないと思うし。
毎日毎日。好きだなって、オレ、思ってるし。
四ノ宮を否定しようとしてた時も惹かれてた位だから。そうそう嫌いになったりできる気がしない。
そう思っていると、四ノ宮がクスクス笑いながらオレを見つめた。
「いまさら、奏斗にちょっとやなとこがあったからって、嫌いになんかならないよ」
「――――……」
「てか、嫌って思わないし、奏斗がしてると、全部可愛い」
「……病気?」
苦笑しながら言ったオレに、んー? と少し笑ってから。
「そかもね。恋は病っつーでしょ」
「――――」
何言ってんだろと思うけど。
でも、四ノ宮のことを考えると。
……ちょっと分かる気もしてしまうから。オレも病気かもしんない。
(2024/2/7)
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