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番外編【夏祭り】7 *奏斗
「オレも……」
「ん?」
笑みを綺麗に形作る口元を見上げながら。
自然と、オレも、と言ってしまったことに気づいて、あ、と止まる。
「オレも、何?」
「……ん。四ノ宮と、同じこと思った」
「ん? あ。写真? 嫌だよね、ずっと飾られるとか」
ふ、と笑う四ノ宮に、そうじゃなくて、と、じっと見つめる。
「四ノ宮のこと、あんまり見られたくないの、同じ」
「――――……」
ちょっと恥ずかしいけど。
……思うことは、四ノ宮には隠さないようにって。思ってるから。
そう言ったら。四ノ宮が、オレの肩を掴んで、引き寄せた。
「うわ」
近くに引き寄せられて、焦る。
急に、浴衣の四ノ宮に近づいてしまったのと。超目立ってるのに、こんなに引き寄せられて、周りに見られるっていうのと。色んな意味で焦ってるオレに、四ノ宮は、クスクス笑った。
「別に男同士で、肩くらい組むし。誰も気にしないでしょ」
「――――……」
そりゃ友達同士なら気にしない。小太郎とかに肩を組まれたって、別にどうでもいいけど。ちゃんと恋人同士だと思ってるから。特別だと思ってるからこそ、余計、焦るんだけど。
「なんかもう、奏斗、可愛すぎて、困るね」
肩に触れていた手が、ぽふぽふ、と頭を撫でて、優しくそんな風にささやかれる。めっちゃ密着しながら歩いてると。浴衣の、あわせめ。首元とか。なんか、すごくやらし――――……。
顔、熱くなってきた気がする。
だって、オレ、何考えてんの……。はー、やだ、ほんとマジでやば。
「――――……」
四ノ宮は、俯いてるオレを覗き込むと。
密着してたオレから少しだけ距離を取って、肩を、ぽんぽんと叩いてから、その手を外した。そのまま、こそ、と耳元に手を置いて。
「もう、いますぐ、ホテル行きたいね」
と囁いた。
せっかく浴衣着て、潤くんたちともうすぐ会うっていう時だし、本気で行くつもりで言ってる訳じゃないのは分かってる。でも。
「……そだね」
なんかちょっと。……同じような気分なのかなあ、て思うと。ちょっと嬉しくなってしまって頷いてしまった。すると、四ノ宮、なんだか驚いたみたいにオレをマジマジとみつめて、それから、ちょっと視線を逸らした。
ダメだ。浴衣着てる四ノ宮に、「何言ってんだよ」とか言えないぞ。
どうなってんだろ、オレ。
「……あのさあ、奏斗ー」
「ん?」
「いつもみたいに、何言ってんの、とか、言わないのは何で?」
「――――……」
なんか、似合いすぎてて、すごいカッコいいから? とかは、ちょっと……さすがに恥ずくて言いにくいけど。
じっと、見つめ返してしまうと。
四ノ宮はちょっと眉を寄せて、
「……もうさ。反応が可愛すぎて、困るんだけど」
本当に困ったな、みたいに目を細められて、オレは、ぐ、と言葉につまる。
……抱き締められたいな、とか。浮かんでしまう自分に、オレだって困る。
駅前のロッカーに荷物を押し込んで、信玄袋に必要なもの詰め込んで、待ち合わせの場所に向かって歩き出す。
「こういうの持つと、余計気分あがるね」
楽しそうに笑う四ノ宮が、なんか眩しい。
…………オレ、浴衣フェチってやつなのかな?
浴衣着てる四ノ宮が、ヤバい……。
暑いのもあるけど、それだけじゃなくて、熱上がりそう。
四ノ宮と見つめ合うのに耐えられなくなって、ふ、と視線を前に向けた時。
もう結構多い人の中。少し離れた前方から駆けてくる、男の子。
「ユキくん!」
可愛い声が聞こえて、小さいのに、いっちょ前な、紺の浴衣の潤くん。
「潤くん!」
「ユキくんーわーい!」
思わず手をひろげると、ぴょーんと腕の中に飛び込んできた潤くん。
「久しぶりだね」
抱っこして、同じ目線で見つめ合う。
ちいさくて可愛いけど、ほんとイケメンくん。
二重のおめめは超パッチリで、長いまつ毛で黒目が大きく見えるから、見つめられると、吸い込まれそう。将来楽しみな感じ。すごい、可愛い。
「潤ー? オレも居るけどー?」
呆れたように言って、ぽふ、と潤くんの頭を撫でた四ノ宮に、潤くんは、ぷうう、と膨らんだ。
あれ? なんか怒ってる?? 四ノ宮と顔を見合わせながらも。
って、瑠美さんはどこだろうと、顔を上げた瞬間、何だかもう、やたら麗しい浴衣姿で、周りの視線を集めまくりながら歩いてくる人を発見。
淡い青と白の地の色に、綺麗な朝顔の模様。紺と水色と、真ん中は綺麗なピンク。葉もすごく綺麗。爽やかすぎるし。
ていうか、浴衣なのに、なんか体の線が……。超綺麗。
……多分まわりの人、モデルさんかなーとか、思ってるに違いない。
「うわー、また目立つ浴衣着て……黒とかにしてほしい」
四ノ宮がそんな風に言うけど。黒、着ても、絶対目立つと思う……。
ていうか、四ノ宮こそ、黒でも、めちゃくちゃ目立ってるけど。
(2024/7/25)
すみません。昨日一回のせて引っ込めてました💦
夏祭りの話、ちょっとで終える筈だったんですけど…
書きたいように書きます…(^^♡
読みたいなーて思って頂けたら ぽちぽちなにかしらリアクションしてやっていただけたら~(´∀`*)
ちょっとお疲れモードなのでコメントでも嬉しいです(´∀`*)ウフ
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