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番外編【夏祭り】9 *奏斗

 潤くんと瑠美さんと合流してしばらく。  だんだん人が多くなってくると、視線はそこまで飛んでこなくなってきた気がする。……よかった。  潤くんはあの後すっかりご機嫌になって、四ノ宮とも仲直り(?)をして、お祭りをめっちゃ楽しんでいる。  最初に綿あめを食べて、かき氷を食べて、スーパーボールを四ノ宮と競争して二人でめっちゃすくって、四ノ宮の分も貰って超ご機嫌、今はりんご飴をほこほこ食べている。少し屋台のある通路から離れて、大きな樹の下で休憩。 「今日潤の取るカロリーすごくなりそう。甘いものばかりよく食えるなー」  四ノ宮が、苦笑しながら言うので、「そうだね。でもお祭りは特別だし」と返していると、それを聞いた潤くんが、「じゃあ次、ポテト食べるーふりふりするポテト―!」とご機嫌で言う。あ、さっき通りがかった人達が、味をつけるためなのか、袋を振って食べてたな……ちゃんと見てたんだな、と笑ってしまう。 「ふふ。じゃあって言ってるけど……カロリーは一番すごいかも」  と、瑠美さんがクスクス笑う。  瑠美さんはさっきから、屋台でお酒を買ってきてて、軽ーく飲みながら歩いている。  オレ、女の人には本当に興味が持てないのだけど。浴衣で髪もアップにしてて色っぽいなとは感じるので、ちょっと酔ってくると、壮絶に色気がある気がする。妖艶……って言葉は、こういう人のためにあるのかな?? と、心の中で思ったりしている。 「ポテトはお塩だから!」  潤くんがそんな風に瑠美さんに言って、えっへん、と得意げ。なんかもう可愛すぎて、オレは、潤くんの前にしゃがんだ。ちょっと浴衣でしゃがむのってやりにくい。裾開かないようにと思いつつ。それでも、目の前で顔、見たい。 「なるほど。そっか、ポテト、甘くないもんね」  可愛くて、クスクス笑ってしまう。 「うん! ゆきくんにもポテトあげるねー」 「わーありがとうー」  ふふ、と笑いながら、可愛い潤くんの頭を撫でていると。 「ユキくん、これも欲しい?」  食べかけのりんご飴を差し出される。 「え。でも潤くんのだし。ありがとうね、食べていいよ~」 「うん」  可愛い。ありがとうって言ったから、他のもあげたくなってくれたのかなあ。ほんと可愛いなあ……。  立ち上がっても、オレの下に居る潤くんをいい子いい子しながら、食べるもの、ほんといっぱいあるなあと、屋台を見ていると、四ノ宮がオレを見て、にこ、と笑った。 「奏斗、昼ごはん、食べてないし、どーする?」 「んー焼きそばとか。お好み焼きとかかなあ? あ、トウモロコシも見たね。あ、じゃがバターもいいなあ、あっ焼き鳥も……」  屋台の方を見ながら、今見掛けてきた美味しそうなものを挙げていると、横で瑠美さんがクスクス笑った。 「可愛い、ユキくん」 「え」  可愛かった? 首を傾げていると、「まあ可愛いけど」と、四ノ宮が、ぷ、と笑う。 「いっぱい食べていーよ」  クスクス笑う四ノ宮。「奏斗が幸せそうに食べてるとオレも幸せだし」とか、平気で言う。瑠美さん、居るんだけど……と思いながら何て返事しようかと思っていると。 「潤も! ユキくんが食べてるの好きー!」 「え」  ちょっと助かった、と思いつつ、「ありがとー」と、潤くんをよしよししていると。 「四ノ宮の遺伝子は、ユキくんが大好きなのかしらね」  クスクス笑う瑠美さんに、ふ、と苦笑してると。 「私も、ユキくんが笑ってると幸せかも」  なんて、ふ、と瞳を細めて言ってくる。  ちょっと、破壊力がすごい。  返事をできないでいると、「つか、姉貴、もう飲むな。すげー妖しい」と、四ノ宮がツッコんでくる。 「なによ、妖しいって」  失礼な、とちょっとムッとしてる感じも。なんか酔ってるの、ちょっと可愛くもあるなぁ、瑠美さん。と、笑ってしまう。 「ごちそうさまでしたー」  たたーと走っていって、りんご飴の木串をゴミ箱に捨てた潤くんは戻ってくると、オレの手を取った。 「ユキくん、いこー」 「あ、はいはい」  頷きながら、後ろの四ノ宮と瑠美さんを振り返ると、二人も笑いながら歩き出す。  繋いだ手がちっちゃくて、可愛い。  でもちっちゃいけど、ほんとおめめがぱっちりしてて、口も可愛いし、ぱっと目を引く顔をしてる。  ……やっぱり、すっごく四ノ宮に似てるんだよなぁ。潤くんはまだまぁるくて、とっても可愛いのだけど。パーツが、似てる。  なんか、四ノ宮のちっちゃい頃と、居るみたいで。  こんな顔で笑ってたのかなあ、とか思うと。  潤くんもめちゃくちゃかわゆいし、  似てるっていう意味でも、なんだかすごく、きゅん、てしてしまう。  んー。楽しい。

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