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番外編【夏祭り】14 *奏斗

 潤くんと楽しそうな四ノ宮を遠くに見つめながら、オレは、微笑んでしまう。 「――オレじゃなくても、四ノ宮のことを好きになる人は……外見だけじゃなくて、ちゃんと中身を好きになる人もいっぱい居ると思います」 「そうかなあ?」  不思議そうな顔で、オレを見る瑠美さん。  ……多分本当に疑問に思ってるんだろうなと分かって、可笑しくなってきた。 「えと……瑠美さんて、四ノ宮のこと、どう思ってるんですか??」  気になって、ちょっと聞いてみると。そうねぇ、と口元に触れてから、クスクス笑った。 「……まあ、弟ながら、スペックは高いのよね。でも、その分、色々あったせいでひねくれてるし、めんどくさいとこ、たくさんあるし。鉄壁の笑顔とイイ人の振りも、崩せる人が居るとは思ってなかったの、私」 「……鉄壁……」  なんかオレもそんなようなこと思ってはいたけど。  クスクス笑ってしまう。 「だから、早く好きな人できるといいなとは思ってたけど……大翔の外見を好きにならず、大翔の分かりにくい内面を好きになってくれて、それで大翔も好きになれる人。とか言ったら、ハードル高いなあって」 「――――…んー……」  そうですねぇ……とちょっと首を傾げつつ。何と言ったらいいか迷っていると。 「ねえ、逆にさ。ユキくんは大翔のこと、今どう思ってるの? どんな人だと見てるの?」  心底不思議そうにオレを見上げる瑠美さんに苦笑してしまう。 「えーと。そう、ですね……えっと……正直に言っていいですか?」 「いいよいいよ、どんどん言って?」  なんだかちょっと、わくわくして見える。 「えっと……ルックスはもうダントツかなって。あと……頭いいし、しっかりしてるし、料理もおいしいし……色々詳しくて、話してるとすごいなーと思うこともあるし……」  瑠美さんは何も言わず、ちょっと瞳を大きくして、うんうん、と頷いた。「あるし?」と先を促す瑠美さんに、んー、と考えてから。 「ずっとほんとに優しいし。……その、いい人の振りっていうのも、ずっと出来るのってすごかったんじゃないのかなあって……確かに、ちょっと前までは、四ノ宮、自分のことを、なんかあんまり好きじゃなかったっぽいところはあったけど……なんか、今はもう、そんなとこも、全然なくて……」 「――――……」 「……だからオレ――今、嫌いなとこ、浮かばないかも」  遠くの四ノ宮を、見つめながら、なんとなくそこまで言ったところでふと。  ……なんかちょっと言い過ぎた?? はっと気づいて、軽く握った手を口に押し当てた時。   「やだ、ユキくん」  瑠美さんは、めちゃくちゃ楽しそうに笑って、口元を抑えた。 「私が言った後からの流れで、正直に言うとか前置きするから、大翔の変なとこを言われると思った。好きなとこ並べてくると思わなかった」  その言葉を少し考えて。ちょっと言葉に詰まる。  うー。  なんかめちゃくちゃ恥ずかしいかも……!  顔が熱くなってきた。とその時。 「ユキくん!!」  潤くんが、オレに向かって走り寄ってくる。わーい、と抱き着いてくるのを受け止める。 「ユキくん、見てみて、これ!」 「ん。わぁ、可愛い。ひよこかな??」  潤くんの手にちょっとあまるくらいの、可愛いヒヨコのぬいぐるみ。 「これ取れたの?」 「うん! あれも!」  あとから来た四ノ宮が抱えてるのは、結構でっかい、うさぎに似た、可愛いぬいぐるみ。どこかで見たことあるような? 「あら。潤の好きなアニメのキャラじゃない」 「そー、ヒロくんがとってくれた!」 「燃えたな?」  潤くんと笑い合ってる四ノ宮に、クスクス笑ってしまう。頑張ったんだなきっと。……良かった今のタイミングで来てくれたから、顔の熱も、少し引いた。 「それでね、こっちのひよこちゃんね」 「うん?」  見上げてくるので、腰を落として、目の前にしゃがむと。 「これは、ユキくんに似てたから、取ったの。ヒロくんと、一緒に撃ったんだよ!」 「それは潤が撃った」  四ノ宮はそう言ってクシャクシャと、潤くんの頭を撫でている。 「奏斗に似てるって言うから。まあ、似てるよね」 「……そう??」  潤くんに「これはあげる!」と手渡されて、ひよこと見つめ合ってしまう。  めっちゃ可愛い、ひよこなのだけど……。似てるかな? 「似てる似てるー」  ふふ、と瑠美さんも言って、潤くんの頭を撫でてあげてる。 「上手にとれたねー」 「うんっ!」  めちゃくちゃ嬉しそうで、可愛すぎるので、「ありがとう」と笑顔で返して、自分の頬の横にヒヨコを並べて、「にてる?」と潤くんに笑いかけると。 「ママ、写真撮って!!」 「ん? ユキくんと?」 「ちがうの! ユキくんとひよこちゃんの!」 「ああ……」  大騒ぎの潤くんに瑠美さんが笑いながら、スマホを出している時。  オレの隣にしゃがんだ四ノ宮が、「可愛すぎだから、そんなサービスしなくていいからね?」と苦笑いで、オレを見る。  ……ちょっと意味が分からない。  

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