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番外編【夏祭り】13 *奏斗

 射的のすぐ近くは混雑してて邪魔になりそうで、四ノ宮と潤くんの順番が来たところで少し離れた。射的は一番角のところに店があったので、神社の端の方に瑠美さんと移動。  四ノ宮と潤くんが射的をしてる姿は、なんというか……すごくいい気がする。  まず潤くんがめちゃくちゃ可愛いし。それをサポートしてあげてる四ノ宮が、またカッコよすぎて目立つのだけど、今は、なんか子供みたいに楽しそうな笑顔で、さらにとっても真剣な顔してて、それもまたいい感じ。浴衣の女の子たちが、立ち止まってる。  ――それを、ちょっと離れて、瑠美さんと一緒に見守る。 「なんか、潤も大翔も、真剣すぎよね」 「そうですね。潤くん、キラキラしてますね」 「潤はいいけど、大翔までめちゃくちゃ必死……」 「ですね。潤くんは、すごく欲しいものがあるんですか?」  クスクス笑いながら、聞くと、瑠美さんはちょっと首を傾げる。 「何が欲しいってことは無かったんだけど。ただ打って当てたいだけなんだけどな。何かいいものあったのかしら?」 「何かを、指差してますもんね」 「落とせるといいけど」  楽しそうで、二人とも、可愛いなあと思っていると。瑠美さんがふとオレを見た。 「ユキくんはさ」 「はい?」 「大翔の外見って好き?」 「え」  急に聞かれて少し固まる。ふ、と笑ってしまいながら、「はい」と頷く。 「あ、でも、最初はうさんくさいって思ってたので……その時は外見が良すぎなのも微妙だったような……。だから、外見を好きになったわけじゃないですね」 「――――ふふ」  可笑しそうに笑って、「そういうのも、いいのかも」と瑠美さんはオレを見る。 「大翔、自分の外見を好んで近づいてくる人はあんまり好きじゃないの。面倒くさいよねえ。顔も自分の一部なんだから、そこから入ってもいいと思うんだけど、なんかあの子は違ったみたいで。正直、パーティーなんて、もう確実に見た目から入るじゃない? ある程度は着飾ってるし。そこはしょうがないと思うんだけど、カッコいいーって寄ってくる女の子たちは、鉄壁の笑顔で、拒否るの」  あはは、と瑠美さんは笑う。 「でも女の子たちは拒否られてることに気づかないんだけどね。私は、大翔の表情で分かるから、見てて、なんか可笑しくて」  クスクス笑いながら、「でもねー」と、続ける。 「人ってどうしたって見た目から入るし、それで話してみたいと思うとか、そういうのは普通のことなのに、この子は、どうやって人を好きになるんだろう? って私は思っててね」 「なんとなく分かります。おんなじようなこと、言ったことあるような……」 「ふふ。なんかもうね、仮面舞踏会みたいなの企画して、顔が見れない状態にするしかないのかしらって私は、思ってた。まあ大翔が企画に乗る訳ないけど」  クスクス可笑しそうに笑う瑠美さんに、あーなるほど……とこくこく頷くしかない。四ノ宮のお姉さん。……面白いな。 「前から、お父さんたちがお見合いもすすめてたけど、そんな、外見どころか、肩書とかから入るようなそんなもの、大翔が受ける訳ないのにって、ほんと思ってたわ~。二人はお見合いはいいものだって結構本気っぽいから言っても無駄だし、ほっといても大翔が受けるとは思わないから、何も言わないできたけど。――――……だからね、ユキくん」  四ノ宮と潤くんから視線を外して、オレを見つめて、とても綺麗に微笑んだ。 「大翔にとってユキくんて、ほんと貴重な存在なんだろうなーって、私、思ってるんだよね」 「――――……」  貴重。その言葉、嬉しいなあと思う一方で。 「……でも、それを言ったら、オレにとっての四ノ宮が、貴重なような……??」 「――どういう意味で?」 「んーと……オレ、さっきもちょっと言ったんですけど……迷惑いっぱいかけたんですよ。心配もかけたし。オレの、あんまり人に言えないようなとこを全部。四ノ宮は知ってる気がするんですけど」  そう言うと、瑠美さんは、ふふ、と楽しそうに笑う。 「……それでもいいって、言ってくれたので」  ほんと、どうしてなんだろうと、今更またちょっと不思議になりながら。 「そんなとこも全部知ってて、そんな風に言ってくれるような人、四ノ宮しかいないんじゃないかなって、思うので……貴重なのは、四ノ宮かなあって」 「……ふふ」  瑠美さんは、なんだかすごく楽しそうに、クスクス笑っている。 (2024/8/24) 前回の…… たまに来る私の心配症呟きに、 各サイト&メッセージで、温かいコメント、たくさんありがとうございました……(^^🩵

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