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番外編【夏祭り】18 *奏斗

「いっぱい遊んだから眠くなっちゃった?」  あくびで涙うるうるの潤くんが、めちゃくちゃかわゆい。  かき氷も途中で、潤くんが、四ノ宮に手を伸ばした。 「ヒロくん、だっこ」 「ん」  潤くんを、ぽん、と太腿にのせて、向かい合わせで抱っこする四ノ宮。なんか優しい仕草に、ちょっと……なんか、ときめく。うう。自分がこんな風に、四ノ宮のこと、思う日がくるとか……しかも、オレにしてることでもないのに、なんか、きゅ、と胸が。 「んー……」  四ノ宮の腕の中で、潤くんは手をぐーにして、むにむにと顔に触れて、それから、数秒もしないで、四ノ宮の胸にこてん、と寄りかかった。 「……? え、もしかして」  動かない潤くんに驚きながら、四ノ宮の顔を見ると。潤くんを覗き込んだ四ノ宮は、ふ、と優しく、苦笑した。 「寝た」 「嘘でしょ。可愛すぎるんだけど」  そう言ったオレに、瑠美さんは「限界まで遊んで、ぷちって充電切れちゃう子なのよね」と笑う。「花火は無理だな~これは」 「ちょっとこのまま寝て、起きたりはしないんですか?」 「うーん、この暑い中、めいっぱい遊んでたからね。花火まで一時間でしょ。起きれないと思う」 「そうなんですか……」 「でもめいっぱい遊んだから満足だと思うよ。花火はこないだ別のところで見たから、大丈夫だと思う。……でもユキくんと見れないから泣くかなぁ」  ふふ、と笑って瑠美さんはオレを見る。 「でもユキくんといっぱい遊べて良かったねって言ったら復活するかな。金魚もいるし」 「つか、オレはー?」  四ノ宮が呆れたように言いながら瑠美さんに突っ込んでいるけど、その手は、潤くんの背中をそっと撫でてあげていて、ひたすら優しい。  ――なんかいつも、ああやって、四ノ宮に甘やかされてるのは、オレも、な気がする。  …………ヤバい。なんか、好き、だな……。  いつもああやって抱き締められてるんだなあと思うとか。潤くんに自分を重ねるとか。――なんか、恥ずかし。 なんか、頬が熱くなってきて、手でちょっと顔を扇ぐ。 「暑い? あ、扇子貸してあげる」 「あ。ありがとうございます」  なんだかとてもおしゃれなセンスを瑠美さんに渡されて、パタパタ扇ぐ羽目になる。ふと、抱っこしあってる二人も暑いかなと気づいて、四ノ宮の隣に座り直した。潤くんと四ノ宮をパタパタ扇ぐと、「涼しい」と四ノ宮が笑う。「くっついてると暑いよね」と笑ってしまう。  瑠美さんが目の前で誰かに電話をかけて、すぐに切った。 「迎えに来てもらうわ。今日はここで帰るね」 「迎えのとこまで行く」 「いいの?」 「寝てるとかなり重い気がするから」と四ノ宮が笑うと、瑠美さんはオレを見て「ごめんね、デートの邪魔して」と苦笑する。 「いえいえ、全然」  首を振って「会えて嬉しかったです」とオレが言うと、四ノ宮は「ほんと。せっかくのデート、だったけど――」と苦笑してから。 「潤に、奏斗に会わせるって約束してたし。嬉しそうだったから良かった」  潤くんを見下ろしながら、とてもやさしい顔をする四ノ宮。  ――熱つ。  オレは何となくまた自分をパタパタ扇ぎ始めた。

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