537 / 542

番外編【夏祭り】19 *奏斗

 お迎えに来てくれる人は、運転手さんだそうで、お祭りの近くの道は通行止めになっているので、少し歩いた先の駐車場で待ち合わせた。  潤くんは四ノ宮の腕の中ですやすや眠ったまま。 「また遊ぼうねって、伝えてくださいね」  そう言うと瑠美さんはクスクス笑った。 「それ言うと、すぐ会いに行くって言いそう」 「それでもいいですけど」  ふふ、なんかそれも可愛いなあと思って笑ってしまう。  駐車場に着いた瑠美さんは、くる、とあたりを見渡して、「あれ?」と不思議そうな声を出した。  一台の車に近づいていく瑠美さん。その車のドアが開いて、誰かが出てきた。 「瑠美」 「あ、やっぱり。――ユキくんー!」  その人に名前を呼ばれた瑠美さんが、オレをくるっと振り返って、手招きしてくる。なんだろ、と思いながら瑠美さんに近づく。四ノ宮もすぐ後ろで、あ、と声を出した。 「ユキくん、紹介するね、私の主人。邦彦よ」 「噂のユキくんだね。初めまして」 「あ、初めまして」  にっこり笑う長身の男の人。  うわぁ。この人もまた、雰囲気ある。そう思ったら、瑠美さんが邦彦さんを見上げた。 「仕事だったんじゃないの?」 「花火には間に合いそうと思って家に帰ったら、潤が寝て、瑠美達を迎えに行くって聞いたから引き受けてきた」 「そっか、お疲れ様。今日は目いっぱい遊んでもらって、電池切れだったの」 「はは。そうみたいだね」  ふふ、と笑い合う二人。――仲良さそう。  邦彦さんが四ノ宮に近づいて、手を出して、潤くんを受け取る。 「大翔くん、ありがとう。ずっと抱いてて重かったよね」 「全然。大丈夫です」  邦彦さんが四ノ宮から潤くんを受け取って、抱っこしてから、四ノ宮とオレを見つめた。  瑠美さんのご主人。てことは、潤くんのパパ。瑠美さんが言ってたことが分かる気がする。四ノ宮にすっごく似てると思ってたけど、パパさんに似てるとこも確かにある。ていうか、どっちに似ても将来は背が高いイケメンだな。今は、邦彦さんの腕の中で、すやすや眠っている顔は、とてつもなく無邪気で可愛いけど。 「お祭り、一緒に遊んでくれてありがとう――とくにユキくん。潤がすごいなついてて、家でも名前が出てくるから、会いたかったんだよね」  クスクス笑う邦彦さんに、四ノ宮が苦笑しながら「めちゃくちゃ懐いてますよ――邦彦さん、奏斗はオレのなのでって言っといてくださいね」  冗談ぽい言い方だけど、わー四ノ宮、オレ、初対面なのに! と焦ったオレに気付いたみたいで、邦彦さんはクスクス笑ってオレに視線を向けた。 「もう聞いてるから分かってるよ。ていうか、おめでと」 「そもそも姉貴が黙ってる訳ないから、全部知ってると思うよ」  四ノ宮は苦笑しながら、オレを見つめる。 「そうそう。多分、全部聞いてる」  めちゃくちゃ整った顔の人なので、ともすればけっこう強くなりそうな視線を。すごくふわと緩めて、まっすぐに見つめてくる。  瑠美さんに会った時から、瑠美さんみたいな人の旦那さんってどんな人なんだろうと思ってた気がする。綺麗でゴージャスで頭も良さそうで機転もききそうで、優しくて。四ノ宮曰く強い、らしいけど。  今日も瑠美さんと過ごしながら、こんな人の隣に立つのはどんな人なら、似合うのかなあってぼんやりと。 「よかったね、大翔くん。再アタックして。――ユキくんは、大翔くんが死ぬほど大好きな人って瑠美に聞いてるよ」  悪戯っぽく言って、クスクス笑う邦彦さんは。  ――なんか、瑠美さんの旦那さんって感じがする。  

ともだちにシェアしよう!