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番外編【夏祭り】20 *奏斗

「にしても、潤が大翔くんと、ライバルみたいになるとかは面白いな。今までは、ヒロくんヒロくんて、大翔くんに夢中だったのに」  クスクス笑う邦彦さんに、瑠美さんもおかしそうに笑う。 「大翔のことも大好きなのよ。今日だって、結局くっつきまわって一緒に色々してたし。でもねー、ユキくんのことが、可愛いんですってー。おませな三歳児よね」  ふふ、と笑ってそう言った瑠美さんに、邦彦さんは笑う。 「なるほどね。でもまあ、潤が好きそうだなーとは思う。ユキくん。ていうか、瑠美も好きだろ」 「分かるー?? やだわー、息子と好みが一緒なんて」 「まあ、オレも分かるよ。ユキくん、可愛らしい」 「えーやだ。家族皆、好みが一緒なんて」  ふふ、と笑う瑠美さんと邦彦さん。四ノ宮は呆れたように二人を見て。 「奏斗はオレのなので」  そう言って、オレの肩を抱いて、引き寄せる。冗談で言ってる二人に、何ムキになってるんだろうと思いながらも。引き寄せられて背中に触れた四ノ宮の体に、どき、と胸が弾む。 「まあそのうちね。大翔のだってことは、潤に伝えることになるのかなぁ……どうする? 諦めないーとか言い出したら」 「どうしようねぇ」  ――瑠美さんと邦彦さんて。こんな感じなんだ。  ゴージャスな二人が、クスクス笑いながらずっと冗談を言ってるのが、面白い。楽しそうで、いいな。 「とにかく、今日は会えて良かったなぁ。ほんと、近々会いたいって思ってたから。今度、家に遊びにおいでね」  にっこり笑う邦彦さんと、その隣で頷いてい瑠美さん。二人と目を合わせて、オレは自然と微笑んで頷いた。 「ほんと今日はお祭りデートの邪魔しちゃってごめんね。その代わりと言ってはなんなんだけど……」  瑠美さんが少し離れて、四ノ宮をちょいちょい、と手招きしてる。  何? と首を傾げながら、四ノ宮が瑠美さんに近づいて、何かを二人で話してる。  必然的に、潤くんを抱っこしてる邦彦さんと、二人になると。 「こう言ったら何なんだけど……なんか大翔くん、別人みたいだね」 「そう、ですか?」 「――気を遣ってくれるいい子だし。潤のこと、ほんとに可愛がってくれてて、楽しそうにはしてたし。でもなんだか……」  邦彦さんは、そうだなぁ、と少し考えてから。 「ああ。……なんとなく、自然体、て感じなのかも」  そう言って、ふ、と微笑んだ。   「今、すごく良い感じだよね」 「――そう、ですね」  ふ、と笑いなから頷くと、邦彦さんはクスクス笑った。 「大翔くんは、君に会えて 良かったね。――自然体でいられる相手って、大事だと思う」  瑠美さんと同じこと、言うんだなぁと思ったら、なんだか、すごく嬉しくなってしまった。 「――オレの方が、四ノ宮に会えてよかったなって……すごく思ってるので」  そう言って、ふ、と微笑むと。  邦彦さんも。「そっか」と頷いて、なんだかとっても、ふんわりと優しく笑った。  そこに、戻ってきた四ノ宮と瑠美さん。  何だったのかなと思ったけど、とくに、何も言わないので、オレもそのままそれには触れず。オレと目が合った四ノ宮が、優しく瞳を緩める。  ……それだけで、嬉しくなるから、ほんと不思議。 「ふたりとも、また今度、ゆっくり話そうね」 「連絡するから。良かったら泊まりに来て」  邦彦さんと瑠美さんに、頷いて、そこで別れた。  お祭りの方に戻りながら、「潤くん起きなかったね」と四ノ宮を見上げる。 「どうせすぐ、ユキくんと遊びたいーって言うんだろうから」 「四ノ宮とも会いたいよ、絶対」 「オレに会いたいのはそうだろうけど、ユキくん、は可愛いそうだから。見る目はあるけど……」 「なんでオレ、三歳の子に可愛いって言われるのかな」  改めてちょっと不思議になって、首を傾げると。 「潤に向けてる奏斗の笑顔は、めちゃくちゃ可愛いよ」  そんなことを言って、四ノ宮は笑う。 「潤のこと、可愛いって思ってるんだろうけど。その気持ちがめちゃくちゃ顔に出てるから、見てるこっちも、奏斗が可愛いって思うし。それを向けられてる潤もそう思うんじゃないかなぁ……」 「――まあ……めちゃくちゃ可愛いもんね、潤くん」  ただでさえ、目くりくりしてて、表情も生き生きしてて、もうただただ、可愛いのだけど。  それになんか、四ノ宮に似てるし。ちっちゃい頃の四ノ宮ってこんなかなぁって思うと、余計に可愛く見える。なんて言えないけど。 「オレに似てて可愛いんだっけ?」 「――」 「言ってたじゃん。潤、オレに似てて可愛いって」 「――」 「ていうか。奏斗が可愛すぎだけどね」  ふ、と流し目で見つめられて。  顔が熱くなるのは……こんなのやっぱり、オレのせいじゃない。浴衣着てそんな風な瞳を向けないでほしい。  花火を見れる河原に、少しずつ近づいてるから、ものすごい人でうるさい筈なのに。なんか四ノ宮と二人きりみたいな感覚になるのは。ほんとなんなんだろう。    

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