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番外編【夏祭り】31 *奏斗

「ん。まあ……知ってる。オレのこと、好きなのは」 「なんだよ、もう……」  少し前までヤキモチやいてたのに、急に、ふふふーん、とドヤ顔をしてくる四ノ宮がおかしくて、笑ってしまう。 「あ、そうだ。ね、奏斗。さっき奏斗が言ってたやつ」  至近距離で見つめ合ったまま、何? と聞き返すと。 「キス好きだったって言ってたよね?」 「……ああ。うん。まあ」  そういえば後で詳しく聞く、とか言ってたなと、苦笑したオレの頬を、四ノ宮が、ぷにぷにと潰してくる。 「奏斗、キス好きじゃないって言ってたよね」 「ん、まあ……」 「そういえば、三十人と寝るのと、三十人とキスするなら、キスする方が嫌だとか、すごいこと言ってたよね」  クスクス笑って、四ノ宮がオレをじっと見つめる。  ……あー言ったような気がするなぁ……。  口つけて、キスって、オレにとっては、むしろそっちの方がハードル高かったんだよなぁ。……感覚だけど。でも、まあ確かに変なこと言ったな……。 「でも、オレとするキスは、最初から気持ちよかったって言ったよね? 好きだったってこと?」  四ノ宮の指が、オレの唇に、そっと触れる。もうごまかしようもないし、恥ずかしいけどさっさと言ってしまうことにする。 「――和希以外とは嫌だってずっと思ってたのに……なんか、四ノ宮とするのは嫌じゃなかったんだよね……」 「あー……言ってたね、嫌じゃないのが嫌だ、みたいなこと」  くす、と笑いながら、四ノ宮が、ちゅ、と唇にキスしてくる。 「……キスすると、とろん、て顔するからさぁ……今まで、その顔見てた奴らに嫉妬もしてたんだけど」 「え。……あ。そうなの?」 「うん。してた」  大きく頷いてから、四ノ宮はちょっとぷうっと膨らんでて、なんだかとても可愛くなっている。あは、と笑ってしまいながら、オレは、四ノ宮の頬に手を置いて、ぽふぽふと軽く叩いた。 「してないよ。ほとんどキスは断ってたから」 「断れるの?」 「大体、ちょっとだけ申し訳ない顔して、キスはちょっと、って言うと、大体引いてくれる人が多かったから」 「そうなの?」 「うん……他にもいるんじゃない? オレ以外にもそういう人。って聞いてはいないから、知らないけど……あんまり無理強いされたこと無いし」 「そうなんだ……」 「……んーそれでも、たまにキスしてくる人は、居たけど。……まあ。まあ、耐えた」 「耐えたって……」  四ノ宮は苦笑しながら、頬にあるオレの手をきゅ、と掴んで離させて、そのまま、むぎゅ、と抱き締めてきた。 「……もう一生、オレとだけね」  ぎゅうう、と抱き締められてなんだかその必死な感じに、ああ、ごめんね、と思いながらも、一生懸命すぎて、ふ、と笑いが零れてしまう。 「オレ……四ノ宮に抱かれるのも、キスするのも……他の人とするのと全然違くて、びっくりしたくらい、だったから」 「――――……」 「あんなに、よくわかんないくらいになったこと……なかったよ」  なんだかちょっと恥ずかしいけど、ちゃんとそう言ってみた。  オレがいつもあんな風になってると思われる方が嫌だなと思ったし。

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