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番外編【夏祭り】30 *奏斗

 めちゃくちゃ抱かれてから、一緒にシャワーを浴びてバスローブを着て、髪を乾かしあった。  ルームサービスを頼んでから、窓際でくっついたまま、ぼんやり、夜景を眺めてた。  あんまり喋らず、ぼー、と。  ルームサービスが届いて、四ノ宮が部屋の入口でワゴンを受け取って、テーブルに乗せてくれるのを手伝って、向かい合って座る。夜景が見える席で、めちゃくちゃ綺麗で贅沢。  いただきまーすと笑い合って、食べ始めると、すごくおいしくて、しばらくあれこれ頬張るのに夢中。 「おいしいねー」 「ん、だね」 「……何かさ、今日一日、ほんと、すっごい長かった気がしない?」 「確かに――でもあっという間だった気もするかな」 「あ、そうだね、何か盛沢山だったけど、早かった気もする。いつもと違うとこいろいろまわるの、楽しかったね」 「ん……つか、奏斗、浴衣、ほんとに似合ってた」 「四ノ宮こそ。めっちゃ目立ってたじゃん」 「それ、奏斗もだからね。自分のこと気づいてないでしょ」 「そう? でも、四ノ宮と瑠美さんと――――あー、ふふ。潤くんの可愛さには勝てないなあ……」  めちゃくちゃ可愛かったなあ、とクスクス笑ってしまう。 「今はめちゃくちゃ可愛いけど、潤くん、将来はカッコよくなりそうだよね」 「まあ……あの二人の子供だしね」 「四ノ宮にも似てるもん」 「姉貴とオレは、そんな似てないと思うんだけど」 「んー……でも雰囲気は、似てるけど」 「オレ、姉貴と似てる?」 「うん。なんか目元とかは似てるかな……あと、目立つ感じ。なんだろ。着飾るとほんとゴージャスな感じがするの、似てる。四ノ宮家、皆、目立つし」  パーティーで並んでたのを思い出して、ふ、と笑ってしまう。 「葛城さんも目立つもんね。なんか、すごいカッコいいし」 「奏斗はほんと、葛城、カッコいいって言うよね」  四ノ宮が苦笑しながら言うので、ん? と見つめ返す。 「だってカッコいいじゃん……って、四ノ宮のお父さんもだけどね」 「……あのさあ」 「ん?」 「――――どんな意味でもいいけどさ」 「うん」 「奏斗にとって、一番カッコいいの、誰?」 「――――」  その質問は。  ……それはもしかして。 「ヤキモチ妬いてる……???」  思わず首を傾げながら聞いてしまうと、四ノ宮は、すごく嫌そうに、分かりやすく眉を寄せて、む、と口を膨らませてる。  ――――……は。ちょっと可愛い。 「だって、奏斗、オレにはそんなにカッコいいとか言わないじゃん」 「……そうだっけ?」 「絶対、葛城にカッコいいって言ってる方が多い」 「……そう……??」  言いながら、そういえば何回か言ってるかなぁ、と思いながら。執事っていう……カッコいい執事さんって、ほんといつも思ってて……。  ぷ、と吹き出してしまう。 「四ノ宮のヤキモチ、本気?」 「――――うーん……本気なような違うような」  クスクス笑いながら言う四ノ宮に、「ごはん中だけど……ちょっとだけそっち行く」と、オレは立ち上がった。  四ノ宮のすぐ近くに立って、オレを見上げてる顔を見つめる。ぷに、とその両頬に手を置いて、潰す。 「一番カッコいいと思う奴なんて、決まってるじゃん……ていうかオレ、さっきも言ったじゃん。四ノ宮よりカッコいいって思う人、居ないって」 「言ってたけどさー……」  今はちょっと可愛い感じに潰されてるけど。オレ、べた惚れとか、照れること、さっきも言ったのに。  なんて思いながら、ふ、と笑うと。  四ノ宮の手がオレの項に触れて、引き寄せられる。  ちゅ、とキス、されて。  すり、と鼻の頭、触れ合わされる。 (2025/2/26)

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