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プロローグ

誰しも自分が主役になれる時がある その瞬間、自分以外の全ては脇役 恋に悩んだり 友達に助けられたり、家族の暖かさを感じたり 全てが自分を中心に回っていく錯覚に陥る 俺は、 いつも誰かのわき役だった 『藤堂さん・・彼、私以外に好きな人がいたの・・私・・どうすれば良いのか・・』 「大丈夫だよ・・それでも、彼はあなたに側に居て欲しいって言ったんでしょ?」 泣き出す友達の相談役だったり 『ゴメンなさい・・・他に好きな人ができたの・・彼が・・好きなの』 「俺だって・・君の事が好きだったんだよ?なんで・・」 『あなたを傷つけるつもりは無かったの・・でも・・私は・・』 フラれる恋人役だったり 俺は、損な役回りばかり・・ 運命の人にも会えないし 俺の事を誰よりも愛してくれる人も現れない だから、ずっと待っていた 俺が主役の物語が始まる瞬間を 長い月日の中で・・毎日同じ事の繰り返し 大学が終わったら朝方までバーテンダーの仕事して、アパート帰ってきて昼まで寝て 休みの日は友達と飲みに行って・・愚痴聞いたり、ナンパしたり・・ 俺は、ずっと・・ずっと待っていたんだ 俺が主役になる瞬間を 「藤堂さん・・」 「准君!」 准君が店に来てくれるだけで、その日の嫌な事は全て帳消しになるくらい胸が躍る お客が多くて、話す事が出来なくても カウンターの隅で飲んでいる彼を見るだけで癒されるんだ 俺から話しかけて仲良くなるまで、時間はかからなかった 准君は綺麗で、優しくて・・ 男だと分かっているのに 准君は、どこからどう見ても男なのに・・ 彼を見ると、胸の奥が疼きだす でも、きっと・・こんな綺麗な人だから彼女もいるだろうと思っていた 「え?・・俺は、彼女なんて・・いないですよ」 冗談交じりに彼女いるんでしょ~なんて言った俺に頬を少し赤らめて言った その姿に、また胸が疼く 「藤堂さんこそ・・彼女いるんでしょ?」 上目づかいに見る准君の瞳は、そこら辺の女よりぜんぜん綺麗で扇情的だった 「俺?・・俺は今はいないよ!」 慌てて首を降りながら否定した 「あ・・そうなんだ・・・」 俺の言葉に潤君は少し目を見開き・・でも直ぐに下を向く 「准君はさ・・好きな子いたりするの?」 そんな事聞いて、どうするんだと思ったが、止められなかった 「・・・いるよ・・」 准君が、下を向いたまま言った瞬間 「そう・・」 その瞬間、ズキン・・っと胸の奥に痛みが走ったのを覚えている

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