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覚悟

次の日、俺はいつも通り仕事に行く 「じゃ・・今日は早く帰ってくるからさ・・待ってて」 帰ってきてからの事を考えると、今から心臓がバクバクで声が震えそうになる 「・・うん・・病院に行くけど、直ぐ帰って来るよ」 俺の様子がいつもと違うと感じているのか准君も固い表情をしていた。 「・・・・・ん・・じゃ、行ってきます」 何か言わなきゃと思ったが、何も言葉が思い浮かばなかった。 「いってらっしゃい」 そう言って差し出してきたのはアイロンがかかったハンカチだ。 ありがとうと言って受け取り玄関を出た (よし・・大丈夫・・今日は絶対に言う・・) もう覚悟はできた 今日・・仕事から帰ってきたら自分の気持ちを話そう どんな反応するか分からないし、引かれる可能性もあるけど でも、ずっと好きだったと言おう どんな結果になっても、今のままではいけないんだ 「・・よし!」 震える手を拳で誤魔化し、仕事に向かった ・ 取引先を回り、いつも通りに仕事をこなす 会社に戻ると、事務の子が俺を見て早いですねと言った 「ちょっとね~」 笑って誤魔化した俺に 『あれ~彼女さんですか~?この頃早く帰りますもんね~』 冷やかす様に言われた。 「だと良いけどね・・」 思わずハハっと苦笑いした そうだったら・・どんなに良い事か・・ ・ 会社帰り、駅の近く花屋さんが目についた 「あ・・そうだ・・」 手ぶらで、告白するのも・・あれだよな (うん・・雰囲気って大事じゃん!) 丁度、ミニブーケが一つ余っていたので、それを購入した そう言えば准君って花好きだったかな 姉ちゃんは・・よく花を貰っていた気がする 「よし・・・・ずっと好きでした・・俺の気持ちを知って欲しい・・うん、これで行こう」 うん・・ストレートが良いよね! 覚悟を決めたら、突き進むのみだ。俺の言葉に目を丸くする准君を想像する。 (驚くよね・・そりゃ驚くか) 急に好きって言われたら・・しかも相手は男だ。 記憶も曖昧なのに、准君を混乱させるだけかもしれない でも、これ以上嘘はつきたくない 姉ちゃんのことはまだ話せないけど・・ 出合った瞬間から好きだったって言おう そして・・俺を好きになってもらうために頑張るんだ 何度も自分に言い聞かせ帰りを急いだ ・ マンションに戻り、エレベーターに乗り込む 時計を見ると、まだ18時を過ぎた頃だ きっと准君は夕飯を作って待っていてくれてるだろう ドクドクと聞こえてくるほど鼓動が速い エレベーターを降りて部屋のドアまでいくと、合鍵で鍵をあけた 「た・・ただいま~」 喉が緊張で渇き声が掠れた。 (あれ?) いつもなら、お帰り尊言ってと直ぐに玄関まで来てくれるのに・・ 「聞こえなかったのかな・・」 玄関には靴があるからいるはずだし‥と思いながら靴を脱ぐ 花束を背中に隠しながらリビングのドアを開けると 「准君・・ただいま!」 准君は、ソファに座っていた だが俺に背を向けていて顔は見えない。 振り返ってすぐ「お帰り」と言ってくれるかと思ったが 「・・・尊・・」 背を向けたままゆっくりと立ち上がった 「准君、あのさ・・」 様子が変だとは思ったが、俺はそれよりも、どのタイミングで花を渡そうかと緊張していた とりあえず、彼の前に回り込み花束を渡そうと思った時だ 「・・尊のお姉さんって・・俺の婚約者だったの?」 俺に背を向けたまま静かな声で言った 「え!!」 その瞬間、全身に血が一気に下がっていくのを感じた

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