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《side シュウの友人②》

その後私が向かったのはアイツが住むマンションだ。帰ってきたら一番に聞きたいことがある。 私はアイツの監視役でもあるためこの部屋の鍵を渡されている。だから自由に出入りできるのだけど、だからといって毎日来ているわけではない。幼い頃は毎日のように通っていたが.....。 私が出会った頃のアイツは酷く無感情だった。こちらが話しかけてもどうでも良さそうに目を向け遠くを見つめるだけで、会話のキャッチボールなどできなかった。 変だけどつまんない奴。 私のなかのアイツの印象はまさにそれだ。 まぁそれも一緒にいる時間が長くなると変わったんだけどね。 ガチャッ どうやら長い時間むかしのこと思い出していたみたいだ。アイツが帰ってきた。 「やぁ」 「なんでいんだよテメェ」 「そう邪険にしないでよ。聞きたいことがあるんだ」 「なんだよ」 目付きが悪くて無愛想な顔。それでもモテるんだから不思議この上ない。性格は残虐で冷酷、そして傲慢。αらしいαの見本だね。 どさりと目の前のソファに腰かける彼を見てそう思った。 「弥斗って子供と君はどういう関係なのかな?」 「そんなん見たならわかんだろ」 それだと誘拐犯と被害者という関係になるんだけど?と言いそうになるが口を噤む。下手なことを言って殺されるのだけは避けたいからだ。この男は例え数年来の友人である私ですら簡単に切り捨てることができる。 だから私は自分の考えが合っているのか確かめるための言葉を投げかけた。 「可愛い恋人だね」 これで『なに言ってんだテメェ』という反応ならあの子供はコイツにとってどうでもいい存在になり、『な、なに言ってんだよ!』と慌てたり頬を赤く染めたりしたら.....私の考え通り、あの弥斗って子に恋しているということになる。 口端がひくりと震えた。 珍しく自分が緊張しているのがわかる。 目の前の友人が口を開くのが待ち遠しく感じ、柄にもなく膝を揺らしてしまう。 そしてコイツはーー 「クハハッ.....だろ?アイツすっげぇ可愛いんだよなぁ」 顔を緩めそう言い切った。 私の予想の上をいく答えを返され愛想笑いが崩れる。 嘘だろう?とコイツの胸ぐらを掴んで揺さぶって言ってやりたい。目を覚ませと言って殴ってやりたい。 だけど愛おしそうな顔をする友人が目に入り口端がぴくりと震えるだけだった。 「ぁー.....恋人なんだ?」 「?.....そうだっつってんだろ」 どう見ても弥斗って子は嫌がってたし、コイツのことを怖がってた。恋人だなんて嘘だろう? 私はコイツにヒクヒクと震える口元が見えないように片手で口元を覆い、最後の確認でもう一度聞く。 「メールで調べろって言ってたの今日だよね?つまり今日初めて会ったわけだ、あの弥斗君と。それなのにもう恋人になったんだ?」 「そうだよ。何度も言わせんな。テメェが聞いてきたくせにしつけぇ」 「......そう」 あぁなんだそれ。なんだそれ、なんだそれっ!! なんて面白いんだ!!!! コイツが好きになったのはβで!それも小学生!! まさかコイツがショタコンだったとはっ! 「ふふ、はははっ」 遂に我慢できなくて笑ってしまった。 「なんだよ急に気持ちわりぃ」 「あぁ、ごめんごめん。......恋人は大事にしなきゃダメだよ?見た感じあの子は君の事を怖がってるみたいだから」 「.....大事つってもなぁ。どうすりゃいいんだ?メシ連れてってもあんまいい反応貰えなかったし」 面白すぎる。コイツが悩むなんて。 弥斗君には悪いけどちょっとちょっかいかけさせてもらおうかな。なに、彼に悪いことは言うつもりは無い。 「恋人なら優しく接してあげなよ?今はいい反応貰えなくても優しくしてればいつか必ず向こうも心を開いてくれるさ」 「そうか。優しく....か......」 真剣に考える友人に笑みが漏れる。コイツが誰かに優しく接する姿なんて想像できないけど、この様子だと.....うん面白そうだ。 「そうそう。恋人らしく一歩づつステップを踏むんだ。年下には余裕ある態度の恋人が魅力的に映るらしいからね。いきなりがっついたりしたらダメだ」 「なるほど....」 そして私は考え込む友人に背を向け帰る旨を伝えるが、気のない返事が返ってきた。これはきっと聞いていないなと確信する。しかし私が急に居なくなってもコイツは特に何も思わないのはわかっているため、やれやれと溜息をつきこの部屋から出た。 「これは監視役として岩さんに伝えた方がいいのかな?貴方の若様はショタコンですって」 自分の言った言葉に声を上げて笑う。通りを歩く人々に不振な目を向けられたが、今の私にはどうでもいいことだった。 もし岩さん達に教えたらあの家の人達はどうするんだろうか?若君がβのそれも小学生に恋していますって。きっとβだから物凄く反対されるだろうなぁ。いや、アイツの親父さんなら..... 「はぁ....でもアイツは将来Ωと番羽目になるんだから今だけは楽しませてもいいよね....」 例えβを好きと言っても運命の番が現れれば今のアイツが抱く気持ちは跡形もなく霧散するだろうけど。そう思うとーー 「αって可哀想かもね.....」 まぁ、私は友人の気持ちを軽く見ていたことに今後頭を悩ませることになるのだが....それはまたあとの話。 「今日は弥斗君とどんな話をしたんだい?」 嗚呼、最近私の友人は可笑しくて面白い。 《side end》

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