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《side 兎道 湊都③》
「なぁ、君。ここで始動するってことは殺されてもOKという意味なんだが....あぁ、教えてなかったな」
優顔は小さく「始動」と言い、その手に影子でできた弓を握る。あとの三人もそれぞれ始動させ異能を発現させた。金髪は槍、坊主頭はメリケンサック、眼鏡は長い棒.....棒?
優顔以外は全員ザントのようだ。俺は魂写棒がメリケンサックになるなんて思わなかったので少し驚いたが、そんな場合じゃない。
ヤバい、なんか知らんがコイツらのスイッチを押してしまったらしい。
「俺は快楽殺人鬼と違って人を殺すのが好きなわけじゃないからなぁ....面倒くさ」
「いいからやっちまおうぜ!コイツ殺して次の獲物を探さねぇと」
「新入生は僕達のいいカモだからね」
こういうヤツらが居るから父さんは俺に戦うすべを教えてくれたんだな。殺しでもしないと反省しない奴、また何度も同じことをやる奴。
(でも、俺は殺さない。コイツらを無力化させて被害者をなくすんだ!逃げるプランはやめだやめ!!俺は死んでもやってやる!っていうかコイツらうぜぇ!!)
そんな俺の覚悟を感じ取ったのか、四人は俺を囲むように位置をとった。神経を研ぎ澄ませて、どこから攻撃が来ても対処できるように俺は息を吐く。
次の瞬間、項にぞわりと鳥肌が立ち振り向くように 揺蕩う刃 を水平に振るった。
ガキンッ!と何かを弾いた音と、固い手応えに思わず「どらぁ!!」と叫ぶ。視線の先には驚愕に顔を歪める優顔の姿が。
「テメェらを無力化する!!」
俺に矢を弾かれたのが屈辱だったのか優顔は怒りに顔を染め、何かを言おうとした。
だが、優顔の言葉が吐かれる前にパチパチと場違いな拍手が響き渡る。
「誰だっ!?」
焦ったように優顔がそう叫び、拍手音の発生源と思しき木に矢を番えた。
「すげぇ啖呵を切ったなチビ」
「チ!?」
チビって俺の事か!?これでも毎日牛乳飲んで努力してんだよ!って言うか誰だいきなり......!
しかし文句を言おうとして固まった。
木の裏から出てきたのはそれはもう傲慢が服を着たような男で、息を飲むほどかっこよかったからだ。
俺達とは違う踝まであるスカートタイプの軍服を着ており、見るからに鍛えているであろう分厚い身体。そして何より圧倒的支配者のオーラ。
(こいつαだ)
俺は漂ってきたなんとも言えない匂いにクラりと目眩がした。しかし、周りの反応は劇的だった。
「クソッ!緋賀だ!!逃げるぞお前ら!!」
矢を番えていた優顔は男を見るやいなや、異能を解き一目散に逃げようとした。
「常習犯を逃がすわけねぇだろ馬鹿が....」
男はそう呟くと、いつの間にか手に持っていた拳銃をデタラメな方向に四発続けて放った。どこに撃ってんだよ....と首を傾げていると四人が走り去ったそれぞれの方向から悲鳴が聞こえた。
「な、何をしたんだ!?」
「よし、お前も手伝え。アイツらを一箇所に集めんぞ」
「お、おう?」
俺の質問には答えず男はスタスタと優顔が消えた方へ姿を消す。俺は暫く男が消えた方向をボーッと眺めていたが、手伝えという言葉を思い出し急いで眼鏡が消えた方へ走った。
どうやらそう遠く逃げれなかったようで、眼鏡はすぐに見つけることができた。
この時俺はあの男がコイツらを無力化したんだと思っていて、つまりこの眼鏡は気絶しているだけだと思っていた。
「は?」
だけど、うつ伏せで倒れる眼鏡からは気絶にしては多すぎる血が流れていることに気づき、背筋が凍る。
「おい、眼鏡....おいってば!!」
身体をひっくり返し揺すっても眼鏡は反応しない。
......それもそうだ。
だってコイツ....頭を撃ち抜かれている。
「なんで死んでんだよぉ.....」
俺は眼鏡の恐怖に歪んだ顔をぼんやりと見つめた。
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