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教室に着くとだいたいの生徒が席に座っていた。もう僕達三人が一緒に座れないくらい席が埋まっていて、隣で兎君がオロオロしてる。
僕は別々に座ってもいいんだけど.....。
「はい、そこどいて~?」
そんな声が聞こえ兎君の隣を見ると一緒に居たはずの宮野君が消えていた。
「おーい、こっちこっち!ここ空いてるよ~」
「マジで!?やったー!」
「......」
やったーじゃないよ兎君。どう見ても空いてるじゃなくて空けただからね、宮野君がやったのは。
「燈弥は俺の隣な!」
「えぇ~.....じゃあ僕は湊都君の前で」
窓際の一番後ろに兎君、その前の宮野君。見事に教室の隅を占領したなぁと、思っていると僕の前に座る生徒が振り向き声をかけてきた。
青髪に黒のメッシュを所々入れたキリッとした顔のイケメンだ。萌葱色の瞳が印象に残る。
「瓶底メガネ......?ああ悪い。初めて見る眼鏡で少し驚いた。俺は 瀧宮 清継 という。席が近い縁だ、仲良くしてくれると嬉しい」
「僕は一条 燈弥といいます。因みにですが君付けとちゃん付けどっちがいいですか?」
「?.....どっちでもいいが」
「なら瀧 ちゃんですね」
「瀧ちゃん.....」
なんとも言えない顔をした瀧ちゃんだが、そこへ宮野君が「あーーー!!!」と大声を出して瀧ちゃんに指を指した。
「清継じゃん!?」
「瀧ちゃん、知り合いですか?」
「......幼馴染みというやつだ」
嫌そうに答える瀧ちゃん。それでも宮野君は嬉しそうに瀧ちゃんの肩に腕をかけた。
「なんだなんだ?あ、俺は兎道 湊都な!湊都でいいぜ」
「瀧宮 清継だ」
「清継~何年ぶり?」
「言うが俺は中学からここに居る」
「えっ!?じゃあなんで僕に会いに来てくれなかったの!?」
「お前は中学荒れてたからな。あんな状態のお前と関わりたいと思うやつは居ないだろう」
「芙幸って中学時代何やったんだ?」
え、兎君それ聞いちゃうの?
僕は聞きたくないなぁ。
「あ''ー....席つけ~」
ナイスタイミング。宮野君が口を開こうとした時、ちょうどこのクラスの担任らしき人が入ってきた。アロハシャツに白い短パンを着て、少し....いやだいぶ場違い感凄い人だ。
先生って白い軍服着用しなくてもいいんだろうか?
「うわテキ先だ」
テキ先?
どこからか聞こえた声に首を傾げる。
「このクラスの副担を務める 望月 俊樹 だ。.....以上解散!!」
呆気にとられていると先生はおつかれ~と言いながら入ってきたばかりのドアに向かい、そのまま出ていった。
静まり返る教室に戸惑う。
これはどうすればいいんだろうか?このまま寮に向かってもいいのかな?
「湊都君達~寮に行こっか」
「....いいんですか?」
「んふふふ、大丈夫大丈夫。望月 俊樹~通称テキ先!とにかくテキトーな先生だから僕達が自分から動かなきゃ何も進まないんだー」
「なんでそんな奴が担任なんだよ。人選ミスだろ」
「言うがアレは副担だ。本来俺達を担当する担任はもっと酷いぞ?今はいないが俺としてはこの先ずっと望月先生のままがいい」
「早くもクラス替えして欲しくなりました」
「お、俺はテキ先のままがいいぜ!このままがいい!」
そして僕達は寮へ向かったのだが、聞けばどうやら僕と兎君、瀧ちゃんと宮野君で部屋が別れたようだった。
「え~!湊都君と一緒じゃないの!?宮さんどうにかしてよ~」
「そう言われても.....ごめんねぇ」
見てるこっちが申し訳なるほど顔を悲しそうに歪めた寮長の 宮 祐 さん。御歳55歳だそうだ。
これからお世話になる人になんて顔をさせているのか、僕は未だに愚痴愚痴している宮野君の頭をグーで殴った。
「い''って!?!?」
「さっさと部屋に行きますよ。宮さん、ご迷惑おかけしました。また何かあったら相談に来ますね?」
「おぉ、いつでも来なさい」
宮さんと話すと癒されそうだ。今度お茶にでも誘おうかな?
「燈弥君なんで殴るのさ~?」
「いや、アレはお前が悪い」
「宮さんに迷惑かけちゃダメだぞ!!」
「二人とも味方してよ.....ま、いいや!それで湊都君と燈弥君の部屋は410だっけ?」
「おう!芙幸と清継は501だよな。今度遊びに行くぜ」
「うえーん、せめて隣の部屋がよかったよー。どうやって部屋割りしてるのかほんとに謎!ここで3年生活してるけど法則が全く分かんないんだよね」
「どう考えてもランダムだろうな」
「あの、聞きたいんですが.....これってオメガ性を考慮されてるんですかね?」
一番気になっていたことを聞く。ランダムならΩとαが一緒になる場合もあるってことになる。それは危ないんじゃないだろうか?
今回はβかつ性に興味無い僕が兎君と相部屋だったからよかったけど、他だと兎君は無事じゃ済まなかったと思う。
その辺は考えていたんだろうか?兎君は。
「それは勿論!オメガ性を考慮した上でのランダムさ !ΩはΩ同士だったり、事前調査で調べたオメガ適正でΩに耐性があるβが一緒になったりするよ~。だからαと同室になることは絶対にないんだ」
「それに発情期がきたことを宮さんに言えば、Ω専用の個室を使えたりする。αも然りだ」
「へぇ~すげぇ。しっかり考えられてんだなぁ」
その様子だと兎君は逆にあまり考えてなかったな?
「じゃ、僕達は五階だからここでお別れだね!あ、そうだ。夜ご飯は学食でいいよね?一緒に食べるよね?」
「芙幸やめておけ。湊都達にも交流の時間が必要だろう。俺達とは毎日顔を合わせるんだからご飯くらいいつでも一緒に食べれる」
「うーん.....そうだね!しょうがないから今日は部屋の人達に湊都君を譲ろう!それじゃあ明日ね!」
「二人とも明日な」
「おう?明日!!」
二人のやり取りに首を傾げながら僕も手を振る。
交流の時間?
瀧ちゃんはどういう意味でその言葉を言ったんだろうか。僕と兎君に交流の時間が必要?
意味がわからなかったが、僕達がこれから過ごすであろう部屋の前に辿り着き、瀧ちゃんの言っていた言葉の意味を理解する。
「四人部屋なんて聞いてないですよ!?」
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