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これは3チームが体育館から解き放たれ開始合図から30分を過ぎたころのこと。
「あれ?お前って俺と同じクラスだったよな」
「えっ!?あ、うんそうだね。確か....田中君だっけ?」
「おう、お前は中田だっけか」
「うん。同じ黒チーム同士頑張ろうね」
「ああ」
「.....」
「.....」
「.....ね、ねぇ、田中君って人狼?」
「なわけねぇだろ。俺が人狼だったら声かける前にお前を殴って気絶させてたよ」
「確かに.....」
「....あー......。まぁ互いに生き残ろうな」
そう言って気まずげに田中君は中田君に背を向けた。
僕はそれをなんとも言えない顔で見る。
(無防備に背中を見せるなんてナンセンス)
現に中田君が腰に下げていたハンマーを背を向けた田中君目掛けて振り下ろしていた。
ガッと鈍い音が鳴る。
(すごい痛そう......死んでないよね?)
木の上からそう心配していると中田君が倒れた田中君のそばにしゃがみこんだ。
「ふふん♪ふったりめ~。馬鹿だなぁ....人狼は僕だっていうのに無防備に背中見せちゃって。よし、これでノルマまであと8人。ノルマ達成までは出会ったヤツら手当り次第狩ろうかな。.....別に自チーム数人狩っても大したことないよね?いや、僕が黒チームなのかわかんないけど。やっぱり誰かに背中を見てもらわなきゃダメかぁ.....流石に自分がどこチームなのか知らないのは困るなー。でも他人に背中を見せるの怖いなぁ。嗚呼どうしよう......」
中田君はブツブツとボヤきながらブチリと田中君のタグを引きちぎり自身のポケットに入れる。
彼は人狼だったようだ。人畜無害そうな顔をして平然と人の頭をハンマーで殴るなんて.....見た目で判断はしちゃいけないな。
そして僕はこの学園に入学する際に支給されたスマホを見る。実は僕、体育館から出てすぐ近くの木の上に登り人狼かどうかのメールが来るのを待っていたんだが.....
ん?メールを見なくても背中ポケットに紙があるかの有無で自分が人狼かわかるんじゃないかって?
.......不思議なことにメールを確認しないと後ろポケットのチャックが開かないんだよね(どういう仕組み?)。
だから待つしかなかったんだ。
うん、待つしかなくて.....待ってたんだけど不覚にも僕はいつの間にか眠ってしまった。
下の方で気配を感じ起きてスマホを見てみれば制限時間のタイマーが既に30分過ぎていたという.....。
それで慌てて人狼メールを見ようとして始まったのが田中君と中田君の腹の探り合い。
それは中田君の勝利に終わったので、僕もやっと自分が人狼かどうか見れるわけだが......。
《貴方は人狼です》
何度見てもスマホにはそう書かれていた。
人狼.....僕が人狼?
........ハズレくじを引いてしまった。
取り敢えず僕もノルマを達成しなきゃね。スマホに届いていたケーキ君からの物凄い量のメールをスルーして――
「次はどこに行こう.....3人目を狩らなくちゃ」
最初の獲物である中田君を見下ろした。
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