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第10話

綺麗にお皿を拭いて、しまった後頭を撫でながら彼に聞かれた。 「ひな、一緒にお風呂入らない?」 「えっ・・・?」 「お風呂一緒に入りたい」 お風呂一緒に入るって? うーん。昨日は腰にタオルは巻いていたけど、ある意味一緒に入ったよね。 後々身体の関係もなんていってたけど、こんなによくしてもらって、そんなおねだりぐらい聞けないなんて僕どうかしてるよね。 「・・・うん・・・いいよ」 「えっ・・・いいの?」 「うん」 「じゃぁ、心変わりする前に行こうか、おいで」 彼はそのまま僕の手を引っ張ってお風呂場までエスコートされた。 昨日ぶりのお風呂場は相変わらず広い。驚くことに既にお湯が張ってあった。 「先シャワー入っちゃおうか」 そういって彼はシャツを脱ぎ始めたけど、背中を見た瞬間僕は言葉を失った。 その背中には大きな龍と沢山の蓮の花が咲いていた。服を脱がない僕を見て、彼の手が止まった。 「どうした?」 「・・・あの・・・背中・・・」 「あぁ、これか?和彫だよ。俺の苗字に入ってる龍と俺の好きな蓮の花だな。ごめん、怖いか?」 いや、正直怖いんじゃない。あまりの綺麗さに言葉を失っただけだ。凄い迫力・・・彼によく似合ってる。 誤解されるのは嫌なので首を横に振った。 「違う・・・綺麗だなぁって」 「お、おう。そうか、ありがとな」 「・・・触っても・・・いい?」 「いいよ、ほら」 そういって僕に背中を向けた。 凄く鍛えてるみたいで、全身の筋肉が素晴らしい。胸筋も盛り上がり、腹筋は綺麗に割れていて、腕の筋肉もしっかりついているし、特に背中がまるで水泳選手を見ているみたいな立派な背筋だ。 あぁ・・・これは男でも惚れ惚れするなぁ、その筋肉の上に迫力のある和彫・・・ 龍をなぞるように人差し指でツーっと触ったら、刃の背中がビクッと動いた。 「ひ、ひな、流石にくすぐったい、触るならちゃんと触ってくれ」 「あっ・・・ごめん。なんか綺麗だけど、しっかり触ったら痛いのかなって」 「この刺青を入れた時は痛かったよ。でも今はもう痛くない。遠慮なく触っていいから」 言われた通り、しっかり触ることにした。 めちゃくちゃ綺麗だけど、彼の大きな背中全体を覆う和彫は入れる時痛かっただろうなぁ。 上から龍をなぞって腰のあたりの蓮の花を触っていたら、ふと脇腹に目がいった。 なんか傷がある、古傷かな。よーく見ると脇腹に20ああぐらいのケロイド状になった細長い傷跡があった。 「これは・・・?」 「あぁ、この傷か?正直恥ずかしいんだけどな、数年前に敵対していた組に待ち伏せられて、応戦してたんだけど、ドジってな。避けきれなくて思いっきり脇腹切られてな、ちょっと危なかったけど、今はもうなんともないから大丈夫だ」 「えっ・・・刺されたの?」 「あぁ、刺されたな。でももう痛くないし大丈夫だよ」 隣にいると彼がヤクザの若頭であることを実感することがないけど、この大きな傷を見てなんだか遠い世界だったものが少しだけ現実味を帯びた気がした。 切られるなんて痛いし苦しい。なのになんともないって顔してるなんて・・・ 「ひな?大丈夫だよ、それより一緒にシャワー入ろう?」 あぁ、そうだ、シャワー入るんだった。でもちょっと恥ずかしい。昨日はタオルで隠してたけど、今日も隠していいのかなぁ。 「すぐ脱ぐから、先入ってて」 「わかった、先シャワー入ってるから早くこいよ。風邪ひくから」 彼はズボンと下着を脱ぎ去って腰にタオルを巻かずにシャワー室に入っていった。 思わずその後ろ姿の引き締まったお尻を見て芸術的な筋肉だなと思ったことは内緒だ。 遅かれ早かれ裸を見られるのはわかってるけど、なんか恥ずかしいというか。あんな綺麗な筋肉を見た後だと自分の体が貧相で情けなくなってくる。 はぁ・・・いつまでも待たせてられない、服脱ぐか。 素っ裸になった自分が鏡に映る。 彼と比べると青白いもやしみたいでみっともない。 「はぁ・・・」 ため息を零しつつ僕はシャワー室に向かった。 「あ、やっときた。昨日みたいに俺が洗ってもいい?」 「う、うん」 めちゃくちゃ笑顔でおいでと招かれた。 シャワーの湯気がシャワー室に充満しているけど、はっきりと彼の下半身にものすごい存在感を放っている大きくぶら下がっているものが見えてしまった。 え?デカくない?? あまり他人のものは見たことないからなんとも言えないけど、僕のものと比べても通常時で倍ぐらいありそうだ。あんなのが勃ったら凶器だろうなぁ・・・ そんなことを僕が考えているとも知れず、彼は凄いご機嫌で僕の髪の毛を洗っている。 鼻歌まで歌っちゃってる。 髪の毛を流した後ボディソープを泡立てて僕の身体を洗い始めた。 最初は遠慮がちに首から洗い始めたんだけど、なんか段々と下がってくる手がどうもいやらしく感じてしまった。 優しく背中をなぞられ、耳も洗われてるとなんか身体の芯がゾワゾワしてくる。 昨日は全然そんなことを感じさせないで淡々と洗ってた気がするけど、妙にくすぐったい力加減で洗ってくるので身体が敏感に刺激を拾ってしまう。 背中と脇腹を洗い終わると、手がお腹に回ってきた。おへそをなぞるように触られて、あらぬ所が反応しそうになるのを必死に堪えた。 ダメだ、落ち着け、ただ身体洗ってもらってるだけだ。 おへそから下には一切触れず、徐々に上へを撫でる様に手が上がってくる。 胸を回避して鎖骨から首を洗われる。 一瞬ほっとしたが、すぐにまた手が下がっていく。 男の胸なんてぺったんこで揉み心地のいいものでもないのに、彼は優しく揉み込むように僕の胸を洗い始めた。 「っ!」 気のせいかと思っていたが、クルクルと乳輪をなぞられている。これってかなり性的に触られてるよね?! 乳輪をなぞられると、くすぐったさと同時に感じたことのないもどかしい感覚に襲われる。 「っ〜〜〜〜!」 変な声を出すまいと必死に下唇に力を入れる。 「っんぁ!っ〜〜!」 え????何今の声?僕の声?? 乳輪しか触らなかったのに、急に彼の指で乳首を弾かれた衝撃で、変な声が出て急いで両手で口を塞いだ。 あまりの衝撃に若干涙目になってくる。 「っも、もう、胸は綺麗になった!」 「ん〜?そうかな。まだもうちょっと洗いたいな」 綺麗になったって言ったのに、話しながらも手を止めない彼に翻弄される。 「んっ!・・・っへ、変な声ぇ・・・っ出ちゃうから!」 「ふふ、さっき可愛い声出たね」 「可愛くなんかぁっあぁ〜〜〜〜!」 思いっきり両乳首をグリッと抓られるとビリビリっとした電気のような確かな快感が身体に走った。 「強い方が気持ちよさそうだね」 すると指の腹で乳首を強めにグニグニと回したり、押し込んだりし始めた。 「ッツっ〜〜っ!!!っはぁっ〜〜〜っ!」 彼に手を止めようと彼の手首を掴むけど、岩のように動かない。 「触られるの・・・嫌だ?」 すぐ後ろにある顔を見上げると、若干眉が下がっているけど、目の奥に隠しきれない欲が見える。 今までは痴漢にあったりすると気持ち悪くて仕方がなかったのに、彼に触られるのは嫌ではない。寧ろ気持ち良すぎる。 そして彼の欲が僕に向いていると言う事実が、嬉しいと感じている自分がいることが驚きだ。 「嫌じゃ・・・ない」

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