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第13話
パチリと目が開いた。
ふとサイドテーブルの時計に目をやると朝の7時。
隣には彼が居なくて、代わりに冷え切った枕があった。
今日は仕事で忙しいのかな。
なんだか昨日の怠さを引きずってるような気がして・・・身体が重怠い。
もしかして先にご飯食べてるのかなと思った僕は、せめて朝の挨拶をしないとと思って、リビングへ向かった。
「おはようございます、陽太様」
そこには相変わらず朝早くからピシッとスーツを着こなしたスミがダイニングテーブルの横で待機していた。
「お、おはよう」
さっと周りを見ても彼の姿がない。
やっぱり仕事行っちゃったのかな。
僕がキョロキョロしているのを見てスミが口を開いた。
「申し訳ございません。若様ならもう既にお仕事に向かわれています。陽太様、朝食は和食洋食どちらがよろしいですか?」
やっぱり行っちゃったのか。忙しそうだもんなぁ・・・
「・・・お腹空いてないから・・・朝ごはんはいらないかな」
「左様でございますか、この後どうされます?」
んー・・・寝ようかな。なんかいつもより思考がまとまらないし・・・怠い。
「もう一回寝ると思う。おやすみなさい」
「かしこまりました。おやすみなさいませ」
僕は自分の部屋に行こうか悩んで、やっぱり彼の寝室に行くことにした。
喉が渇いてるからと、部屋にある冷蔵庫に手を伸ばせば沢山の缶ビール、ジュース、ミネラルウォーターのペットボトルが入っていた。
あ、これ美味しそう。
手に取った缶には青森りんごと書いてあって美味しそうな蜜のついたりんごの断面図が描かれていた。
これ飲んでもいいかなぁ・・・なんでも取っていいよって彼言ってたよね。
缶を開けるとプシューっという音が鳴って、あぁ、これ炭酸だったんだと今更気づいた。
飲むと甘すぎずさっぱりとした味で渇いた身体に水分と糖分が染み渡る感覚がした。
あっという間に飲み終わってしまって物足りなさを感じたけど気怠い身体を引きずってベットに入り込んだ。
家とは比べ物にならないふかふかとしたお布団と枕。
「はぁ・・・」
気持ちのいい寝心地なのに思わずため息が漏れる。
一人で寝るのは当たり前だったのに・・・隣が冷たいってこんな寂しいもんなんだなぁ・・・ほんの数日一緒にいただけなのに・・・僕めちゃくちゃ絆されてない?
彼のペットのような分際で寂しいっていうのは烏滸がましいなぁ。大人しくお家で待ってよう。
寝ようと思ったけど何故か目が冴えてしまってベットでゴロゴロしていた。
寝室にも大きなテレビがあったので、映画でも観てみようと思い、ランキングに入ってるのを適当に押して再生した。
偶々それは任侠映画だった。
最初から重苦しい雰囲気の映画に見るのをやめようとも思ったけど、何故か消せなかった。
どんどん人が死んで、組と組の争い事が発展していく。
彼もそういう世界にいるんだよなぁ・・・こういうのって現実にあるんだろうか・・・
口寂しくなってしまって今度はブドウ味を見つけて飲み始めた。美味しいなぁ・・・
あぁ・・・血が飛び散ってる。痛そう・・・
気づけば映画は終わっていた。
現実にそういう争い事があると、やっぱり流血沙汰になるのかなぁ?違法薬物とか、銃とか持ってるのかな?
それより、さっき彼と同じように背中に和彫を入れた体格のいい男がおっぱいの大きい女の人とセックスしてる後ろ姿のシーンがあったんだ。
それが妙に脳裏に焼き付いて離れてくれない。
女の人とのセックスって気持ち良いのかなぁ?今まで誰に対しても欲情したことないからわかんないけど・・・
あ、でも昨日彼と抜き合いっこしたのはめちゃくちゃ気持ちよかった。でもセックスじゃなかったし・・・そもそも男同士ってどうやってやるんだろう?
うーん・・・ネットで検索したい。でもパソコンも携帯もないしなぁ。
そっか、聞けば良いのか。
僕はベットから飛び起きてリビングに向かった。
「スーミーいる〜〜?」
「ひっ!陽太様ぁ!!!!!と、とりあえずバスローブ整えてください!!!!乱れてます!!!!!」
ん?バスローブ?
たしかに腰紐は緩んでて、胸元がはだけてる。
でも同じ男だしいいじゃん。
「えぇ〜同じ男じゃん〜気にしない気にしない〜」
「陽太様?」
「ん〜?何〜?あ、そうだ、スミにね聞こうと思ってね」
「えっと、なんでしょう?」
「男同士のセックスの仕方教えて〜?」
ゴンッという音と共にスミがテーブルに頭を打ち付けていた。うわぁー痛そう。
「だ、大丈夫〜?痛そう」
「男同士・・・えぇ・・・若様まだ手出してない??そんな奇跡ある??えぇ・・・えぇ・・・明日世界終わるのかな・・・いや、それより、どこまで教えれば・・・殺されないかなぁ・・・絶対殺されそう・・・いや、ここは腹を括るしか・・・」
なんかスミがブツブツ言い始めた。
教えてくれないのかなぁ。
じゃぁ、ネットで探した方がいいか。
「教えてくれないならパソコンか携帯貸して、自分で調べるから、それか他の人に聞く」
「いや!そ、それは・・・スミお教え致しますので、少々お待ち頂いてもいいですか?色々と準備しますので」
「わかった〜ソファーで待ってる」
僕はそのままソファーに座って、背もたれにかかっていたもふもふなブランケットに身を包んでスミの帰りを待った。
暫くして、スミが箱を抱えて戻ってきた。
「陽太様、色々と必要なものを持ってきました」
「そんなにセックスってするの大変なの・・・?」
抱えた箱には色々ものが入っていたので、急に尻込んでしまった。
「いや・・・えっと、そうですね。女性とのセックスとは違って色々と手順がありますので、面倒といったら面倒かもしれませんね。まず、男性同士の性行為で入れる場所は一つ、アナルです」
「あ・・・あなる?」
「はい、所謂肛門ですね」
「お尻・・・まぁ、そっか・・・そうなるのか」
「そもそも排泄する場所なので、エチケットとしてまず浣腸をします、中を綺麗にしないといけません」
「うん・・・うんちついたら嫌だもんね・・・」
「基本する前には中を綺麗にしましょう」
「どうやって?」
「色々方法はあります、ウォシュレットでしたり、あと一般的なのはシャワー浣ですね」
「シャワー浣・・・」
「通常ですと、まぁ、トイレに行っていただいて中に残っているものを出した後、シャワーヘッドを取っていただいて、中にお湯をゆっくり入れて、出てくる水が綺麗になるまで繰り返します。やり過ぎないように注意してくださいね」
「な・・・なるほど・・・」
「当然そのまま何もせず綺麗になったからといって男性器を入れようものなら裂けます。確実に血が出ます」
「・・・えぇ・・・痛い・・・考えただけで痛い」
「なので、綺麗になったら、ローションを使って解します。普通でしたら指3本程度だと思うんですが・・・恐らく若様の・・・その・・・ものが大きいと思われるので、指4本程度を想定したらいいかと・・・」
「えぇ・・・スミ・・・僕のお尻・・・指4本入るかなぁ・・・」
「人間の身体は不思議と丈夫ですから、入ると思いますよ」
「そっかぁ・・・痛いかな・・・」
「そうですねぇ・・・痛くないとは言い切れません。でも慣れると気持ちのいいものですよ」
「・・・ん?スミ男とセックスしたことあるの?」
「えっ・・・いや、その・・・黙秘させていただきます」
思わずジトーっとした目でスミを見る。
「気持ちいいものなんだ・・・、ね、これ何?」
箱にはいろんな形をしたものが入っていた。
なんだか丸いのが連なったものや、細く曲がって歪な形をしたもの、筒のようなもの、卵みたいな形のもの、大きな注射器のようなものまで色々ある。
「えっと、そうですね、色々と使えるおもちゃですよ。もしご自分で開発したいとかでしたら、このエネマグラや、アナルビーズをお勧めしますよ。エネマグラはこっちが前側ですね、ゆっくり全部挿入してお尻に力を入れたり緩めたりを繰り返すことで前立腺という男でも感じるスポットと開発することができるんですよ」
「へぇ・・・こんなエグい形してるのにかぁ」
「後このアナルビーズは最初の方は小さく段々と大きくなっているので、慣らす時に使う分には抵抗ないかと」
「なるほど〜わかった、ありがとうスミ!」
「いえいえ、疑問にお答えできたならよかったです」
「んじゃ、それちょーだい」
スミが固まった。
「えっと・・・今ですか?」
「うん、ちょーだい」
「えっと・・・絶対ですか?」
「うん」
「かしこまりました。全て新品なので大丈夫だとは思うんですけど・・・」
戸惑いながらスミは僕に箱を手渡してくれた。結構色々入っているから思ったより箱が重たい。
「んじゃ、僕はお風呂場行ってくる〜!」
「陽太様・・・今お風呂場行くのは少々危ないかと思われます」
「えぇ、危なくないよ〜?」
「陽太様恐らく酔っていらっしゃるので・・・」
酔う?いや?お酒飲んでないし、酔うわけないじゃん?
「お酒飲んでないよ?大丈夫〜大丈夫〜スミは来ないでね〜恥ずかしいから」
「いいえ、でも・・・」
「来ないでね!」
念を押して僕は箱を抱えてお風呂場に向かった。
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