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第14話

「いらっしゃい〜やっだぁ相変わらずいい男ねぇ〜今日は誰ご指名〜?」 店長が俺の腕に寄りかかってくる。 「あぁ、誰にしようか」 「あっ!僕空いてます!今空いてます!」 「俺も空いてまーす!俺の方がこんなガキんちょより上手いし後ろの具合がいいですよ!」 どんどん奥の部屋に待機していたであろうボーイ達が出てくる。 「ちょっとあんた達!出てくんじゃないわよ!お呼びがかかったらにしなさい、部屋に戻って戻って!」 素早く店長が追い返していた。 「ごめんなさいね、今日りんちょうど空いてるけど、りんにします?」 りん・・・あぁ、あの子か。 「あぁ、それでいい」 「かしこまりました〜じゃぁ、いつものお部屋でお待ちになって〜」 俺は慣れた足取りでいつもの部屋へを向かった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あぁ〜♡きもちぃぃぃ〜!ん゛ぁ!!!!」 目の前にいる華奢な男の尻にバイブを乱暴に突っ込む。 かなり大きく、えぐい形のものだが、その後穴は難なく飲み込んでいて、突かれるたびに嬌声を上げている。 こいつは俺の店の中でもダントツに綺麗で、お気に入りの1人だった。月に一度ぐらいは通って溜まり溜まった性欲を吐き出していたが 今まではこの嬌声も自分のモノで善がり狂った男の姿も、自分を煽り、下半身を滾らせるものだったが・・・今のこいつの白く細い身体も綺麗だとは思えず、甘えた声も気持ちの悪さを隠せない。 おかしい。 すぐにこいつの尻に突っ込んでさっき無理やり抑え込んだ性欲を吐き出そうにも不思議なことに俺の息子はうんともすんとも言わない。 こんなこと初めてだ。背中に嫌な汗が垂れる。 とりあえず場を持たせるためにバイブを突っ込んだが・・・萎えた。 俺はバイブ抜いてベットサイドに置き、キョトンとした顔のキャストのりんに告げた。 「あー・・・悪いが出てってくれ」 「えっ・・・何か気に触るようなこと・・・」 「いや、とりあえず出て行ってくれ」 泣きながらそいつは脱いだバスローブを掴んで部屋を出て行った。 なんなんだ? こんな不快な思いをするのは初めてだった。 俺は俺が今感じているこの感情の名前を知らない。 脳裏にチラつくのはひなのあられもない姿。 あのしっとりとした吸い付くような肌を触れば、他では満足できないんだと思い知る。 「はぁー・・・」 ひなの扇情的な姿を思い出せば、さっきうんともすんとも言わなかった俺の息子が嘘かのように抜いても抜いても収まらない。 あー、もうひなに会いたい。 服を着て部屋を出るとそこに店長が立って待っていた。 「う、うちの子がすみませんでした!!!!あの!!ど・・・どういった粗相をしでかしたのか・・・お教え頂いても宜しいですか・・・?」 目があった瞬間にはもう地面に土下座した店長が、顔も青ざめて血の気が引いている。 「いや、俺が萎えただけだから、気にするな。だが、もう当分来る予定はない」 「あ・・・あの・・・それはどういった理由で・・・」 「あー・・・気分が乗らなかっただけだ。じゃぁな」 俺はそのまま店長の話を聞く気になれず、店の入り口で待っていた部下が運転する車に乗った。 「若、随分とお早いですね、何かありましたか?」 「・・・はぁーぁー・・・」 「随分と深いため息ですね」 「なぁ、俺どうしたんだろ」 「と言いますと?」 「萎えた」 「何か気に触ることされました?」 「いや、特にない」 「お疲れだったのでは?」 「俺が勃たなかったことあるか?」 「さぁ、私はそこまでは存じ上げませんが・・・」 「いざヤろうと前戯をしていても勃たなかったんだ、なのにそいつを部屋から追い出して自分で抜こうと思ったら抜いても抜いても収まらない・・・なんなんだ」 「それは・・・取っ替え引っ替えの若にしては珍しいですね」 「はぁ・・・」 「あー・・・差し付けがましいですが、多分収まらなかった時、勃たなかった時に考えていたことが原因かと」 思い当たる節がありすぎる・・・まぁ、ひなだな。 「・・・あー・・・だよなぁ・・・」 「もしかして先日拾った子だったりして・・・あははは・・・・・そんなことないですよねぇー・・・・・・・え?まじっすか?」 「キャラが乱れてるぞ」 「失礼致しました。若は思ってる以上に気に入っているのでは?」 「・・・そうだな・・・好きだぞ?ひなは、可愛くて、綺麗で、何処もかしこもすべすべ・・・なのに優しいし、天然で、何よりもエロい」 「はーあれですか、それをみてからいざいつもの様に性処理に行ったら彼との差に萎えた的な?」 「有体に言えばそうなのかな・・・」 「あー・・・ある意味最低ですね」 「だけどな・・・いくらひなに身体の関係求めるにしたって、あんな細っこい身体で俺に付き合えるのか?抜きあいっこならまだしも、セックスとなれば、乱暴にして、傷つけそうで怖い・・・だからこそこの暴力的までの欲を外で吐き捨ててこようと思ったのにそれも出来なかった。チラつくんだよ・・・顔が・・・」 「私は直接お会いしていないのでなんとも言えませんが・・・そんな弱気な若は初めてみました。それに随分と感情を拗らせてますね。若も人間なんですね」 「俺をなんだと思ってるんだ」 「冷血若頭」 「はっ、まぁ・・・こんな悩むのは初めてだ」 「とりあえずゆっくり仲を育てたら宜しいかと」 「あ?」 「相思相愛になれば、なにも問題はないはずです」 「相思相愛ねぇ・・・」 窓の外に目を向けると夜の街をイチャイチャしながら歩いているカップルが目に映る。あーやって正々堂々といちゃつくのは構わないが・・・俺のいる世界ではあまりにも危うい。 俺好みの子を家で愛でるのは楽しい。けど・・・入れ込んでもいいのか・・・あの子をこれ以上危険な目に合わせたくない反面、もっと知りたいし、優しくしたい、意地悪したい、泣かせたい、色んな感情がせめぎ合ってどうしたらいいのかわからない。 「はぁ・・・」 煩悩をため息にして吐き出し、俺はそのまま組に向かい、仕事に没頭した。

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