ブーーーブーーーブーーー 俺の携帯の無機質なバイブレーション音が鳴り響く。誰かと思い、画面を見るとそこには、ひなの護衛にあたっている細川の名前が。 緊急の要件じゃない限り電話じゃなくメールにしろと言ってあるから、恐らく何かが起きたんだろう。 ドッという心臓の音と同時に手汗が出てくる、その間僅か1秒。 俺は急いで電話に出た。 「どうした？」 「若様、お忙しいところ申し訳ございません。わたしの独断で医師の石川を呼ばせて頂きました」 「石川？何事だ･･･ひなに何かあったのか？！」 「あー･･･えっと･･･そうですね。確実に熱は出ているかと」 「熱？昨日は元気そうだったが･･･？」 「そうですね、昨日はお元気だったかと」 「なんだはっきり言え」 「あの･･･若様のお部屋に置いてある酎ハイを･･･何缶か飲んだらしく･･･その･･･酔っていらっしゃいまして･･･」 「酔って熱出したのか？」 「いや、それもあると思うのですが、お風呂場でお身体が冷えて熱が出たと言うのもあると思います、詳しくは石川に診ていただきますので、結果が分かり次第再度ご連絡させていただきます」 「いや、いい、俺も向かう」 「かしこまりました、お待ちしております」 「あぁ」 ひなが熱？昨日俺が無理させたせいだろうか･･･物凄く罪悪感を感じる。 それにしても細川も何やら隠しているみたいな言い方で気になる。ひなに一体何があったんだ？ 「おい、翔。ひなが熱を出した。一旦帰る」 「熱？はいよ〜お熱いですねぇ〜これは俺がやっときますんで、病人に無茶しちゃいけないですよ〜」 「わかってるよ、頼む」 「いってらっしゃいませ〜」 俺は焦る気持ちお抑え、急いで部下に車を出してもらい家に帰った。 家に着き、そのまま寝室に入ったが･･････これは何事だ？ ひなが医者の石川と細川に向かって泣いている。 「ふっ･･･うぅっ･･･うっ･･･いやだぁっ･･･」 泣いてるひなを見て一気に血が頭に上り、思ったより低い声が出る。 「おい･･･どういうことだ･･･？」 俺の声を聞き、肩がビクッと動いた2人はギギギと油の足りないブリキのような動きで振り返った。 「あ･･･若様、ちょっとお待ちを！」 青ざめながら俺を急いで寝室の外に追い出す細川。 「あ゛？？なんで俺が追い出されんだよ？？」 「後でいくらでもお叱りは受けます！！まだ診察は終わっていませんので、リビングでお待ちください！！！！！！」 バタンッ！ は？俺ひなを見にきたのになんで追い出されんだよ？？なんなんだ？？ イラつきと心配が混じり合わさって感情の吐きどころがなく胸の中で渦巻いている。ドカッとソファーに乱暴に座りスーツの内ポケットに入っているライターと煙草を出して口に咥え、火をつけようとしたが、ひなの体調が良くないのを思い出してすぐにまたポケットにしまい込んだ。 はぁ･･･なんだよ。なんでひな泣いてんだよ。なんで俺は外に追い出されてるんだよ。すぐにでもあの涙を拭いて、抱き締めたかったのに･･･ はぁ･･･熱だって言ってたし、やることないからお粥でも作るか。 気持ちを切り替えて、大人しくジャケットを脱ぎ、シャツを捲り、土鍋を出して体に優しい卵のおじやを作り始めた。