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仮面 44

きしぇる きしぇる 鳴き声があがった。 天井から飛びかかってくる仮面に反応したのは「手」の怪異達だった。 一本脚の怪異が引きちぎられたのを虫なりに理解しているのだ。 これはこの「餌」を奪うため自分殺しに来るモノだ、そう仮面の怪異を判断した手の怪異達は、反撃に入った。 1匹の手の怪異は殺しはしても、他の手の怪異を気にも止めなかった一本脚の時とは反応が違った。 一本脚が現れた時は1匹が殺されても、手の怪異達は一本脚と仲良く少年を分け合った。 だが仮面とはちがう。 それは仮面が少年を独占しようとしているからだ。 精を注ぎ込む穴さえあれば他の怪異など気にしなかった一本脚とは違う。 身体さえ無くしても気にすることなく、そのペニスで少年をえぐり続ける一本脚と違って、とにかく苗床を汚染から守りたい仮面は脅威でしかなった。 手のひら怪異達が餌を守るため、仮面を排除するのは当然だった。 手の怪異が少年の身体から離れ、重なり合い、群がり、蠢く手の集合体になる。 それは天井から落ちてくる仮面へと向かう。 仮面の髪が何束も、手の怪異の集合体を襲おうと鞭のように飛んでくる。 一本脚の胴体や下半身を引きちぎったように、手の怪異たちも「そう」するために。 手の怪異の集合体はそれを風に乗るようにして避ける。 フワリフワリ 激しい攻撃が巻き起こす風に乗り、それらを躱してしまう。 むしろその風に乗り、髪で宙にぶら下がる仮面に肉薄していた。 仮面のすぐ近くにきた瞬間、手の怪異達は集合体からバラバラになり、一斉に仮面の怪異に襲いかかった。 きしゃあ きしゃあ 手の怪異達は手のひらの場所にある口を大きく開けて鳴いた。 するどい歯と、赤い舌が見える。 そしてそこから、透明な体液を手の怪異達は吐き出した。 仮面の怪異はそれを浴びた。 仮面の動きがとたんに弱る。 「手まもり蛾の唾液は興奮剤や感覚を鋭敏にする効果、つまり媚薬効果もあるけど、運動能力を鈍らせる働きもあるからな」 「専門家」の彼の解説がここでまた入る。 「どうでもええ解説ありがとう」 男が皮肉っぽく言った。 とにかく、 「仮面は手まもり蛾の毒に弱い」 それは彼の予定通りでもあった。 きしゃあ きしゃあ 手の怪異達、「手のまもり蛾」たちは仮面の怪異にその歯をむきだしにして飛びかかっていく。 「だが、まあ、そんなんでは仮面茸には最終的には効かない。再生能力が仮面茸にはありすぎる」 彼は言う。 その通りだった。 動きが鈍り、噛みつかれ、手の怪異達達に集られ鼻や目を引きちぎられはしても、すぐに再生していく。 凄まじいスピードで。 鈍った動きながら、自分の顔に集る手の怪異をそれでも1匹1匹、仮面の怪異はその舌や髪で引きちぎっていく。 くしゃむら ぶちっと舌に巻き付かれて潰され、手の怪異が鳴いた。 透明な体液が飛び散り、少年に降りかかり、その媚薬効果のためか少年がさらに激しく痙攣する。 少年に深く突き刺さった巨大な一本脚の怪異のペニスはまた蠢いていた。 生きているかのようにぐにぐにと動き、奥へ奥へと動いていく。 「深いぃぃぃい!!」 少年が鳴く。 奥を抉られ続けているのだ。 手の怪異がその身体から離れてしまったから、自分で乳首やペニスを弄っていた。 尻を振りながら、自分の乳首やペニスを弄る姿はいやらしく、やはりそれを見ていた男の頬は少しゆるんでしまう。 だけど男は臨戦態勢を崩さない。 刀を構えて膝まづいている。 立つと同時に斬る形だ。 また1匹、手の怪異がちぎられ、透明な体液と柔らかい肉片が少年の上に降り注ぐ。 手の怪異は仮面とも一本脚とも違って、再生もしなこれば、バラバラになっても動きもしやかった。 バラバラになったまま動かなくなる肉片が散らばる。 それを彼が資料にするつもりなのかいくつか拾い上げていた。 怪異同士の衝突は、自然界でも当然有り得ることなので怪異をこよなく愛する彼もこれは受け入れている。 「肉食獣に肉喰うないうわけにもいかんやろ、それと同じや」 ということらしい。 手の怪異を退け、もう手の怪異の体液の影響で動きは鈍くはあっても、仮面の怪異は少年の腹の上にゆっくりと降り立った。 もうこの苗床は仮面だけのものだった。 薄い腹を舐めた。 巨大な一本脚のでこぼこしたペニスが動いているのが皮膚の下から浮かび上がっている少年の腹を。 ゴリゴリと動かされるそれをぐちゃぐちゃと音を立てて舐めた。 少年は中からと外からの刺激にまた痙攣して叫ぶ。 よかった。 堪らなかったからだ。 ゴリゴリと中を抉られ、外から舐められる。 こんなの、たまらない。 もっと奥の腹まで少年の身体は調教済なのだ。 ひぎぃ くひぃ 少年が叫び痙攣する。 彼がそれを見つめている。 恥ずかしがりもせず。 この先が予定通りになるのかを「専門家」として見極めるために イガラシが泣きながらまた尻の穴を弄る。 欲しくてたまらないだろうに、それでもイガラシはペンダントは外さない。 外しさえすれば仮面に犯してもらえるのはわかっているのに。 泣きながら尻を弄り、イガラシもまたイク。 本来なら鼻の下を伸ばして少年を見ているはずの男が違った。 男は真顔だ。 ここから先に始まるからだ。 刀を握る手に力が入っていた。

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