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仮面 46

仮面は弱っていた。 これは予定の通りだった。 手の怪異の体液が仮面を鈍らせることは分かっていた。 手まもり蛾と呼ばれる、人間の手の形をした虫は媚薬のような効果をその体液に持つ。 その体液を取り込んだ仮面の怪異の動きは鈍くなるのは良そう通り。 一本脚の怪異の精液を掻き出そうとするのも予定です通り。 ただ、手の怪異の体液と一本脚の怪異の体液を同時に摂取した怪異が石化したのが記録されている。 話が出来る怪異から、彼が聞き取りしたところ、手の怪異と一本脚の怪異が集っている人間を食べるなら、洗浄が必要だと言っていたそうだ。 手の怪異と一本脚の怪異は、そうやって互いの体液を混ざり合わせることで獲物を他の怪異から奪われることを防いでいる、共生関係にあるのだ。 仮面の怪異が虫や動物の怪異なら、おそらく少年を犯すことを止めたのだ。 少年はもう猛毒になっていた。 手の怪異と一本脚以外には でも、菌類である仮面の怪異はそれが分からなかった。 というより、本来なら仮面の怪異と手の怪異や一本脚は生息する場所が違うのだ。 出会うことが希なため、仮面にはその本能がない。 ちなみに男は彼から解毒剤をもらって予め飲んでいる。 少年は今は猛毒だから。 汗だけでも危険だ。 仮面は緩やかに毒の作用で石化する。 石化したら再生しない それから男が仮面を破壊する、それが予定だった。 でも、今起こってることは。 予定とは違った。 毒は効いている。 確かに。 でも、石化ではない。 これは違う。 違う。 仮面は弱っていた。 それでも、その舌は少年の内部を犯していた。 「もっと・・・もっと寄越せ!!」 少年がいやらしく腰をくねらせた。 火傷の跡が残る尻は淫らに動いた。 中でその舌を穴の襞が絡みついていく。 尻だけでなく中も唾液を欲しがり、舌の繊毛を使って襞を擦り付け、自分から舌を締め付けていた。 仮面は止められなくなっていた。 仮面は猛毒に気付いた 舌を抜き、とにかくこの少年の身体から離れなけれぱならないと分かっていた。 でも。 出来なくなっていた。 苗床を整えたくてたまらない。 これはもう猛毒であり、苗床には適さないと分かっているのに、この苗床を仕上げてしまいたくてたまらない。 こんなに舌に身体が懐いている、 こんなに舌に馴染む身体はない。 舌を欲しがり、もっともっと、整えられることを願うこの苗床。 それに仮面の怪異も惑わされていた。 欲しがり狂う身体にして。 整えて。 整えて。 それから菌を受け付けるのだ この苗床をくらい尽くして、またその菌糸を回収して。 育つまで繰り返すのだ あまりにもその苗床は良すぎた。 こんなにも舌に馴染んで唾液を欲しがる穴はなかった。 最高の苗床だった。 馴染んでそのための場所になり、菌糸が育ち盛りくらい尽くすための。 猛毒なのに。 猛毒だと分かっているのに。 仮面は舌か止められなくなっていた。 危険な毒を喰らい続けて、でも、それだけではなかった。 仮面は突き当たりを舌でぶち抜き、さらに奥へと入る。 仮面の長い長い舌でなければ入れない場所、ペニスでは絶対に入れない場所に。 そこを舐めて舐めて、その身体を馴染ませていく。 相手の快楽物質を利用して、身体を変えて、欲しがらせて、イかせて。 なのに。 奪われていた。 毒が回っていくのに止められない、それだけではなかった。 「腹ぁ・・・しゅごい・・・ひぐぅっ・・・」 少年がヨダレを垂らしながら喘ぐ。 痙攣して感じる度に、仮面が枯れていく。 石化ではない、 石化の毒は確かに効いているが、それは石化の毒の効き方ではなかった。 文字通り枯れていく。 ぐちょん ぐちょん それでもその舌は少年を求めた。 猛毒の身体を甘い蜜のように。 その度に、仮面は枯れていく。 鮮やかな赤い髪がグリーンの皮膚が、肌の上の鮮やかな文様が色が褪せて、乾いて、枯れていく。 穴に差し込まれたねっとり湿った分厚い舌が、どんどん枯れて乾いていくのがわかる。 少年が痙攣してイク度に。 「もっとぉ・・・ああっ・・・もっとぉ・・・」 少年が身体を、痙攣させイク度に仮面は枯れていく。 でも、少年を犯すことを止めることができない。 かなさらはら かなはらさは 仮面は哭いた 苦痛の でも、それは欲しがることをやめられない叫びだった 「もっとぉ!!!」 少年が鳴いた。 貪欲に、いやらしく尻が動いた。 火傷だらけの背中が弓なりに反る。 少年は妖しく 美しかった。 その火傷のあとさえまるで、美しい文様のように見える。 平凡で地味だったはずの顔が妖艶に輝く。 内部から光っていた。 髪の先にまでエネルギーを湛えて。 喰らっていた。 喰らっていた。 少年が仮面の怪異を喰らっていた。 その精気を吸っていた。 貪欲に貪っていた。 人間が怪異喰らっていた。 しなびていくのは仮面の怪異だった。 「どういうことや?」 男が彼に尋ねる。 今危険なのは少年ではない。 喰われているのは仮面なのだ。 「分からん!!」 彼も途方にくれたように答えた。

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