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第17話 なぜ俺がお仕置きをされなければならないのか。
マンション前でタクシーを降りるとなぜか日下部さんも支払いをして車から降りた。ん?まさか俺んち来れると思ってる?
「あの、俺もう大丈夫なんで。ここで失礼します」
俺の言葉を聞いて日下部さんは俺に手を差し伸べた。
「ええ?まだふらついてるよ。ほら、肩貸すから体重預けていいよ」
「はぁ?いらないって言ってるでしょう」
「おいおい、せっかく送ってあげたのにまさか本気で追い返す気?」
「いや、誰も頼んでないし」
「冷たいなぁ。そういうこと言わないでよ。ちょっとだけ、ね?コーヒーくらい出してよ」
ふざけんなよ。コーヒーだぁ?ヤる気しか感じねーわ。
さすがに自宅にまで上げるつもりはない。口だけで断っていてもなかなか言うことを聞いてくれず、エントランスの前でちょっとしたもみ合いになった。
ああ、面倒くさいな……
日下部さんの背は俺より少し高いけど痩せ型で、俺のほうがガタイが良いから本気出せばたぶん勝てる。手首でも捻り上げればすぐ逃げていくだろうけど、姉ちゃんの手前暴力は避けたい。
しかし日下部さんは俺が実力行使に出ないことで嫌がってるのは口だけだと思いこんでいるのか、背中側に腕を回して俺の尻ポケットからキーケースを出そうとした。
いい加減にしろよこいつ……
そろそろキレかけてたとき、人の気配がした。変に揉めてるところを住人に見られるのはまずいぞ。
「俺の恋人に何か用?」
そう言って俺の体から日下部さんの手を引き剥がしたのはなんと、ここにいるはずのない課長だった。
「え?!かちょ……暁斗さん……?」
なんでここにいるんだ??
日下部さんも課長の顔を見て目を白黒させている。
「え、あ、あれ?あんたは……くそ、別れたんじゃなかったのかよ?」
日下部さんに睨まれる。
「いや、その……」
「ちっ、なんだよ。フリーだと思ったから高いもん食わせてやったのに。痴話喧嘩ならそう言えよ!じゃあな」
「あ……」
日下部さんは精一杯虚勢を張って捨て台詞を吐くと足早に去って行った。
課長がそれを見送ってため息をつきながら言う。
「はぁ、やれやれ。どういうつもり?」
「どういうつもりって……」
「俺に嫉妬させてどうしたかったの?」
「はい?」
課長は無言で俺の手を取ると自分の股間に持っていった。
ひぃっ!!ゴリゴリに勃起してんじゃねーか。
「鍵開けて」
有無を言わせぬ口調に俺はつい従ってしまった。しかしエレベーターで自室の階に到着するまでの間に、なんで俺は課長を家に上げちゃったのかと後悔した。
ヤバイぞ。これってどういうことになるんだ?
俺、今課長の彼氏って設定だとすると……姉と会うと言って課長の誘いを断りながら他の男(以前パーティーで誘われてる所見られた事あり)を家に連れ込もうとしたことになってる?
で、嫉妬した課長が勃起して俺を犯そうとしてるかんじ?
やばい、やばいぞ。つーか俺の部屋すげえ汚いし。いや、そこはもうどうでもいいか。
部屋が汚いことより、何がヤバいってとにかく今俺のケツがヤバイ。
俺が冷や汗をかいていると課長が俺の首筋を指でなぞった。
ゾワゾワして俺は首をすくめる。
それを見た課長が耳元で囁く。
「お仕置きが必要だね」
いやいやいや!なんで俺がお仕置きされなきゃなんねーんだ!?
俺はなんも悪いことしてねー!ただ姉に頼まれたバイトをこなして来ただけだ。
しかも俺の方が怒ってんだよ。課長め、こんなとこまで来て彼氏面してるけど先々週パーティーで可愛い子とイチャイチャしてたんだろっ!
エレベーターのドアが開き、背中を押されて俺は仕方なく課長を部屋に上げた。
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