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第22話 何を知ってるんだ?こいつは
飲みに誘われてしまったので定時で仕事を終え、俺は北山と連れ立って外へ出た。
「えー…と。どこで飲む?この近くでいいのか?」
「店予約してるんでそこでいいです?」
「え、そうなの?俺はどこでもいいんだけど……」
「新木さん○○駅住みですよね?俺は○○駅なんで、間の○○町の店にしたんすけど」
「ああ、それなら帰り楽だ」
何でこいつ俺の住んでる駅知ってるんだ?情報収集能力すげーな。
そのまま北山と電車に乗り、予約を入れてくれていた店へ行く。わざわざ予約してる辺りガチな相談なのだろう。ますます気が重い。
連れて来られたのはカジュアルな和風の居酒屋で、小上がりの個室を押さえてあった。
個室かよ。どんだけ重い話されんの?怖いんだけど……パワハラとかなら相談室に直で言ってくれよぉ……
胃が痛くなりそうな俺とは対照的に、思い悩んでいる風でもない北山はメニューを見て店員を呼ぶ。
「ビールでいいですよね」
「ああ、いいよ」
「じゃあビールと、タコわさび、鳥軟骨の唐揚げと……だし巻き卵。あとなんか食べたいのあります?」
「あー……アジフライ」
「じゃあとりあえずそれで」
ビールとお通しが来て乾杯する。
次々に運ばれて来る料理をつつきながらビールを飲み、北山の下らない世間話に耳を傾けて早1時間。
で、本題はなんなんだ……?そんなに言い出しにくいことなのか。
よし、ここは先輩の俺が切り出そうか。俺は酒が入って多少気が大きくなっていた。
「なぁ、北山。俺に相談したい事があるんだろ?」
「え?」
「言いにくい事かもしれんけど、俺でよければ聞くよ。もしかして高野となんかあったのか?」
「は?高野さん?いや、高野さんとは何も無いっすよ。ただの仲良い先輩後輩です」
え?相談って高野のパワハラじゃねーの?
「じゃあ何なんだ?相談って」
「え、相談ならさっきしたじゃないですか」
「へ?」
「いやだから、妹の誕生日プレゼント何にしたらいいかなって」
「は?」
いや待て、それが相談?いやいやいや、それは昼休みにでも高野に聞きゃいいだろ!?
「いや、俺妹いねえしわかんねーよ。なんでわざわざこんな個室まで取って俺に相談なんて言ったんだ?」
そのためにここ予約するとかおかしいだろ。
「あー、相談は妹のプレゼントなんすけど、個室取ったのは新木さんに聞きたいことがあって」
え、なに?聞きたい事?
「なんだよ」
「課長と別れたんすか?」
「はあっ!?!?」
別れたって、なに!?え、どゆこと!?!?
「な、な、な、何が!?別れ、え!?」
「付き合ってたんですよね?少し前まで」
「つ、付き合って……ってなに、どこに?え?」
俺は焦りに焦ってとぼけようと必死だった。
どういう事だ?なんで課長と俺のことを付き合ってるなんて思ったんだ!?しかも別れたとかなんでこいつが知ってるんだよ……?
「いやー、先輩わかりやすいっすもん。最近課長と別れて元気無かったんですよね」
「ふぇ!?」
なんで?わかりやすいって何?
こいつは何を知ってるっていうんだ?
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