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第30話 元サクラの俺、鬼上司と相思相愛になってしまう
俺は課長の鍛え上げられた腕を枕にして横になっていた。やりすぎてもう身体に力が入らない。
腕枕なんていつぶりだ?幼稚園くらいに母さんにしてもらったくらい??
セックスの後の課長はまじでまじで優しいしゲロ甘になる。エッチのときちょっとSっ気を見せるのでその反動なのかもしれない。
いつもヘロヘロになった俺をバスルームに連れてってくれて全身きちんと綺麗に洗ってくれる。(した後そのまま寝たいと言っても当然却下だ)
シャワーの後は髪の毛濡れたまま寝たい俺だが、課長がドライヤーを掛けてくれるからされるがまま身を任せた。
寝る支度が整ってベッドに横になると課長は俺の髪の毛を弄びつつ、低くて柔らかい声で囁く。
「ずっと奏太に触れたくてたまらなかったよ。だけどあの日すごく怒っていたからこちらからは直接声が掛けにくくてね」
「す、すいませんでした……」
「俺、こんなに1人に必死になってるの初めてかも。奏太って不思議なんだよな。ストーカー男は気味悪いけど、ちょっと気持ちがわからないでもないなぁ」
へ?!
俺が不安になって課長を見つめると彼は笑った。
「いやいや、俺はストーカーなんてしないぞ。だけど、俺実は恋人に甘いなんて言ったけどあれ嘘なんだよ」
「は?どういうことっすか?」
課長はにやりと笑う。
「あんまり恋人に尽くすタイプじゃないってこと。そもそも家に付き合ってる相手連れてくることも稀だし、恋人のために料理なんてしたことないね」
「はぁ?!そんな、嘘でしょ」
あんな料理上手なのに?課長なんて今までも美味いもの作って何人もの男の胃袋ゲットしてきたんじゃないの?
「本当だって。最初に奏太と寝たとき、君が処女なのはすぐにわかったと言っただろ。奏太は慣れてるなんて言ってたけど男に慣れてないのはバレバレだった。だけど……君があんまり可愛いからその嘘に乗っかって最後までしてしまったんだよね。だから半ば無理矢理処女奪ったのが申し訳なくて……ついつい甘やかしたくなってね」
え?そんなこと思ってたの?課長が優しいのって俺のおケツのおかげってこと?
つーかもしかして俺がゲイじゃないとこまでバレてるんじゃね?
「奏太……ずっと聞きたいと思ってたんだけど君、本当は男と付き合ったこと無いんじゃないのか?」
「あ……俺……」
やっぱバレてたーーー!
もう隠せないな。サクラのことももう話しちゃってもいいよね?
「はい。実は俺、ゲイじゃありません」
「ゲイじゃ……ない?」
課長は眉間にシワを寄せて俺を凝視した。
あれ?そこは気づいてなかった??
「待ってくれ、ゲイだけど未経験なんじゃなくてそもそも君はゲイじゃないのか?」
「はい。騙してすいませんでした。あの日……課長と最初にパーティーで会った日は姉ちゃんに頼まれたんです。実は何度かパーティーのサクラとしてバイトしていました。だけど課長があの場にいて、うちの会社副業禁止だからバイトしてるのバレたらまずいって思って……」
課長が突然起き上がった。
「え?!たったそれだけの理由でゲイだって嘘ついたの……?」
「えーーー……はい」
唖然とした表情で課長がポツリとつぶやく。
「奏太って、馬鹿だな……」
クソぉ!ですよね!自分でもわかってる!
「でも底抜けに可愛いな」
ふ、と笑った課長に頭をグリグリと撫でられる。
「やめてください……」
慰めはいらねえ!
一方課長は上機嫌で尋ねてくる。
「じゃあ、ノンケなのに俺のこと好きになってくれたの?」
「はい……まぁ。そうなりますね」
俺は恥ずかしくて課長に背を向けた。
「嬉しい……すごく嬉しいよ。絶対大事にする!」
課長は俺をぎゅーぎゅー抱きしめ、顔や耳や首筋などあちこちにキスしてきた。
「わ、な、なんすか!ちょ、やめて!くすぐったいですって」
落ち着いた大人の男と見せかけてたまにいきなり愛情爆発すんのやめて!課長のテンション一体どうなってんだよ?
すると今度は急に真顔になった課長が言う。
「あ。そういえば日下部のことだけど」
「へ?」
「今急にいいこと思いついたよ」
「いきなりどうしたんですか」
「毒を以て毒を制すんだよ、奏太」
はぁ?
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