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第18話 拒絶反応(4)

 話し終えると、碧が握っている左手首を、武彦がぱっと掴んだ。 「自分を責めすぎだ。その真斗とかいう奴がやったことは最低だ。そんな奴の行動の責任まで、碧が背負い込むことはない。それと」  武彦は碧の手首を掴んだ掌を、ゆっくりと移動させ、指先で碧の手の甲を撫でるような仕草をした。 「俺は異性愛者だと、つい最近まで思ってたんだけど……、碧を見てると何か、その、妙な気持ちになる。悪い意味じゃなくて、むしろ、その、恋愛、的な? そういう意味で。それで」  ゆっくりと碧が視線を上げると、武彦は顔を赤らめて少し斜めを向いていた。 「その、この間の牡蠣パーティの夜、実は、ちょっとその、い、いたずらを……」 「え?」 「唇に、ちょっといたずらを……その、した。……っごめん! 許可なくキスなんかして……! 実は今日もそのことに対して後ろめたさがあって、だから碧の態度がちょっと変な気がするのは俺の自意識のせいで……っ、それでルール変更を持ちかけた。自分から一方的に線引きしといた方が、傷つかなくて済むって思ったから。正直、碧が可愛くて……、たぶん好きなんだろうと思うけど、同性を好きになるとか、初めてで、どうしたらいいのか……っ。でも、碧が同性を恋愛対象にするっていうなら、俺にも少しはチャンスあるかな? とか不純なこと考えてて……」  碧がぽかんとしていると、武彦は下げた頭を上げて、今度は碧に真正面から向き直った。 「碧には魅力がある。控えめで、相手のことを想いやる素敵なところがあると思う。だからこそ、そのホストが百パーセント悪くても、悩んでしまうんだろうけど、それは優しさの無駄遣いだ。そんな優しさがあるなら、むしろ俺に投資しろって思う。絶対リターン損させないから、って。俺、碧を前にすると欲張りになってしまうんだ。でもそれは、俺の情動だし、碧は百パーセント全く全然何も悪くない。むしろ可愛い」  むしろ可愛いまで聞いたところで、思わず碧は吹き出した。

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